3キャリアの値下げでMVNOに大打撃の恐れ “いびつな競争環境”は解消できるか?石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

» 2021年01月23日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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いち早く値下げを打ち出し対抗する日本通信やy.u mobile

 ただし、全てのMVNOが対抗策を打ち出せていないわけではない。日本通信は、ahamo発表の翌日に、対抗プランの投入を予告。「合理的20GBプラン」として、12月10日にサービスを開始した。料金はahamoより1000円安い1980円。現時点でのデータ容量は16GBだが、ahamoのサービス開始に合わせ、20GBへと増量するという。日本通信の代表取締役社長、福田尚久氏によると、このプランはahamo以前から準備を進めていたという。最終的な金額やデータ容量はahamoの中身が判明してから修正したが、現状の条件で十分採算は取れるという。

福田尚久 MVNOの老舗である日本通信は、いち早くahamoへの対抗プランを打ち出した。福田社長も十分採算が取れると自信を見せる(写真は2020年9月に撮影)

 カギになるのが、総務大臣裁定で決まった音声通話の卸価格だ。福田氏は、「シンプルに、音声を原価ベースで調達できるか」と理由を語る。音声といっても、通話料ではなく、いわゆる基本使用料が値下がりする効果が大きいという。ドコモがMVNOに提供している標準的な音声通話の卸価格は30秒20円。回線数や契約数によって、この料金は30秒14円まで下がる。これとは別に、1486円の基本使用料が設定されている。こちらは666円まで割引されるものの、ユーザーに提示する料金の中に占める割合としては以上に大きく、「異様に高くなっている」(同)。

ドコモMVNO ドコモの公開している、MVNO向けの資料。音声通話を利用する際には、一律で基本使用料がかかる

 「(料金の)トータルに占める音声部分の比率が高くなりすぎていて、最大のボトルネックになっている」(同)というのが日本通信の主張だ。本連載でも扱ったが、日本通信は総務大臣裁定を勝ち取り、ドコモに対しては値下げの指示が出ている。ドコモが期限通りに改定後の料金を提示せず、交渉は依然として継続中だが、福田氏は「大臣裁定が履行されないことはありえない。時間の問題はあるかもしれないが、原価ベースの料金が出ないことはない」との認識を示す。16GBのデータ容量は提供できているものの、「今の算定方式だと高すぎる」(同)と苦言を呈する。

 もう1社、対抗プランを打ち出したのがUSEN-NEXT HOLDINGS傘下のY.U-mobileだ。同社が2020年3月に立ち上げたy.u mobileは、3月1日に料金を値下げする。3GBのシングルプランは、データ容量を5GBに増量した上で、料金を1690円から1490円に引き下げる。もう1つのシェアプランは、20GBで5990円だったところを3980円に値下げする。価格だけを見ると、大手キャリアの20GBプランより高いが、シェアプランは2人まで同額で利用できるうえに、U-NEXTの月額プラン1990円がつくため、映像サービス込みで見ればリーズナブルだ。

y.u mobile シングルプランとシェアプランの両方で値下げに踏み切るy.u mobile

 Y.U-mobileの代表取締役社長、鹿瀬島礼氏は、値下げの要因を「将来原価方式で1Mbpsあたりの接続料が8000円程度下がり、月額の基本料もある程度下がる見込みがある」と語る。次の3月でサービス開始から1年になるが、「ある程度のユーザー数が集まってきて、ボリュームも見えてきたので、時間帯別にこれだけあれば速度もご満足いただけるといった基礎データが見えてきた」のも、値下げに踏み切れた理由だ。MVNO委員会とは足並みをそろえるというが、やはり接続料がさらに下がれば、「料金を安くするのか、スピードをさらに上げるのかは方向性があるが、ユーザーに向き合う形になれる」(同)という。

鹿瀬島礼 将来原価方式で出ている原価を価格に反映させたと語る鹿瀬島氏

 日本通信は、ドコモとの値下げ交渉に早くから着手していたことが功を奏した格好だ。現時点で福田氏の言う「原価」がドコモから提示されていないのは不安要素ではあるものの、いち早く値下げで対抗できたのはMVNO委員会の要望を先取りしていたからといえそうだ。対するY.U-mobileは、接続料の低減見込みを先行して料金に反映させつつ、大容量プランではグループ会社の強みを生かし、コンテンツをセットにすることで割安感を出してきた。とはいえ、全てのMVNOが同じことはできない。基本使用料や通話料、接続料を早急に見直さなければ、市場から退場するMVNOは出てきてしまうはずだ。

 もともと政府は、市場原理にのっとり、大手キャリアとMVNOとの競争を通じた料金値下げを実現する方針を打ち出していた。MVNOが低価格を打ち出し、ユーザーがそちらに流れるようであれば、大手キャリアも対抗値下げをせざるをえなくなる。アクション・プランは、そのために作られたものだ。ところが、ふたを開けてみると、実際に実行したのは、大手3キャリアへの値下げ要請で順番が逆だった。そのため、本来であれば競争を仕掛けるはずのMVNO側が、慌てて対抗策を打ち出しているようにも見える。競争環境をいびつな形にしてしまったという意味でも、大手3キャリアへの直接的な値下げ要請は禍根を残しそうだ。

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