レビュー
» 2021年08月05日 06時00分 公開

ソニー「WF-1000XM4」を試す ノイキャン対応の完全ワイヤレスイヤフォンで圧倒的な完成度(2/3 ページ)

[島徹,ITmedia]

音質はiPhoneでも非常に良好、AndroidのLDAC接続の表現力は圧倒的

 iPhoneとWF-1000XM4の組み合わせだとノイキャンで外の音を抑えつつ、高音から低音まで癖なく表現してくれる。無理に高音や低音を強調してゆがむことなく、あくまでも自然に元の曲をクリアに楽しめるのだ。イヤフォン側のDSEE ExtremeによるAI補完処理で、iPhoneがワイヤレスで音を伝送する際に再圧縮でつぶれる音の響きも自然に補完しているのだろう。

 オーディオメーカー製品であることと、後述するLDACのハイレゾ音源再生も想定した設計も功を奏しているのだろう。AirPods Proのような完全ワイヤレスイヤフォン特有のレンジの狭さや、弱々しい低音で迫力不足を感じることはない。

WF-1000XM4 iPhoneと接続。AAC対応かつイヤフォン側のDSEE Extremeにより、Bluetoothでの伝送で失われる高音部などを補完してくれる

 なお、現行iPhoneのBluetooth接続は本体側が従来のAACにしか対応しておらず、「Apple Music」のロスレス配信など、ハイレゾ楽曲の情報量を生かせるWF-1000XM4のLDAC接続には対応していない。iPhoneもAirPodsやロスレス配信の利用を推しているなら、ワイヤレスイヤフォン向けの音質改善にそろそろ力を入れて欲しいところだ。

 ノイズキャンセリングの性能も良好だ。静かな室内なら静寂で、街中や電車などでは周りの騒音をかなり軽減してくれる。WF-1000XM4はここからさらに、アプリによって周辺の環境や場所に合わせてノイキャンの動作モードを自動変更できる。

 筆者は電車や飛行機で曲を聞き流す場合なら、AirPods Proの聴き疲れしにくい薄味の音も好みだ。だが、動画視聴やゲームなどで音もちゃんと楽しみたいときに不満があった。WF-1000XM4はイヤフォンとしては納得できるオーディオメーカーらしい音を楽しめる。後述するノイキャンの利便性も含め、今iPhone向けでノイキャン対応の完全ワイヤレスイヤフォンを買うなら、WF-1000XM4が最も音質と便利さのバランスが取れているといえる。

 Bluetoothイヤフォンの弱点といえる音声の遅延は一般的な製品と同レベルだ。iPhoneとの組み合わせだと、AirPods Proの方が若干遅延は少ない。どちらにせよ、アクションやリズムゲームなど、ちょっとした音の遅延が問題になる用途には向いていない。

AndroidとLDAC接続なら、完全ワイヤレスでトップクラスの音質に

 WF-1000XM4の真価を発揮できるのが、ハイレゾ対応の高音質コーデックLDACに対応の近年発売されたAndroidスマートフォンとの組み合わせだ。そもそも、ノイキャン対応の完全ワイヤレスイヤフォンでハイレゾ対応のLDACやaptX HDなどのコーデックに対応した製品はまだ非常に少なく、WF-1000XM4ほどの完成度を誇る製品はまずない。

WF-1000XM4 近年のAndroidスマホと接続する場合、一般的な完全ワイヤレスイヤフォンよりも音を高音質に伝送できるLDACを利用できる

 LDACの利点は、ハイレゾ品質の最大96kHz/24bitの音声を、ビットレート最大990kbpsで伝送できる点にある。このため、ハイレゾ音源だけでなく通常のCD品質の音源も再圧縮による音質低下の影響を抑えて高音質に楽しめる。一般的な完全ワイヤレスイヤフォンが対応しているAACやaptX、SBCはコーデックや細かい仕様は異なるが、最大48kHz/16bit、ビットレート300kbpsあたりとなっており、いずれも音声の伝送に必要な再圧縮で音質が損なわれてしまう。

 WF-1000XM4でLDACの接続を利用するには、Headphones Connectの「サウンド」タブで「音質優先モード」に設定する。また、Androidスマホによってはスマホ側でもLDACを有効にする必要がある。

WF-1000XM4WF-1000XM4 LDACを利用するには、Headphones Connectアプリのサウンドタブで音質優先モードを有効にする(画像=左)。Androidスマホ側のBluetooth接続の設定画面(画像=右)ではLDACの設定の他、バッテリー残量の表示やデバイスを探す機能を使える

 実際に一般的なCD品質のストリーミング楽曲を再生すると、音の響きが自然かつ解像感が上がり、一般的な完全ワイヤレスイヤフォンでありがちなレンジの狭さやこもった印象を払拭(ふっしょく)し、良質な有線イヤフォンにかなり近いクリアさと音の広がりを楽しめる。

 特にオーディオ好きにとっては、従来の完全ワイヤレスイヤフォンは音質より携帯性重視の実用品という認識かもしれない。だが、WF-1000XM4のLDAC接続は曲を楽しめるレベルにあるといっていい。屋外で周囲の騒音をカットできるノイキャンの効果も含めれば、同価格帯の有線イヤフォンと並べられる音質の製品といえる。

 ハイレゾ音源の再生は、同価格帯のオーディオ機器で聴くレベルを超えることはない。有線のハイレゾ音源を存分に楽しんでいる人は、引き続き有線の高価格帯オーディオ環境をメインに楽しむことになるだろう。だが、ハイレゾ向けにミックスした音源をスマホで気軽に楽しむ環境構築や、ハイレゾ初心者向けの環境としては非常にいい選択肢となる。一般的な完全ワイヤレスイヤフォンで聴くのとは明らかにレベルの違う、広いレンジで曲を楽しめる。

 スマホで「Amazon Music HD」やApple Musicなどのハイレゾやロスレス楽曲の配信を気軽に楽しむなら、WF-1000XM4とLDAC対応のAndroidスマホは非常に優秀な組み合わせといえる。

 空間オーディオの「360 Reality Audio」は、スマートフォンとの組み合わせだとソニー製の「Xperia 1 III」や「Xperia 1 II」などで利用できる。設定時に耳への最適化を行い、音楽配信サービス「Deezer」を契約すると専用アプリから利用可能になる。

 実際に聴くと、確かに前後へも音が広がって聞こえる。ただ、このサービスを楽しむ場合はオーバーヘッド型のヘッドフォン「WH-1000XM4」と組み合わせた方がより音の響きを楽しめるのでは、という印象を受けた。既に360 Reality Audioを別の環境で存分に楽しんでいる人が、外出先でも気軽にWF-1000XM4で楽しむための対応という印象を受けた。

WF-1000XM4WF-1000XM4 Xperia 1 IIIやXperia 1 IIを利用しており、Deezerを契約すると空間オーディオの360 Reality Audioを利用できる(画像=左)。現時点で日本向けの楽曲配信を提供しているのはDeezerのみ。両機種で360 Reality Audio用に耳の形状を撮影し、イヤフォンやアプリにひも付けて利用する(画像=右)

 さらにWF-1000XM4の使い心地を上げるのが、専用アプリのHeadphones Connectだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

過去記事カレンダー