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端末“だけ”を売るのはキャリアの仕事ではない 転売ヤー対策が重要――NTT/NTTドコモ決算会見一問一答(2022年11月編)1円端末は「基本的に反対」(2/3 ページ)

» 2022年11月09日 07時00分 公開
[井上翔ITmedia]

ドコモ井伊社長との質疑応答

 続けて、NTTドコモの決算説明会における同社の井伊基之社長と報道関係者との主なやりとりを見ていこう。一部、NTTの島田社長のやり取りとかぶる場面もあるが、その点はご容赦いただきたい。

井伊社長 総合ICTセグメントの決算を説明するNTTドコモの井伊基之社長

事業における円安の影響は?

―― 端末販売において円安の影響を受けているという話があったかと思います。通信事業を中心に(端末や機器の調達などにおいて)、原価高による影響が続くと思うのですが、今後の見通しについて考えをお聞かせください。今まで“値下げ”の話しか出てこなかった通信料に与える影響も可能な範囲で知りたいです。

井伊社長 確かに昨今、端末そのものだけではなく、その製造に必要な半導体などあらゆるものの値段が高騰しています。少なからず影響は受けているのは確かですが、端末の価格については毎年の刷新のタイミングで大きく変動するという状況です。ここは仕方のない面もあって、(端末を調達する立場の)私たちにはどうにもできない面があります。なので、私たちとしてはできるだけ割安に買えるように“買い方”で工夫をしています。

 一方で、通信機器(基地局で使うアンテナなど)の価格も、単体で見ると上昇してきていますが、その代わりに機能が強化されることも多いです。現在進めている(ネットワークの)仮想化など、効率化を進めることで(機器のコスト増を)吸収したいと考えています。

 (端末や機材の調達コストが)どのくらい増えるかは予断を許しませんが、それを理由として通信料を値上げする(コスト増を価格に転嫁する)ことに至るような状況にはありません。万が一、そうなってしまった場合は、他のキャリアも同様に値上げをせざるを得ない状況になっていると思います。

3G(W-CDMA/CDMA2000)停波に伴う周波数帯の再割り当てについて

―― 総務省の「携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォース」の報告書案がまとまりました。その中で「移行期間は5年」「移行にかかる費用は原則として既存事業者が負担」と盛り込まれています。御社を含む既存事業者には厳しい内容だと思うのですが、受け止め(感想)を聞かせてください。

井伊社長 この話、今初めて知った所です。答える準備はしておりませんが、タスクフォースの提言に対してどう対応するのかが、次の課題なのかなと考えております。できることはきちんとやっていきますし、解決すべきことがあれば(ドコモからも)提言していこうと思います。

―― 決定に関して不満はないということなのでしょうか。(タスクフォースに関連する)議論は難航していた中で、私個人としては“楽天モバイル寄り”な案だなと思ったのですが……。

井伊社長 私たちの意見は「(移行期間は)10年かかる」「(移行にかかる費用は)受益者(≒楽天モバイル)負担で」というものでした。今回、このような案が「答え」として出てきたわけですが、これが現実的にできるのかどうかという点が、次の課題になる思います。

 既存事業者が「10年」と言っているものを急に(短縮して)5年でできるのか、「受益者負担」と言っているものを本当に「我々(既存事業者)負担」にしてできるのか、常に(総務省や楽天モバイルとの)キャッチボールになると考えています。「不満」という感情的な問題ではなくて、元々は“円滑な移行に関する”タスクフォースだったはずなので、それを実現できる方法をお互いに探る作業が続くという受け止めです。

タスクフォース 携帯電話用周波数の再割当てに係る円滑な移行に関するタスクフォースの報告書案は、どちらかというと楽天モバイルに有利な報告書案を取りまとめた。「後から参入する側が不利になりやすい」という事業環境を考えると妥当といえば妥当なのだが、性急に進めると既存事業者のユーザーの不利益になる可能性も否定できない面もある

ARPUを引き上げる鍵は動画コンテンツの“再生”?

―― 決算説明の中で、中/大容量プラン(ahamo大盛りと5Gギガホ プレミア)の契約が好調だという話がありました。これはなぜなのでしょうか。「ARPU(1契約当たりの収入)を増やす」という話もありましたが、ahamoの比率が高まると(むしろ)ARPUを下げてしまう結果になりそうなのですが……。

井伊社長 大容量を使うということは「映像」を見るニーズが高まっているということです。「(大容量プランの選択率が高まったのは)私たちの映像サービス(「dTV」「dアニメストア」など)が売れたからです!」と言いたい所なのですが、実際は「YouTube」を見る人が増えたという理由の方が大きいと思います。

 YouTubeの視聴は高い年齢層にも広がっていますし、企業がYouTubeを舞台にしていろいろな発表会をするようになりました。パケット通信量のデータを見ても映像関連のトラフィックが相当伸びています。トリガーはYouTubeだと思います。本当であれば、私たちの有料コンテンツにも誘導したいのですが、そうはなっていません。

 ahamo大盛りも好評なのですが、最近はギガホ(5Gギガホ プレミア)のユーザーがだいぶ増えました。これが(ARPUの)伸びにつながっているのだと思います。キャンペーン等々はやりますが、(ARPUは)そう簡単にコントロールできるものではないと思っています。ただ、大容量へのニーズが高まってくれば、必然的に容量の大きなプランへのニーズも高まってきます。段階制の「ギガライト」でも、最近は1つ上のステップ(月額料金)になるというお客さまが増えています。

契約者数 9月末時点での5G契約数は1602万件となり、ドコモ全体の契約者数の約3割を占めるようになった。2022年度末には半数を伺う想定だという。その中でも、通信容量が大きめのプランの契約比率は高まっているという

―― モバイル通信サービスの収入を見ると、この第2四半期で“反転”している(増収に転じた)ように見えます。携帯電話サービスの契約者数も伸びているので、料金値下げによる減収をアップセル(通信容量のより大きなプランへの誘導)や純増によってカバーしているのかなと思うのですが、直近のMNPの状況を含めて、(反転要因を)もう少し詳しく説明していただけないでしょうか。

井伊社長 やはりお客さまを増やさないことには、当社の事業は成り立ちません。ポートイン(MNPによる転入)での競争において、弊社は20代の若いお客さまを20年ほど(他社に)取られっぱなしでした。それに対してahamoを投入した所、若いお客さまが戻ってきてくださいました。

 低価格という観点では(子会社のNTTレゾナントが提供する)「OCN モバイル ONE」が好評で、「低容量でいい」「パケット(データ通信)はあまり使わない」というお客さまが自社(グループ内)にとどまってくださるようになりました。これらが、全体としてのプラスにつながっているのだと思います。

 さりとて、日本の人口はこれから増えていくわけではありません。(MNPで)「取った」「取られた」を繰り返すだけではしょうがないので、ARPUを上げていくことが重要な戦略なのだろうと考えます。価格勝負よりも、たくさん容量をつかってもらえるコンテンツやアプリケーションを増やしていくことが私たちの使命なのかなと思っています。

 ARPUは「4000円」が1つの目標なのですが、もう少し落ち込むかなと思ったらそうでもなかったので「これで下げ止まった!」と言ってみたいです。「思えば願いはかなう」ということで。

 結局の所、中/大容量のプランが継続的に伸びていることが効いているのですが、それが「弊社主導の動き」なのか「市場全体の動向」なのかという所で、(先ほども言った通り)後者の影響によるものです。

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