米Qualcommは12月2日(米国時間)、前日に発表されたフラグシップ製品向け最新プロセッサ「Snapdragon 888」の詳細を公開した。前モデル「Snapdragon 865」と比較して25〜35%程度の性能向上が図られている他、それまでモデム機能が外部搭載であったフラグシップ向けモデルでは初のプロセッサ統合を実現し、従来の2チップソリューションから1チップソリューションへと変更されたことで、デバイス省電力や設計面で優位になった。
本稿では、具体的に何が変化し、ユーザーがどのようなメリットを享受できるのか見ていきたい。
従来のプロセッサコア中心だった時代とは異なり、昨今のプロセッサはGPUやISP、スカラー/ベクトル演算器、さらには専用のデコーダーやセキュリティユニットなどを複数搭載し、それぞれが役割分担することで低消費電力かつ最大限のパフォーマンスを引き出す方向へと進んでいる。
個々のコアのベンチマーク上のスコアではなく、それら機能ユニットを組み合わせて、全体でいかに一般ユーザーが使う機能を最適化するかという流れだ。Snapdragonをはじめとするモバイルプロセッサで顕著だった動きだが、最近ではPC向けプロセッサとしてApple M1が登場したことで話題となったように、比較的汎用(はんよう)性を求められるPCプロセッサの世界においても、エンドユーザーに近い製品ではヘテロ型のアーキテクチャの採用例が増えつつあるのかもしれない。
Qualcommが「究極の“フラグシップ”プロセッサ」との願いを込めて登場したSnapdragon 888でもこの傾向は強く、例えばCPUやGPUコアの解説は軽めで、どちらかといえばユースケースとして重視されるカメラ機能やゲーム動作においてどれだけメリットがあるのかをアピールしている。
CPUコアのKryo 680は前モデルと比較して最大パフォーマンスで25%、電力効率で25%の向上が図られているが、「高クロックな高機能コア×1+高機能コア×3+効率コア×4」の組み合わせでクロック周波数も同じと、一見するとほとんど変化ないように思える。
だが高機能コアはArm Cortex-A77からCortex-A78へと変更されたことで、全体に2割ほどパフォーマンスが向上している他、高クロックコアについては前モデルが通常の高機能コアと同じCortex-A77だったのに対し、現行のKryo 680ではCortex-X1に変更されている。Cortex-X1はSamsung Exynos 1080などでの採用例があるが、2020年5月にCortex-A78とともに発表されたばかりのコアであり、A78をベースに同時命令実行数や実行サイクルなどを強化した点で特徴がある。
Arm系プロセッサでは、Appleのプロセッサが省電力性とのトレードオフでシングルコア性能を特に強化していることが知られているが、Kryo 680はそのトレンドを追いかけたものとなる。
一方で、GPUコアのAdreno 660では35%の性能強化をうたっている。電力効率を2割ほど向上させつつ、ディスプレイの表示クオリティーを改善している。具体的にどのようにGPUコアが強化されたのか不明な部分が大きいが、各所の報道によれば、Snapdragon 865ではTSMCの7nm製造プロセスだったものがSnapdragon 888ではSamsungの5nm製造プロセスになっており、その分コアの機能強化や省電力性の実現が可能になったのだと考える。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.