au、ソフトバンクと連携を深めるフードデリバリー 「dデリバリー」を失ったドコモはどう出る?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2021年06月05日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 KDDIは、6月2日にフードデリバリーサービスを手掛けるmenuと、資本業務提携を結んだと発表した。同日から、auスマートパスプレミアム契約者に対するキャンペーンも実施。au PAYアプリ内には、menuへのリンクが張られており、送客も行っている。今後は、au PAYアプリ内だけで完結するミニアプリの導入や、menu側のau PAY対応などを順次実施していく予定だ。

 コロナ禍に伴う緊急事態宣言などで飲食店の営業に大きな制限がかかる中、フードデリバリーは急激に市場を拡大している。利便性の高さから、コロナ終息後もユーザーの生活に取り入れられ、定着する可能性は高い。こうした状況を見すえ、大手キャリアもフードデリバリーサービスに触手を伸ばし、競争が激化している。ここでは、KDDIの戦略とともに、キャリア軸で見たときのフードデリバリーサービスの現状を比較、分析した。

auとmenu 6月2日に、KDDIはmenuと資本業務提携を結んだ。同日から、クーポンをauスマートパスプレミアムの新規会員に配布(写真提供:KDDI)

au経済圏拡大を目指し、menuと資本業務提携を結んだKDDI

 KDDIは、フードデリバリーを手掛けるベンチャー企業のmenuと、資本業務提携を結んだ。KDDIの出資金額は50億円。出資比率は20%になり、menuはKDDIの持分法適用会社になった。KDDIがフードデリバリーに出資する狙いは、au PAYを中心とした“au経済圏”を拡大するところにある。決済サービスの入り口となるサービスを増やすことで、流通額を上げていくのが資本業務提携の目的だ。

auとmenu au経済圏の拡大が提携の狙いだ

 au PAYの加入者、3200万人。KDDIが導入したPontaポイントは1億超の会員を抱えているが、「まだまだ選択的にau経済圏にご参加いただいている状況ではない」(KDDI パーソナル事業本部 サービス統括本部 副統括本部長 執行役員の多田一国氏)。利用促進のため、大規模なポイント還元キャンペーンをたびたび実施しているのも、その状況の裏返しと見ていいだろう。

 多田氏が「消費者の意思決定プロセスとして、どの決済から何をしようか考える人はいない」と語るように、ポイント還元キャンペーンは一時的な強化策で、サービスの本質ではない。au経済圏を活発化するには、「お客さま側の最初の接点になるところに回って、便利だったりお得だったりの価値を提供し、満足度の高い意思決定を支援する」(同)必要があるというわけだ。

auとmenu 決済サービスだけでなく、決済をするための起点をそろえていくことが重要になるという

 こうした状況の中、KDDIが目を付けたサービスの1つが、コロナ禍で急拡大しているフードデリバリーサービスだった。menuは、2020年4月にサービスを開始したベンチャー企業だが、約1年で急成長を遂げ、現在ではUber Eatsや出前館に次ぐ業界3位の位置につけている。同社の代表取締役社長、渡邉真氏によると、約1年で亀井店舗数や登録配達員数、アプリダウンロード数は急増。6月現在で加盟店数は約6万に達し、「配達員数も業界上位であるという認識」(同)。2021年にプロモーションを強化した結果、「購入回数も急増している」(同)という。

auとmenu
auとmenu
auとmenu コロナ禍でフードデリバリー市場は急拡大している。20年4月に新規参入したmenuは、店舗数、登録配達員数、アプリダウンロード数の全てが成長。2021年になってからは、購入数も大きく伸びている

 急成長している市場ゆえに、海外からの新規参入組も多く、激戦区になっているフードデリバリーサービスだが、KDDIがmenuを選んだのは、後述するような「深い取り組みができる」(多田氏)ことが大きかったという。もともとKDDIは、auスマートパスプレミアムの契約者向けに、Uber Eatsのクーポンを提供していたが、「本国(米・Uber)があり、日本固有の事情にまではご対応いただけない」。日本発のベンチャーで深い提携ができ、かつ規模が大きく急成長していることが提携の決め手になった。

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