決済サービスを軸にした経済圏を拡大しようとしているキャリアにとって、その入り口の1つであるフードデリバリーサービスの重要性は高い。資本業務提携でmenuを自陣営に呼び込んだ格好のKDDIだが、この分野で先行しているのは、やはりソフトバンクだろう。ソフトバンクは、傘下のLINEが出前館を実質的な子会社に持つ他、先に挙げたUber Eatsを展開する米Uber Technologiesにも、ソフトバンクグループが出資し大株主になっている。タクシー配車アプリのDiDiも、関西圏や福岡などで、DiDi Foodというデリバリーサービスを展開する。
ソフトバンク傘下のPayPayは、Uber Eatsのミニアプリを搭載する他、出前館でもPayPayのネット決済を利用可能。出前館は、LINEとのIDやポイントでの連携も導入済み。KDDIがmenuとの資本業務提携で実現しようとしているサービスの一部は、既に実現済みだ。グループ内でフードデリバリーサービスが複数あり、競合しすぎている状況をどう整理するのかがソフトバンクにとっての課題といえそうだが、キャリアごとのサービスとして見たとき、一歩リードしているのも事実だ。
一方で、フードデリバリーサービスを手掛けていないのが、ドコモだ。同社は出前館のプラットフォームを利用する形でdデリバリーを展開していたが、5月に注文の受付を終了。サービスそのものも、6月いっぱいで幕を閉じる。dデリバリーを閉鎖した代わりに、出前館でdポイントを増量するキャンペーンなどを展開しているが、menuと資本業務提携したKDDIや、グループ内に複数のフードデリバリーサービスを抱えるソフトバンクに比べ、出遅れている印象も受ける。
d払いのような決済機能を提供するだけなら、特定の事業者と提携する必要はないが、ID連携やデータ連携などをしていくうえでは、自社サービスや資本関係のある提携先の重要性が増す。ドコモは、NTTによる完全子会社化以降、サービスの見直しを進めている。dデリバリーも“リストラ対象”の1つになった格好だが、コロナ化でフードデリバリー市場が伸びる中、競合他社に後れを取っているようにも見える。dデリバリーに代わる、次の一手に期待したいところだ。
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