東日本電信電話(NTT東日本)、西日本電信電話(NTT西日本)、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの5社は、NTT東日本とNTT西日本(以下まとめて「NTT東西」)の固定電話から各社の携帯電話に発信した際の通話料金について、2021年度第3四半期から料金の設定権をNTT東西に移行することで合意した。移行に先立って、au(KDDIと沖縄セルラー電話)とソフトバンクは5月1日から、NTT東西の固定電話から両社の携帯電話に発信した際の通話料金を値下げする。
なお、記事中の料金は全て税別で記載している。また、NTT東西の固定電話から楽天モバイルの携帯電話宛の通話料金については、当初から設定権がNTT東西側にあるため今回の取り組みには含まれない(NTT東日本/NTT西日本)。
1996年から現在に至るまで、NTT東西の固定電話からドコモ/au/ソフトバンクの携帯電話に発信した際の通話料金の設定権は、着信側(携帯電話キャリア側)にある。
NTTドコモでは発信曜日や時間帯を問わず全国一律料金としている一方、他のキャリアでは発信元と着信先との位置関係(都道府県単位または距離)や曜日、時間帯によって通話料金を変えている。全ての設定を記載するとキリがないので、現在の料金設定を大きくまとめると以下の通りとなる。
(※)ソフトバンクの通話料金は、Y!mobileブランドのスマートフォン向け料金プランにも適用される
通話料金は、事業者間の協議によって決定される。そのため、理論的にはNTT東西と携帯電話キャリアが協議をして妥結すれば料金の値下げは実現できる。総務省の「情報通信審議会」では、2011年12月に「料金設定の在り方について事業者間で必要な見直しを行うべき」という答申を出した。それを踏まえて、総務省は翌2012年4月に、関係事業者に協議を実施するように要請を行った。
この要請の結果、NTTドコモとイー・アクセス(旧イー・モバイル、現在のソフトバンクのY!mobileブランドの一部)は2012年12月、通話料金の値下げを実施した。しかし、他の携帯電話キャリア宛の通話料金が下がることはなかった。
現時点でもプレフィックス(前置番号)で中継事業者を指定することで通話料金を下げることはできる。しかし、できればそのような手間を経ないで通話料金が手頃になることが理想的ではある。そもそも、現在の通話料金の決め方では、発信者が着信先の携帯電話キャリアを把握していないと通話料金がいくらになるのか分からないという問題点もある。
そこで2017年3月、同審議会は固定電話網のIPベース(インターネット電話)への円滑な移行に関する一次答申において、固定電話から携帯電話に発信する際の料金設定権をNTT東西側に移行することを提言した。これを受けて、NTT東西と各携帯電話キャリアは事業者間協議を継続して実施してきた。
NTT東西と各携帯電話キャリアは3月2日、情報通信審議会内の「接続政策委員会」の第53回会合において、事業者間協議の結果を明らかにした。
5社が共同で提出した資料によると、以下のスケジュールで料金設定権を移行するという。
料金設定権の移行に先立って、auとソフトバンクは5月1日から、NTT東西の固定電話から両社の携帯電話宛ての通話料金を自主的に見直す予定だ。
auでは、現時点で携帯電話キャリアの中で最安値となっているドコモと同等の料金水準(3分換算で60円程度)とする予定だ。
NTT東西への料金設定権の移行は10月に行われる。
ソフトバンクでは、NTT西日本の固定電話から楽天モバイルの携帯電話宛に通話する際の通話料金(1分当たり20円、3分換算で60円)などを考慮に入れて、全国一律で3分60円(30秒当たり10円)とする予定だ。
ただし、この料金をY!mobileブランドのPHS(機械間通信以外はサービス終了済み)にも同様に適用すると、通話先の端末が所在する区域や距離によっては通話料金が上がってしまう。そのため、一部の料金を据え置くことで、値上げを回避する。
NTT東西への料金設定権の移行時期は明記されていないが、auと同時期(10月)に実施されるものと思われる。
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