プロセッサ単体で性能を向上させるだけでなく、スマートフォンやさまざまなモバイルデバイスに必要なキーデバイスを巻き込んでエコシステムを拡大しているのも、Qualcommの戦略だ。同イベントでは、Qualcommとソニーが米サンディエゴにジョイントラボを設立することを発表した。ソニーの持つイメージセンサーと、Qualcommのプロセッサをより緊密に連携させるのが、その目的だ。
イメージセンサーで高いシェアを誇るソニーだが、それだけで写真を撮ることは不可能だ。対するQualcommも、SnapdragonにISPを内蔵しているものの、光を通すレンズや光を取り込むイメージセンサーがなければ、画像の処理ができない。イメージセンサーとISPは1つになって、初めてカメラとして機能するというわけだ。2社が研究レベルから提携することで、スマートフォンなどに搭載されるカメラの質を向上させやすくなる。
Qualcommのモバイルハンドセットビジネス担当シニアバイスプレジデントのクリストファー・パトリック氏は、「最新のスマートフォンでは、イメージセンサーができることと、ISPやその周辺のアルゴリズムに、非常に強い関係性がある」と語る。イメージセンサーでトップシェアを誇るソニーとQualcommがタッグを組み、「共同で技術開発を行っていく」(同)のがジョイントラボ設立の狙いだ。
パトリック氏が「お客さまがより簡単な取り組みで済むようになる」が語るように、ソニーやQualcommから部品を調達するメーカー各社にとっても、この提携はプラスになりそうだ。それぞれバラバラに開発されたプロセッサとイメージセンサーを購入し、自らで組み合わせるより、統合されたイメージセンサーとプロセッサを一式まとめて購入した方が、開発のハードルが下がるからだ。もちろん、メーカーごとの味付けをしなければ差別化ができなくなるが、浮いたリソースやコストを他社との差別化のための開発に回しやすくなる。
ソニーのイメージセンサーは、スマートフォンでトップシェアを誇る一方で、サムスンなどの競合他社も徐々に力をつけている。Qualcommも、ハイエンドモデルではSnapdragonの採用率が高いものの、ミドルレンジやローエンドではMediaTekなどのプロセッサが強く、ハイエンドモデルでもSnapdragon以外のプロセッサが採用されるケースが徐々に増えている。
クオリティーが高く、実装も容易となれば、ビジネス上の相乗効果が出る可能性もある。Qualcommとソニーがタッグを組めば、Snapdragonを採用した流れでイメージセンサーをソニーにしたり、逆にソニーのイメージセンサーを採用したいためにプロセッサをSnapdragonにしたりするといったケースも出てくるだろう。シェアの高い2社が組むだけに、そのインパクトは大きい。
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