2022年3月29日、NTTドコモがモバイル回線を利用した固定電話サービス「homeでんわ」を開始しました。こうしたサービスは一般的に「ワイヤレス固定電話」と位置付けられていますが、このサービスは既にKDDIから「ホームプラス電話」、ソフトバンクから「おうちのでんわ」としてサービスが開始されています。
今回NTTドコモが参入したことにより、大手通信3キャリアからワイヤレス固定電話サービスが出そろいました。今回の記事では、ワイヤレス固定電話は、NTT加入電話(アナログ電話)、INSネット64(ISDN)、ひかり電話(IP電話)など、国内の主な固定電話サービスと何が違うのか? 大手通信キャリア3社から提供されているワイヤレス固定電話サービスにはどういった特徴があるのか? どういった人がワイヤレス固定電話のメリットを享受できるか? などについてまとめます。記事内の料金表記は全て税込みです。
「固定電話」と言えば、主にNTTの電話サービスを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか? メタル回線(銅線)でアナログ方式が使われているNTT東西の「加入電話」「加入電話・ライトプラン」、回線はメタル回線(銅線)ですが、音声データはデジタル化したものを使い、「ISDN」で有名な「INSネット64」「INSネット64ライト」。同じくNTT東西から提供されており、光回線(光ファイバー)を利用した「ひかり電話」。ひかり電話は「光電話」「光でんわ」といったように名称こそ違えど、NTT以外の光回線事業者やプロバイダーでも提供されており、これらのサービスは「IP電話」の一種にあたります。
IP電話とは平たく言ったら、インターネットを介した電話サービスを指しており、固定電話の場合、電話番号が「03」など普段私達が目にする電話番号から始まるものを「0ABJ型IP電話」、電話番号が「050」から始まるものを「050型IP電話」と言います。加入電話、INSネット64、ひかり電話以外にも、NTTの通信設備を介さず、通信事業者の通信設備を使って固定電話サービスを提供する「直収電話」(ソフトバンクのおとくラインなど)があります(ケーブルテレビ事業者の「CATV電話」は総務省発表「令和3年度版 情報通信白書」の加入契約者数では2017年より0の状態が続いています」)。
下図は総務省が公表した「令和3年版 情報通信白書」に掲載された「電気通信サービスの契約者数及びシェアに関する四半期データの公表(令和2年度第四半期(3月末) 」より、固定電話の加入契約者数の推移を現したデータを筆者が加工したものです。
2022年現在、日本国内における固定電話の加入契約者数は、
これら3つで大部分が占められています。NTT東西の加入電話、INSネット64は減少傾向にある一方、ひかり電話(0ABJ型IP電話)の加入契約者は増えています。ひかり電話 (0ABJ型IP電話)は、従来の加入電話よりも月額料金や通話料が安く抑えられており、光回線の導入を期に、加入電話からひかり電話に切り替える方が一定数いるためだと思われます。
下図はNTTのグループ会社であるNTTコミュニケーションズの加入電話とひかり電話を使った場合の県外への通話料金を比較したものです(加入電話のプランは「加入電話・住宅用・3級局」、ひかり電話のプランは「基本プラン」「フレッツ光ネクスト ギガファミリー・スマートタイプ(戸建向け)で設定しています)。加入電話では「通話地点間の距離」「時間帯」によって時間あたりの通話料金が変動します。
今回は県外への通話料金を取り上げていますが、加入電話ではさらに市内(区域内)にいる相手への通話料金も別途設定されており、料金体系が複雑です。一方、ひかり電話の音声通話の場合、通話先によって通話料金は変わりますが「通話地点間の距離」「時間帯」には影響を受けません。非常に分かりやすい料金体系となっています。
一見すると毎月の電話料金は安くなるので、NTT東西の加入電話、INSネット64を利用している方は、一日でも早くひかり電話 (0ABJ型IP電話)に切り替えた方が良いといえるでしょう。しかし、ひかり電話(0ABJ型IP電話)に切り替えるためには、当然のことですが、光回線を自宅や事務所に引く必要があります。今までは固定電話の料金の支払いだけで済んでいたのに、ひかり電話に切り替えるためには、新たにインターネット料金を支払う必要がでてきてしまう。そんな時、便利になってくるのがワイヤレス固定電話です。
インターネットを導入することなく、条件によってはひかり電話と同じくらいの電話料金を実現させているものが、各通信キャリアから提供されているワイヤレス固定電話です。その特徴を列挙すると、以下の通りになります。
各通信キャリアともに、今まで固定電話で使っていた電話番号を引き継げることを強くアピールしていますが、電話番号の引き継ぎができるのは、あくまでもNTT東西の加入電話とINSネット64を契約したときに発番された(割り当てられた)電話番号だけです。
この場合、「電話加入権」を持っていなくても引き継ぎ可能です。かつては固定電話の回線を引くために、「施設設置負担金」を日本電信電話公社やNTTに支払う必要がありました。現在では施設設置負担金を支払わずとも、NTTの固定電話を引くことができますが、この施設設置負担金を支払った場合を「電話加入権を持っている」と一般的に言われています。
しかし、NTTから固定電話の電話番号が発番された(割り当てられた)としても、その電話番号が、NTTの光回線のインターネットを契約したときに、ひかり電話の電話番号として発番された(割り当てられた)場合は、ワイヤレス固定電話に番号を引き継ぐことはできません。 auひかり、SoftBank光、NURO光などの光回線契約の際に割り当てられた電話番号も、同様に引き継ぐことはできません。
携帯電話と同じく、通話地点間の距離や時間帯に通話料金は左右されないので、県外通話も市内通話と同じ感覚で使えます(KDDIのホームプラス電話は除く)。フリーダイヤルへの発信も可能、110番などの緊急通報も可能です。
ただし、緊急通報へ発信した時は、発信先に表示される電話番号は「070」「080」「090」になるため、相手には電話をしている場所を正確に伝える必要があります。ワイヤレス固定電話にも、スマホやホームルーターとのセット割引があり、セットを組むと基本料金が安くなります。さらにはワイヤレス固定電話と同一のキャリア間(家族間)での通話が無料になる、といった特徴もあります。
ひかり電話を利用していない方が、固定電話の基本料金、通話料金を安くすることができるワイヤレス固定電話ですが、次のようなサービスを利用している場合は、ワイヤレス固定電話を使うことができません。
また、昭和の時代に登場した、いわゆる「黒電話」は停電時でも利用可能ですが、ワイヤレス固定電話はコンセントからの電源供給が必要なので、停電時は使用することができない、携帯電話の電波を使用しているので、電波が弱いと通信が不安定になる可能性もある、といった特徴があります(KDDIのホームプラス電話のみ乾電池対応なので停電時でも使用可能)。ですので、ワイヤレス固定電話は従来の固定電話と全く同じ機能、性質を持つとはいえません。ここからはNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク各通信キャリアのワイヤレス固定電話の特徴を見ていきます。
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