IIJmio「ギガプラン」の反響と値下げの狙い 音声対応eSIMは「準備が整いつつある」MVNOに聞く(3/3 ページ)

» 2022年04月18日 14時07分 公開
[石野純也ITmedia]
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エコノミーMVNOはOCNとの差別化が難しい

―― 話は変わって、昨年(2021年)10月からドコモのエコノミーMVNOが始まりました。IIJとして、この取り組みはどう見ていますか。

矢吹氏 今、実績を見ているところです。IIJmioは全国の販売網がビックカメラを中心とした家電量販店しかないので、(エコノミーMVNOが)魅力的には見えます。ただ、報道されていたようにドコモショップの数は今後減っていくようですし、dポイント導入のコストが高いという問題があります。コスト的な部分以外で問題になりそうなのが、エコノミーMVNO内でどう差別化できるかという点です。他にもいくつかテクニカルな課題があり、今日現在はそこ(エコノミーMVNO)にたどりつけていません。とはいえ、条件さえ合えば、全国のドコモショップは決して悪い販路ではありません。全国、津々浦々にあるのはやはり大きいと思います。

―― 確かに、OCN モバイル ONEとは料金プランも結構かぶってますね……。

矢吹氏 OCN モバイル ONEのメニューがあるので、あれと違うものをあの販路に持っていくのはなかなか難しいですね。

―― とはいえ、まだドコモが手つかずで、エコノミーMVNOにないような料金プランもあると思います。例えば、ドコモには単独で契約できるPC用などのデータプランがありません。IIJの強みであるeSIMとPCを、ドコモショップでセット販売するというようなこともできるのではないでしょうか。

矢吹氏 ドコモショップがどんどん変わるといわれている中で、どう変わるのかが見えてくると、そういったものに手を上げやすくなると思います。現状だと、どうあるべきといったところがちょっとボンヤリしている。外からだと従来と変わらないようにも見えているので、何をしたらいいんだろうというのが正直なところです。

eSIMはもっと踏み込みたかった

―― ITmedia Mobileで、IIJmioのeSIMとpovo2.0をデュアルSIMで使うという記事が読まれたようですが、eSIMの動向はいかがですか。

矢吹氏 eSIMは本来であれば、もっと踏み込みたかった。しかしながら、これもデュアルSIMで緊急呼ができない問題があり、少しオペレーションを変えていました。iPhoneにもAndroidにも対応してもらえたので、今後は出稿量を増やして(ユーザーを)取りにいきたいと考えています。

―― IIJはフルMVNOとしてeSIMを提供していますが、MNOがeSIMを設備ごと卸で貸し出すという話もあったかと思います。あちらに関しては、どうお考えでしょうか。

亀井氏 条件が開示されつつあるので、準備ができ次第出せる状況です。ドコモの音声通話対応eSIMの仕様にちょっとトリッキーな部分があって端末IDをあらかじめ登録するなど、かなりハードルが高い。「eSIMなのにその不便さは……」と感じているところですが、そこはクリアしたいと考えています。KDDI回線に関しても、準備が整いつつあります。

―― ただ、フルMVNOではないのでIIJならではの特徴が少し出しづらいような気もしています。

亀井氏 条件は縛られてしまいますが、(フルMVNOのeSIMと)似たようなものは作りたいと思っています。プロファイル投入までの煩わしさがまだ残っていたり、セキュリティ面をどう担保していくのかにはもう少し時間がかかったりで、普及にはいくつかの壁もあります。まずはリテラシーの高い方に「便利だね」と思ってもらえるものを出していきたいですね。

―― 今後のeSIMとしては、どういったサービスが考えられるのでしょうか。

亀井氏 コロナがなければ……というのはありますね。本当は日本に来る方(訪日外国人)のためのものを準備していたのですが、コロナで急激に数が減ってしまい、そこにリソースを割くのは……ということでいったん止めてしまいました。アプリから簡単にインストールできるものを考えていました。

矢吹氏 認知を上げていく方法としては、MWCのような展示会の会場で配っているようなプロモーション用のeSIMも考えています。IIJのeSIMが売れて、eSIMが便利だと思われるところには貢献したい。マーケットが盛り上がっていかないとキャリアのeSIM対応も進みませんし、そうなると対応端末も出ませんからね。

取材を終えて:MVNOならではの新サービスに期待

 ギガプラン導入以降、契約者数が純増に転じたIIJmioだが、その伸びが矢吹氏の想定を下回っていたのは意外な事実だ。ほぼ横ばいや純減しているMVNOがある中、IIJmioが健闘しているのは間違いないものの、それ以上にギガプランへの期待や目標が高かったことがうかがえる。2021年後半に復活した大手キャリアの1円販売も、同様の販売手法を取れないMVNOにとって痛手だったようだ。

 矢吹氏と亀井氏の発言からは、近い将来、導入されそうなサービスも予想できる。音声通話対応のeSIMは、その1つだ。交渉次第にはなりそうだが、エコノミーMVNOに参画する可能性も残されているように感じた。単純な料金の安さだけでなく、MVNOならではの新サービスにも期待したいところだ。

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