Googleが考えるプライバシーの在り方 「広告にはユーザーデータを使わない」(2/3 ページ)

» 2021年06月30日 12時12分 公開
[石井徹ITmedia]

プライバシーを守りながら利便性を高める技術

 Googleはプライバシーを保護しつつ、ユーザーの利便性を高めるために活用する技術開発にも熱心だ。Fair氏は3つの技術を紹介した。

 個人情報そのものを使わなくても、個人に合わせた便利なWebサービスは実現できる。一般にAIと呼ばれる機械学習技術を用いることで、ユーザーが必要な情報を提供するアルゴリズムを作成できる。

 そのアルゴリズムの生成のためには、膨大なデータが必要になるが、Googleはこのデータ生成においても、プライバシーを保護しつつ活用する仕組みを開発している。

Google プライバシーを保護しつつデータを活用するため技術開発を意欲的に進めている

 その1つが「差分プライバシー」技術だ。これは機械学習に使うデータについて、個々のデータから正確な情報を判別しづらくした上で、大規模なデータセットから学習できるようにする仕組みだ。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)流行下においては商業施設などでの人出を表示する「コミュニティ モビリティ レポート」の生成の際に利用されている。

 各デバイス上でデータを匿名化しつつ、機械学習に活用する技術も開発されている。「フェデレーション ラーニング」と呼ばれる技術で、2019年にGoogleのエンジニアが開発した。例えばGboardの入力ミス補正機能では、この技術を用いてユーザーの入力データを直接取得することなく、アルゴリズムの精度を高めている。

 AIを実行する際も、ユーザーのデータをGoogle側に渡さずに実行する技術が開発されている。オンデバイスAIと総称される技術で、Androidスマートフォンでは「プライベート コンピュートコア」として実装されている。例えば、Android 11には映像から文字起こしをして字幕を表示する機能があるが、これはデバイス上で動作し、外部のサーバにデータが渡ることはない。

ユーザーがデータを自己管理できる

 Googleのプライバシー保護についての基本方針では、ユーザー自身がプライバシーデータを管理できる仕組みの整備をうたっている。Google アカウントの設定ページで、ユーザーがGoogleサービスにアクセスして取得したデータを表示し、アクセス権限を許可する範囲を指定できる。保持したデータの一部を削除したり、数カ月後に自動削除したりする設定を登録することもできる。

Google Google アカウントには「プライバシー診断」機能もあり、プライバシー関連の設定を短時間でチェックできる

 Googleに登録したデータを他のサービスで使いたいときは、「Google データエクスポート(Google Takeout)」を活用できる。Google カレンダーに登録した予定や、Google Keepに登録したメモ、Google マップで作成したマイマップのデータなど、ユーザー自身のさまざまな情報をダウンロードできる。

プライバシー保護の向上はWebサービス提供者の責務

 スマートフォンのOSに限ると、iOSとAndroidという2つのプレイヤーが市場を独占している。iOSを開発しているAppleは、iPhoneを販売して得られる利益が収益の柱となっている。

 一方で、Googleは広告収入が営業収益の大半で、Androidプラットフォーム自体を開発すること自体は収益源にはならない。

 Appleはここ数年、iOSでの強固なプライバシー保護をうたい、データ保護を重視する姿勢を強調してきた。これは競争上、Googleに対抗する意味合いも含んでいるだろう。これに対しGoogleは、Android 10以降の3世代に渡るAndroid OSのアップグレードにおいて、プライバシー保護機能を重要な柱としてきた。

 こうしたGoogleの姿勢についてFair氏は、「プライバシー保護に関しては、私個人としても、チームとしても同じ志で挑んでいる。プライバシーへの配慮は正しいことであり、プラットフォームやWeb業界全体の透明性向上のためにも、プライバシー保護を進めていく責務がある」と話す。

 その上でAppleとのプライバシー戦略の違いについて「Googleはオープンソースである点がAppleと違う」と主張。Android OSなど主要製品の根幹部分のコードを公開しているため、外部のセキュリティ専門家が検証でき、透明性の高い環境を保てるとしている。

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