楽天モバイルの“0円廃止”がもたらした「ユーザー流出」と「収益改善」 黒字化の勝算は?石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年11月12日 09時29分 公開
[石野純也ITmedia]

 楽天グループが、11日に第3四半期の決算を発表した。5月に1GB以下0円を廃止した新料金プラン「Rakuten UN-LIMIT VII」を発表して以降、ユーザーの流出が続いていた楽天モバイルだが、移行措置のキャッシュバックは8月に、ポイントバックは10月に終了した。契約者数を一定程度維持しつつ、“有料”に持ち込めるかは1つの焦点だった。11日の決算説明会は、その答え合わせができる場だったといえる。同社が初めて公開したARPU(1ユーザーからの平均収入)からも、その動向をうかがうことができる。

楽天モバイル 決算説明会で記者からの質問に答える楽天グループの三木谷浩史会長兼社長

 1GB以下無料の廃止で収入増が実現しつつある楽天モバイルだが、基地局への投資コストも一巡しつつある。収益の増加と費用の減少の両輪を回し、2023年の黒字化を目指すのが同社の戦略だ。また、総務省のタスクフォースから出された報告書案を受け、プラチナバンド獲得の公算も高まっている。ここでは、0円廃止後の楽天モバイルが取る戦略を読み解いていきたい。

0円廃止でユーザー数は減少、一方でARPUは向上

 5月に発表されたUN-LIMIT VIIで1GB以下0円の廃止を打ち出して以降、楽天モバイルの契約者は減少を続けている。契約者数の推移を見ると、その様子が分かりやすい。UN-LIMIT VIIを発表した5月に契約者の減少が始まり、サービス開始直前の6月にその谷が大きくなっている。7月は純減を抑えられたものの、8月には再び減少幅が顕著になった。これは、1GB以下のユーザーに対する1078円のキャッシュバックが8月いっぱいで終わったためだろう。

楽天モバイル 月別の契約者数。UN-LIMIT VII開始直前の6月に大きく純減した他、キャッシュバックの終わる8月にも再び純減幅が拡大していることが分かる

 9月の契約者数は8月からほぼ横ばいだが、わずかに減少。楽天モバイルの自社回線は、ユーザー数が455万まで低下した。第1四半期には491万契約まで伸ばしていたため、そこから36万契約ほど失った格好だ。半年で1割弱、契約者が減少したのは異例といえる。10月は同社の第4四半期になるため、データは公開されていないが、楽天ポイントでのポイントバックも同月で終わるため、契約者はさらに減少している可能性が高い。複数のMNOやMVNO関係者が、「10月はMNPでの獲得が伸びた」と語っていることも、これを裏づける。

楽天モバイル 楽天グループの決算補足資料から筆者が作成。単位は100万。契約者数は3月末に491万まで拡大したが、新料金プラン導入の影響で2021年末時点とほぼ同水準まで減少した

 一方で、楽天モバイルに残ったユーザーも多かった。グラフの軸がないため、正確な数値は不明だが、4月時点では半数以上が無料で済ませていた。UN-LIMIT VIIの発表や導入で、この割合が急減するかと思いきや、8月時点でも4割弱の無料ユーザーが残っている。そのユーザー数をほぼ維持したまま、9月には全ユーザーが有料になった。この急激な有料ユーザーの割合増加が収入に与える影響は大きい。

 また、最後の移行措置であるポイントバックが10月31日で終わり、契約者数も増加に転じているようだ。楽天モバイルのCEO、タレック・アミン氏によると、「11月はUN-LIMIT VII発表前まで(純増数が)上がってきている」という。11月はまだ11日しかたっていないものの、新規契約者数が解約者数を上回っていることがうかがえる。残ったユーザーと同様、新たに獲得したユーザーも最低1078円は支払うため、楽天モバイルの収入は確実に増加する。

 こうした効果を反映しているのが、楽天モバイルの売上だ。UN-LIMIT VII発表前の第1四半期は、MNOの売上高が118億1700万円だったのに対し、UN-LIMIT VII導入後の第3四半期は205億6700万円を記録。ユーザー数は減少した一方で、売上高は大きく伸びている。内訳を見ると、音声通話やオプションはほぼ横ばいか微増なのに対し、データ通信料収入の拡大幅が大きい。

楽天モバイル MNOの売上高は大きく増加し、第3四半期には200億円を突破した

 初めて公開したARPUからも、その傾向がつかめる。1273円だった第2四半期のARPUは、UN-LIMIT VII導入後の第3四半期に1472円まで上昇。9月から、100%のユーザーから料金を取れるようになった結果、ユーザー1人あたりからの収入も伸ばせたことが分かる。音声通話のARPUや、オプションのARPUが上昇傾向にあるのは、同社の回線をメインで使うユーザーが増えている証拠だ。アミン氏によると、「オプションの付帯率も増加している」という。こうした収入の増加が、1GB以下0円を廃止した効果といえそうだ。

楽天モバイル 初公開された楽天モバイルのARPU。1GB以下0円の廃止や、無料キャンペーンの終了で、四半期ごとに大きく伸びている
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