イギリス・Nothing Technologyが、スマートフォン「Nothing Phone (1)」を発表した。
日本でも8月から販売される予定で、価格は8GB+256GBのモデルで6万9800円。
この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2022年7月16日に配信されたものです。メールマガジン購読(税込み月額550円)の申し込みはこちらから。
Nothing Phone (1)は背面が光る「Glyph Interface(グリフインターフェイス)」が特徴となっている。
発表会や事前に行われたメディア向け説明会を取材したが「既視感」しかなかった。
創業者は「いまのスマートフォンがつまらない」と語る一方で、日本のソニーや任天堂をリスペクトしている。「ここ最近、ワクワクするスマートフォンがなかったため、自ら作ることにした」というのが製品開発のきっかけだ。
ここ数年、新たにスマートフォン開発にチャレンジする人たちを観てきたが、言っていることはまるで同じだった。
そうした人たちは、ほとんどがアップルのスティーブ・ジョブズを信仰しているものの「最近のiPhoneはつまらない」と感じている。だからといって、個性的な製品が並んでいるAndroidは使ったこともなく、「いまのスマートフォンは画一的でつまらない」と豪語しているのだ。
そこで自らスマートフォンを開発することになるのだが、中国のODMなどに発注すれば、それなりの製品はできてしまう。デザインにこだわった製品も、なんとかカタチになってしまうのだ。
ただ、アップル・iPhoneは、もはやスマートフォン単体で語る製品ではない。iOSという独自のプラットフォームの上で動き、iCloudやiMessageなどのサービスと連携しているからこそ、iPhoneのユーザー体験は心地いいのだ。
単にデザインに手を入れた位のAndroidでは、iPhoneユーザーは振り向くことはないだろう。
一方でAndroid陣営は、カメラ性能に磨きをかけており、センサーやレンズ、さらには独自チップを開発することで、画質を磨いている。単にデバイスを調達するだけでなく、AIによる機械学習に加えて、それこそ、10年以上続く「職人技」によって、画質を上げている。新規参入メーカーがおいそれと戦えるジャンルでもない。
確かに、iPhoneが外観やデザインでワクワクするものでは無くなってしまったのは事実だろう。ただ、「持ちやすさ」とか「部品の詰め込みやすさ」「防水性能を維持するため」といった目的を考えると、自ずと筐体のカタチは決まってきてしまう。
確かに新規参入メーカーが語るように、いまのスマートフォンは画一的でつまらないものになっている。だからこそ、新たに参入できるチャンスがあるように見えるのだろう。
しかし、本来であれば、既存のメーカーがもっと新しいことにチャレンジしてもいいのではないか。それこそ、Xiaomiが企業として大きくなりすぎたため「poco」という新ブランドを立ち上げたように、全く新しいブランドを作り、新しいスマートフォンのカタチに取り組んでもいいのではないか。
大手メーカーは、余裕のあるうちに、次の一手を打つべきではないだろうか。
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