東日本大震災から10年、KDDIが災害対策訓練を公開 ドローンの活用やヘリコプター基地局も(1/2 ページ)

» 2021年03月09日 06時00分 公開
[島徹ITmedia]

 KDDIは2020年2月25日、宮城県の夢メッセみやぎ(みやぎ産業交流センター)にて災害対策訓練の実施と最新の設備内容を公開した。

KDDI 技術統括本部運用本部長の大河内恭雄氏

 東日本大震災(2011年3月11日)から10年たったが、その間にKDDIの通信ネットワークの災害対策や復旧体制も大きく拡大されている。

 今回の災害対策訓練では東日本大震災と同クラスの“宮城県沖にてマグニチュード9、推定震度7の地震”が午前10時に起きたという状況を想定。現在の災害時の対策シナリオに沿って対応を進めつつ、新しく導入した復旧機材や実際の運用について紹介した。

KDDI 2011年以後、災害対策をより強化。全国11の拠点に移動基地局などの設備を増強。基地局自体の設備も強化している

 なお、記憶に新しい2021年2月13日の福島県沖地震でも震度6強に加えて停電も発生したが、基地局のバッテリーと発電機への給油により通信サービスを継続したという。利用者が日常の利用で気付かない中でも、災害対策が効果をあげた一例だ。

KDDI 2021年2月13日の福島県沖地震の停電下でも、災害対策で設置したバッテリー設備などでサービスを継続して提供した

365日24時間対応可能な災害復旧体制

 訓練では災害発生から30分後、新宿KDDIビルにて運用災害対策本部を立ち上げるという内容から開始。被害状況の把握と全国の拠点の設備を利用した復旧プランを指示する流れを実施した。運用災害対策本部は日時を問わず365日24時間、30分以内に立ち上げ可能な体制だという。

KDDI 災害発生後30分で運用災害対策本部を立ち上げ。被災地のネットワーク復旧の中心となる

 運用災害対策本部は立ち上げ直後に、岩手県、宮城県、福島県にて多数の基地局の停波を即座に確認。全国の拠点の車載基地局や過半基地局、電源車の状況を確認し、全国の応援部隊の機材を栃木県の小山テクニカルセンターで受け入れ、復旧活動を開始するプランを指示。以後、各地の復旧に対して個別の指示を実施していく。

KDDI 各地の基地局などの被災状況をいち早く確認。全国の拠点に対して復旧プランを指示していく

交通手段が寸断された被災地での基地局復旧設備

 ここからは基地局の状況の調査や自治体からの要請に対応するという内容に沿い、同社が導入した新しい設備による復旧活動の訓練とデモンストレーションを実施した。

 基地局の復旧については、移動型基地局と可搬型基地局を紹介。新型の移動基地局にはミニバンのエスティマハイブリッドを採用。従来のトラック型と比べ、設営人数を3人から2人に減らすとともに設営時間を短縮。合計で全国50台となり、10年前の11台から台数を大幅に増やした。

KDDI 新型のミニバンをベースとした移動型基地局。移動時はアンテナなどを自動で最小サイズに収納できる
KDDI 従来のトラック型と比べ、設営人数と設営時間ともに効率化した

 また、最小の設備を搬送して設営できる可搬型基地局も全国の拠点に配備。訓練では約12分での設営を実施した。こちらは全国で137台を用意する。

KDDI 最小の設備のみを運んで設営できる可搬型基地局。アンテナやバックボーン回線となる衛星回線との接続を含め、約12分で設営できた

 基地局設備の復旧調査や現地の救難活動に向けた、水陸両用車や4輪バギー、ドローンの活用も紹介した。実際の被災地では広範囲な浸水や、道路が被害を受けることも多く、水陸両用車やこの際の復旧や資材の運搬などに活用されるという。

KDDI 水浸した被災地での作業や資材搬入のため、水陸両用車や4輪バギーを新たに導入。悪路や渋滞を避けて移動するためのオフロードバイクも用意
KDDI 障害物上を移動するデモンストレーションも実施

 ドローンの活用では、現地のドローン操縦者が提供する映像をKDDIの映像伝送ソリューション「VistaFider MX」で伝送し、運用災害対策本部からARによる遠隔指示でドローンの操縦者にリクエストを送るという内容を紹介した。

KDDI 被災した基地局設備の調査にドローンを活用
KDDI 遠く離れた運用災害対策本部から、現地の操縦者に対して確認したい部分をARのマーキングで指示。操縦に集中しつつ指示を実施できる

 被災地や避難所などの被災地支援の設備も用意。自治体の要請によっては飲食料品などの支援を実施することもあるという。

KDDI 被災地支援で利用する蓄電池や各社の携帯電話を充電できる充電BOX、Wi-Fiアクセスポイント、衛星回線のイリジウム携帯電話など
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