情報の周知/広報に課題――金子総務大臣がKDDI/沖縄セルラー電話の通信障害について言及

» 2022年07月05日 20時20分 公開
[井上翔ITmedia]

 金子恭之総務大臣は7月5日、閣議後に定例記者会見を開催した。7月3日の臨時記者会見に続き、7月2日に発生したKDDIと沖縄セルラー電話の通信障害について言及があったので、簡単に内容をまとめる。

金子総務大臣 定例記者会見に臨む金子恭之総務大臣(YouTube動画より)
7月5日の定例記者会見の様子

周知/広報に課題があると認識 今後は報告書を受領してから検証

 今回の通信障害について、KDDIと沖縄セルラー電話は7月4日16時に「ほぼ回復」した旨を公表した

 この点について、金子総務大臣は「国民の日常生活や社会経済活動に必要不可欠な携帯電話サービスが2日以上に渡り利用困難になったことについて、改めて遺憾に思っている」とした上で、通信障害による影響の大きさや、復旧作業が終了したと公表した後も音声通話が利用しづらい状況が続いたことを踏まえて、利用者への周知について「利用者目線で見た際に、両社が通信事業者としての責任を果たしたとはいえないと認識している」とし、今後に向けた検証が必要だとした。

 また、他社の通信障害に関する教訓を生かしきれなかったことについても「(事故の)再発防止の観点から検証が必要」だとした。今後、法令に基づく両社からの正式な報告書を受領した後にしかるべき対応を講じるという。

重大事故 電気通信事業法では、電気通信サービスの障害について、影響人数や提供できなかった時間に応じて総務大臣(総務省)への報告を義務付けている。今回の障害のように「緊急通報を取り扱う音声伝送役務」を中心に発生したため、3万人に1時間以上影響が出た場合に報告義務が生じる

質疑応答

 今回の定例記者会見の質疑応答は、KDDIと沖縄セルラー電話の通信障害に関するやりとりが多くなった。主なやりとりは以下の通り。

―― KDDIの対応を検証されるということですが、特にどういう点が不十分だったのか、どのような検証を行うのか教えてください。

金子大臣 今回の通信障害による影響の大きさや、復旧作業が終了したと公表した後も音声通話が利用しづらい状況が長時間継続したことを踏まえると、利用者への周知/広報の内容、手段や頻度のいずれについても、利用者の不安を解消する余地があったのではないかと考えています。

 いずれにしても、今回の事案は外部有識者で構成する「電気通信事故検証会議」などにおいてしっかりと検証を行い、適切な周知/広報の在り方について検討していきたいと考えています。

電気通信事故検証会議 電気通信事故検証会議は、電気通信事業法に基づいて報告された事故について、有識者が事業者と意見交換した上で再発防止策などを検討するために設置されている(Webサイト

―― KDDIと沖縄セルラー電話の対応を検証するということですが、検証に当たってのポイント(重視する点)と、検証のスケジュール感を教えてください。

金子大臣 検討のポイントは、例えば「設備をメンテナンスする際の事前準備の在り方」「通信障害が発生した後の対応の在り方」「利用者に対する周知/広報の在り方」「NTTドコモの事故の教訓が十分に生かされていたかどうか」などが挙げられると考えていますが、詳細は今後検討することになります。

 法令上は、事故発生から30日以内にKDDIと沖縄セルラー電話から報告を受けることになっていますので、それを踏まえて電気通信事故検証会議などで再発防止に向けた具体的な対応策を速やかに検討していきたいと考えています。

―― 今回の障害では60時間以上も音声通話ができないという大きな影響が出ました。これについて、再発防止策を強化すべきではないかという意見もあります。ご見解を聞かせてください。

金子大臣 今回の通信障害は、極めて多くの利用者に2日以上という長時間に渡って携帯電話サービスの利用が困難になるという前例のない大きな規模であったと認識しています。今後、正式な報告を踏まえて、今般の大規模な通信障害が発生した原因などについて詳細に確認と分析を行いますが、同様の事案が二度と生じることのないように、抜本的な検討が必要だと考えています。

影響数 今回の通信障害は、au/UQ mobile/povo携帯電話回線の過半数に影響を与えた可能性がある

―― 周知/広報に関する話がありましたが、大規模な通信障害によって物流や交通など多岐に渡る分野で支障が発生しました。これからの時代、モバイル通信がさまざまな場面で使われるようになる中で、1社だけでは情報発信が難しいという面もあるかと思います。政府として(沖縄セルラー電話を含む)5社の情報を集約して発信することに取り組む余地もあると考えますが、考えをお聞かせください。

金子大臣 今回のような大規模な障害は、個人の利用者のみならず、法人が携帯電話を使って提供するサービスや、 バスや自動販売機といったモノとの通信を行うIoT回線にも大きな影響を与えました。社会全体のデジタル化が急速に進む中で、携帯電話サービスは物流や交通を始め、あらゆる分野で利用されており、社会経済活動に必要なインフラとしてますます重要になっています。

 ご指摘の(政府による)情報の集約や発信については、まず当事者である事業者が適切に対応することが必要ではありますが、総務省としても携帯電話サービスが我が国の社会経済活動に与える影響を念頭に置いて、再発防止に向けて取り組んでいきたいと考えています。

―― 今回の通信障害では、緊急通報がつながらなかったり、訪問診療で連絡が付かなかったりと、医療の現場にも支障をきたしたと聞いています。結果として、命に関わる問題が長時間続いた事に対する受け止めをお聞かせください。(総務省)消防庁の考えと合わせてお聞かせください。

金子大臣 この障害によって、2社の携帯電話から119番通報が入らないという事態が生じたこと、ひいてはご指摘のような命に関わるような問題が発生したことは極めて遺憾ですし、深刻に受け止めています。

 総務省消防庁では、各消防本部に障害発生の当日中に住民への広報を行うようにお願いをすると同時に、消防庁のTwitterアカウントを使って、緊急時は他社の携帯電話や固定電話からの119番通報や、最寄りの消防署に駆け付けて通報することを呼びかけました。台風4号の影響が懸念される所ですが、関係省庁災害警戒会議では自治体に対して気象情報や避難情報の住民への伝達に漏れのないよう適切な対応を要請しました。

―― 総務省は総務審議官をKDDIに派遣しました。この対応の狙いと背景を教えてください。

金子大臣 通信障害が発生したという連絡を受けて、総務省は速やかにKDDI(と沖縄セルラー電話)に対して早期の復旧に向けて全力に取り組むと共に、利用者にはきめ細かい情報の周知/広報を丁寧に行うことを要請しました。

 しかし、長時間経過しても事態の改善が見られず、今後の見通しも不透明で利用者の不安も高まっていたことから、事態をタイムリーに把握し、利用者への適切な周知/広報を促すために、総理からの指示もあり、幹部級かつ技術に明るい技官をリエゾン(連絡員)として派遣して対応に当たらせました。

 SNS上では「素人を送り込んで現場の足を引っ張ったんじゃないか?」という誤解もありましたが、技術に精通した技官を派遣することで、混乱しているKDDIに対して助言をして、利用者に対するきめ細かい周知/広報についても助言させていただきました。

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