金子恭之総務大臣が8月3日に臨時の記者会見を行い、非常時における事業者間ローミングを検討する旨を述べた。
KDDIの通信障害では、7月2日から61時間25分にわたって音声通話が使えない、または使いにくい状況が発生したが、緊急通報も利用できないことも問題となった。KDDIの回線がダウンしても、ドコモ、ソフトバンク、楽天モバイルといった他キャリアの回線をローミングで使用できれば、障害発生時にも緊急通報を利用可能になる。
金子氏は「今回の大規模な通信障害の事案を踏まえ、自然災害や通信障害等の非常時においても、緊急通報をはじめとする携帯電話が継続的に利用できる環境の整備に向けて、事業者間ローミング等に関する検討会を、2022年9月をめどに立ち上げる」とコメント。外部有識者や携帯電話事業者、緊急通報を取り扱う機関とともに検討を進め、2022年内に基本的な方向性を整理するとした。
一方、日本で緊急通報を利用するには、電話が切れても緊急機関が発信者に折り返し発信できる「呼び返し」の機能を持つことが義務付けられている。ローミングを利用する場合でも呼び返しの機能が必須になるが、金子氏は「事業者間ローミングによって緊急通報が継続的に利用できる環境の整備が最優先で検討すべき課題」と認識しており、「速やかに検討を進めていきたい」とした。
事業者間ローミングについては、2011年の東日本大震災でも検討課題に挙がったが、そこから10年以上実現していない背景について金子氏は「当時は3Gが主流であり、携帯電話事業者各社の通信方式が異なっていたため、導入は技術的に困難だった」と説明する。4Gから5Gに移り変わりつつある現在、各社の通信方式に差異がなくなり、「技術面でのハードルが解消されてきた」との認識だ。
同日、KDDIと沖縄セルラー電話に対して行った行政指導については「これまでにない長時間かつ大規模な通信障害であったことを極めて重く受け止め、初めて、総務大臣である私が、事業者に対し、直接、厳重に注意するとともに指導を行った」と話した。
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