ヘリコプターと小型基地局を活用した、人命救助の実験も公開した。携帯電話の基地局が被災し、通話や通信を利用できない状況の海上や山岳地帯、道路などが寸断された陸上での利用を想定している。
具体的には、災害直後に現地の基地局が停止し、一帯で携帯電話ネットワークを利用できないブラックアウト状態にて、ヘリコプターに搭載した小型基地局から地上の一定範囲に電波を発信することで、被災者の持つ携帯電話の位置や台数を特定するというもの。さらに、アドホック接続よりエリア内の端末と、ヘリコプターの小型基地局に接続した端末で通話やSMSの送受信が可能になる。
また、地上の車載型基地局や可搬型基地局とヘリコプター間で連携してネットワークを接続できた場合は、ヘリコプターの小型基地局から通常の携帯電話ネットワークに接続することも可能だ。
実際、ヘリコプターが飛行する上空150mからの目視では、手掛かりのない捜索は非常に困難なものとなる。だが、被災者が手にすることの多い携帯電話の位置や台数を確認できれば、範囲を絞った効率的な捜索が可能となる。
これらの内容は鹿児島県の甑(こしき)島で実証実験がなされているが、基本的には通常の電波法における携帯基地局の運用では想定されておらず、法整備はこれからの段階だ。現状で運用するには、国や自治体との連携が必要になるという。
大規模災害直後の人命救助や情報提供、以後の被災地対応において、携帯電話(スマートフォン)とインターネットの活用は欠かせないものだ。携帯電話やインターネットの普及以前だった1995年の阪神・淡路大震災、スマホ普及前でLINE登場以前の2011年の東日本大震災などと比べると、国や自治体から個人まで全体の情報収集や情報提供体制は格段に向上している。
だが、これらスマートフォンやインターネットを活用するには大手携帯電話事業者ネットワークの維持・復旧体制は欠かせないものだ。KDDIのように、通信事業者が危険すら伴う被災地でのネットワーク復旧、被災地支援体制が整っている状態は、いざというときの安心だけでなく生命の危機の回避にもつながり心強い。
これら通信事業者のインフラ維持や災害時の対策はあまり表に出ない情報ではあるが、ライフラインともいえるモバイルネットワークを守るために、通信事業者が尽力していることは覚えておきたい。
(取材協力:KDDI)
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