NTT(日本電信電話)は8月8日、2022年度第1四半期の連結決算を発表した。前年度同期比で増収増益を果たし、特に営業収益(売上高)と当期利益については過去最高だったという。
モバイル(移動体)通信事業を担うNTTドコモグループ(NTTドコモと同社子会社)については、営業利益は前年度同期比で微増したものの、通信料金の値下げの影響を受けて営業収益は減少した。
この記事では、同日に行われた決算発表会における質疑応答から、モバイル通信事業に関連する主なやりとりを紹介する。
今回の決算説明会の質疑応答では、7月2日から4日にかけて発生したKDDIと沖縄セルラー電話の通信障害に関する質問が多く寄せられた。
―― 先月(7月)にKDDIの通信障害がありました。これを受けて政府(総務省)が緊急通報時のローミング(別事業者のネットワークの借用)について検討を始めると公表しました。ローミングについて、課題点あるいは希望することなど、社長お考えをお聞かせください。
島田明社長 まず、先般のKDDIさんの障害は他人事ではありません。昨年(2021年)はドコモも障害を発生させています。現状において、KDDIさんの(障害に関する)データが良く分かっていませんので、よくお話しを聞きながら、その経験を踏まえて(ネットワークの運用や保守について)見直すべき点があれば見直していく必要があると考えています。
話題になっている緊急通報時のローミングについては、できるだけ早く実現できるように協力していきたいと考えています。そのためには、事業者間の協力も重要ですし、総務省が調整や指導を行いつつ(議論すべきことの)整理を行うことも欠かせません。
まずは時間をあまり掛けないでやることが大事だと思います。(現行の法令で義務付けられている)「緊急通報機関からの呼び返し(折り返し)」も議論に入れて構わないとは考えますが、時間とコストが掛かることなので、相当の議論が必要となるでしょう。まず、できることを先に実現するのが急務ではないでしょうか。
(自動車の)自動運転などを考えると、IoT(モノのインターネット)の時代におけるネットワークのアーキテクチャやオペレーション(運用)の在り方は再度強化していく必要があると思いますので、そのあたりも勉強していきたいと思います。
―― ローミングに関するコストについて、「緊急通報に絞る」のか「データ通信も含める」のかによって差が出てくると思います。このコスト負担について、どう考えていますでしょうか。社長は「事業者が負担すべき」との旨を過去のインタビューで話していたかとは思いますが……。
島田社長 最低限のローミングについてのコストは事業者が負担すべきだと考えています。もちろん(ローミングの)要求水準によって(コストが)変動する部分もあるので、それに応じて検討しないといけないと思います。
最低限のローミングは、事業者の責務として(費用を)負担すべきだというのが私の考え方です。
―― 掛かる費用の試算は既になされているのでしょうか。
島田社長 残念ながらまだです。全然できていません。
「緊急通報の他にどこまでやるんだ?」という議論があるかと思いますが、この問題は結構複雑で、(ローミングを受け入れる事業者に)輻輳(ふくそう、※1)が波及してしまうのはマズいわけです。仮に緊急通報以外で考える場合は「輻輳を起こさない、波及させない」前提を踏まえて考慮しないといけませんし、法人向けにはなると思いますが「バックアップサービス」(※2)みたいなものをサービスメニューとして考えていく必要があるとも思います。
(※1)通信が混み合って集中しすぎることにより、通信が不安定になったり停止したりする現象
(※2)筆者注:ここでは他の通信事業者への迂回(うかい)を行うなど通信経路の多重化を図るサービスを指すと思われる
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