3キャリアの値下げでMVNOに大打撃の恐れ “いびつな競争環境”は解消できるか?:石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2021年01月23日 06時00分 公開
[石野純也,ITmedia]

 大手3キャリアの料金値下げは、MVNOの経営に大きな打撃を与える可能性がある。20GB前後の中容量ではahamoやpovo、SoftBank on LINEより料金水準が高くなっている上に、MVNOが得意とする小容量プランも、UQ mobileやY!mobileの値下げにより、価格優位性がなくなりつつある。オンライン専用の20GBプランができたことで、玉突き的にサブブランドの料金が下がり、MVNOのすみ分けが難しくなった格好だ。

ahamo ahamoの発表が引き金になり、大手3キャリアの料金は一気に値下げが進んだ

 これに対し、MVNO側は速やかな解決策を求めている。1月20日には、テレコムサービス協会MVNO委員会が総務省で開催された「接続料の算定等に関する研究会」で要望書を提出。大手キャリアと競争条件をそろえるよう、“緊急措置”を強力に要望した。総務省が2020年10月に発表したアクション・プランでは、3年間で接続料を半減する旨がうたわれていたが、実現までの長すぎるというわけだ。

 一方で、ahamoに対し即座に対抗した日本通信や、U-NEXTがセットになったシェアプランで値下げに打って出たy.u mobileのように、数は少ないながらも、対抗策を打ち出したMVNOも存在する。MVNOは、この先生き残れるのか。可能性を探った。

苦戦を強いられていたMVNO、追い打ちをかける大手3キャリアの値下げ

 MVNOの伸びにブレーキがかかったと言われ始めたのは、2017年ごろのこと。相互接続の開放が早く、多くのMVNOを抱えていたドコモは2017年11月の決算説明会で純増数の予想を下方修正している。大手キャリアの流出防止策が功を奏した上に、UQ mobileやY!mobileといったサブブランドが勢いを増しているからだ。MVNO側の統廃合も進み、2017年には楽天モバイルがFREETELのMVNO事業を買収。MNO参入直前の19年には、DMM mobileの事業も継承している。

ドコモ 2017年には、MVNOの伸びにブレーキがかかりつつあった。それを受け、回線を貸すドコモは、純増数の見通しを下方修正している

 大手キャリアに吸収されるMVNOも増えた。LINEモバイルは、2018年にソフトバンクと資本・業務提携を結び、傘下に入った。2017年にはKDDIがビッグローブを買収したのに伴い、MVNOのBIGLOBEモバイルもKDDIグループの一員になっている。調査会社・MM総研が2020年12月に発表した9月末時点でのシェアは、上からUQ mobile、楽天モバイル、IIJmio、OCN モバイル ONE、mineo、BIGLOBEモバイルの順に並ぶが、ほとんどが大手キャリア傘下だ。

MVNO 調査会社MM総研が2020年12月に発表したMVNOのシェア。ほとんどが、大手キャリア傘下になってしまった

 UQ mobileはKDDIが直接運営するMVNOになり、今後はMVNOのシェアから除外される見込み。楽天モバイルはMNOとしてサービスを開始したため、MVNOの新規受付を停止している。OCN モバイル ONEも、NTTコミュニケーションズやNTTレゾナントの再編で、ドコモの傘下に入る見込みだ。NTT資本が入るIIJのIIJmioは見方が分かれるところだが、独立系MVNOはIIJmioとmineoの2ブランドということになる。上位MVNOの大半が、純粋なMVNOとは呼べなくなってしまっている状況だ。

 ここに追い打ちをかけるのが、大手キャリアの料金値下げだ。12月3日発表されたドコモのahamoに端を発し、同月22日にはソフトバンクがSoftBank on LINE(仮)を、1月13日にはKDDIがpovoを対抗策として打ち出した。いずれもサービス開始は3月で、オンライン専用のただし書きはつくものの、料金はドコモとソフトバンクが2980円(税別、以下同)。KDDIは5分間の音声通話定額を外して2480円を実現した。10Mbpsあたりの帯域単位で回線を借りるビジネスモデルのMVNOは、ユーザーが帯域を占有しがちな大容量プランを得意としていなかったこともあり、現時点ではほとんどの会社が対抗策を発表できていない。

povo 音声通話定額のないpovoは2480円。ドコモやソフトバンクは、5分の音声通話定額つきで2980円だ。いずれも、データ容量は20GB

 そのため、20GB前後の大容量プランでは、MVNOよりMNOの方が低料金という逆転現象が起こっている。例えば、IIJmioはファミリーシェアプランが12GBで3260円。5分間の音声通話定額がつかない点で条件が同じになるKDDIのpovoより8GB容量が少なく、料金は780円高い。mineoも同様で、au回線を使うAプランは20GBで4590円。データ容量は同じだが、料金は2110円も高くなる。これでは、MVNOで大容量プランを選ぶユーザーがいなくなってしまう。

mineo mineoの料金プラン。20GBプランはau回線で4590円と、povoより2110円も高くなっている
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