KDDIは3月8日、首都圏直下型地震を想定した模擬訓練を実施した。大地震により広い範囲で携帯電話が利用できなくなった場合に備えるもので、車載型移動基地局(基地局車)や可搬式の基地局を使った復旧の様子が報道陣に公開された。
訓練は、3月8日12時30分に東京湾北部の深さ20キロメートルを震源とするマグニチュード7.3の首都圏直下型地震が発生したと想定。広範囲で各社の携帯電話が使えず、早急な通信手段の確保が必要になり、政府からKDDIに国の防災拠点である東京臨海広域防災公園(そなエリア)と練馬区役所、品川区役所に対する通信確保の要請が出された――というシナリオ。
まず最初に、東京臨海広域防災公園にKDDIの復旧要員がヘリコプターで到着。被災状況を確認した後で、運用対策室にイリジウム衛星携帯電話で基地局車の派遣を要請した。並行して練馬・品川の区役所にも基地局車が派遣され、3カ所の被災地域で通信エリアを復旧する様子を披露した。
また基地局車で一時的に復旧したあと、本格的な復旧に備えて可搬式基地局とエリアカバーを交代するという展開もあった。機動性が高い基地局車を1カ所にとどめてしまうと、ほかの地域まで手が回らないケースも考えられる。そこで、もともとの基地局が復旧するまでに時間がかかる場合は可搬式の基地局をつなぎ役として設置し、被災エリアの通信を確保するという。訓練では可搬局の設営が進む中、基地局車がすみやかに設備を収納すると、新たな派遣先(台場区民センターを想定)に駆けつけて再び基地局の立ち上げを行っていた。
今回の訓練は、全国4カ所のKDDIテクニカルセンター(TC)から選抜された隊員が参加。ただし車両は、すべて栃木県の小山テクニカルセンターから持ち込まれたものが使われた。訓練を統括したKDDI技術統括本部運用本部副本部長の難波一孝氏は、「各TCで普段使わない車両、慣れない車両での訓練になった。今回の経験を振り返り、改善のテーマとして欲しい。災害時にいかに早く駆けつけ、いかに早く復旧するかが我々の最大の使命。これからも技術を磨き、向上させたい」と、訓練を締めくくった。

設備の復旧に欠かせない移動電源車(写真=左)。静止衛星を使った映像伝送が行える車載型地球局「ビックシェル」号。災害時や屋外イベントなどで、映像伝送用の光ファイバーが使えない場所でも高品位のテレビ映像を送受信できる(写真=右)
KDDI研究所が開発したリアルタイム映像伝送システム「VistaFindee Mx」。スマートフォンで撮影している映像を暗号化して受信用のPCに伝送する。接続できるスマホの数は最大12台で同時に4台の中継が可能。回線が途切れても端末で録画を続け、再接続時に送信する(写真=左)。京セラの「IP告知システム」は、Androidを採用したタッチパネル付きのシステム。サーバーから配信された緊急告知を自動で表示するほか、IP電話やフォトフレーム機能なども備える(写真=右)。防災用に、自治体が採用して戸別に配布するケースが多いとのこと
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