米国の携帯電話メーカー「Orbic(オルビック)」が日本参入へ 「5年計画」で認知向上を目指すMWC Barcelona 2023

» 2023年03月15日 12時15分 公開
[房野麻子ITmedia]

 米国の携帯電話メーカー「Orbic(オルビック)」が日本市場への参入を表明している。4月に東京でイベントを開催し、日本で発売する製品を発表するという。それに先立ち、OrbicはMWC Barcelona 2023で日本の報道関係者向けに説明会を開催し、会社の概要や日本参入への意気込みを語った。説明は同社 上級副社長のダニー・アダモポウロス氏が行った。アダモポウロス氏は2020年までモトローラ・モビリティ・ジャパンの代表取締役社長を務めていた。

Orbic MWCでのOrbicブース
Orbic Orbic 上級副社長のダニー・アダモポウロス氏

非常に幅広い製品をラインアップ、Verizonなどに納入

 Orbicは2006年に設立。米ニューヨークに本社を構え、プエルトリコやインド、台湾、中国、オーストラリア、日本、ドイツ、イギリスと世界中に拠点がある。ハードウェアの設計は主に米国本社で行っているが、台湾にもデザインハウスを設置。インドでは主にソフトウェア開発や生産を行っている。

 2019年に初めてOrbicブランドでVerizonに4Gスマートフォンを納入。順調に取引先を増やし、2022年には米国外に進出してオーストラリアのTelstraと契約した。2023年にはAT&Tと契約した他、日本を含むその他海外市場への参入を予定している。

 製品はスマートフォンやタブレットの他、ノートPC、CPE、Wi-Fiルーター、スマートウォッチ、アクセサリーなど、ラインアップは非常に幅広い。スマートフォンは4Gと5Gに対応。Verizonからミリ波に対応した5Gスマートフォンを求められ、9カ月後には納入したというフットワークの軽さもアピールした。防水・防塵(じん)性能を持つ端末や、耐衝撃性能を示すMILスペックに準拠したタフなモデルも用意している。

Orbic
Orbic ブース内に展示されていたスマートフォン「FUN+ 2nd Gen」

 特徴的なのは、4Gの折りたたみケータイもそろえていること。日本はソフトバンクとドコモが3G停波を控えており、もし日本で展開されれば、まだ約1200万もいるとされる“ガラケー”ユーザーには選択肢の1つとなるかもしれない。なお、折りたたみケータイは「Kai OS」を採用しており、現在、日本語化に取り組んでいるという。

Orbic Kai OSを採用した折りたたみケータイもラインアップ

 タブレットは8型、10型、12型の3タイプを提供。モバイルWi-FiルーターはVerizonで50%のシェアを持つそうだ。プロセッサにQualcomm X75を搭載したルーターを世界で初めて展開する計画だという。

 ユニークなところでは、ホームオフィス向けにディプスレイが備わった電話機も提供している。この他、CPE、スマートウォッチ、ノートPC、Chromebookなども紹介した。

Orbic スマートウォッチやワイヤレスイヤフォン、タブレットなども展示されていた

日本参入の理由とブランド認知度を上げるための施策

 Orbicは本当に非常に幅広い製品ラインアップを持つが、「日本には2、3製品から始めて、だんだん広げていくつもり」だとアダモポウロス氏は語る。

 日本はハイスペックな製品から海外メーカー製のエントリーモデルまで、幅広いレンジの端末が販売されていて競争が激しいが、「そこの空いているところ、必要最小限で品質と価値を備えたところを目指していきたい」と同社 ビジネス・ディベロップメント・マネージャーの島田日登美氏は付け加えた。

 また、日本参入の理由を問われたアダモポウロス氏は「いい質問だ」と受け、以下のように回答した。

 「日本のオペレーターやユーザーは、ブランドや製品に対しての要求が非常に高く、日本で製品を発売するのは難しいことだと知っていますが、Orbicの得意とするところだと思ったのです。Mike(Orbicの社長 兼 CEO Mike Narula氏)が日本に事業を拡大したいと言い出し、実はこれが、私が(モトローラ)退職後に採用された理由の1つでもあります」(アダモポウロス氏)

 また、アダモポウロス氏は「Orbicはグローバルブランドだが、日本のテイストを提供する」とも述べている。日本のテイストというのは、物流センターや、きちんとした日本語を話す週7日対応するコールセンターなどだ。島田氏が多くの時間を費やしてこの準備に当たっているという。

 とはいえ、Orbicは日本ではまったく認知されていないブランド。競合他社が多い中、どのようにブランドの認知度を高めていくかとの質問に対しては、モトローラ時代の経験から学んだことを生かすと語った。

 「ブランド構築については、実は私たちにも経験があります。モトローラでは1つの製品、1つの顧客から始めました。次の製品のときには日本語のWebサイトを作るなど、いろいろなことを行いました。その成功から多くのことを学んでいます。日本市場も進化し、小売りチャネルは依然として重要ですが、MVNOチャネルも非常に重要です。私たちはパートナーと組んで、店舗でのプロモーションをサポートします。デジタルでもプロモーションを展開します。例えば、Twitter、YouTube、Facebook、LINEなどです」(アダモポウロス氏)

 さらにアダモポウロス氏は「私がマンガになってもいいですか?(笑)」と語りかけた。アダモポウロス氏はモトローラ時代、キャラクターの「ダニーさん」になってステッカーやグッズに使われたことがある。Orbicでもダニーさんのゆるキャラが登場するかもしれない。

 Orbicは「価値で勝負する」という。米国のブランドであることも「それなりの重みがある」。アダモポウロス氏は「日本の伝統的なビジネススタイルを尊重しながら、製品のプロモーションで競争し、小売店のパートナーと協力していきます。だからといって初日から成功するわけではありません。日本に来たからには5年計画でやっていきます。私たちの計画は、大きな市場シェアの数字を追い求めることではありません」と述べ、持続可能であること、実用的(practical)であることが重要と語った。

ベルギーのアクセサリーブランド「Dbramante1928」も取り扱う

 Orbicはベルギーのアクセサリーブランド「Dbramante1928」(デブラマンテ)の製品も取り扱う。Dbramante1928はサステナビリティやフェアトレードを強く意識したブランドで、2011年にデンマーク・コペンハーゲンで創業。主に欧州に販売拠点があり、インド、フランス、オランダでデザインと品質管理、開発を行っている。年間2000万個のスマホケース作るキャパシティーがあるという。

Orbic Dbramante1928のスマホケースやバッグもブース内で展示されていた。日本でも販売される予定だ

 ケースには樹脂製とフルグレインレザーを使ったものがある。「Eco-シールド」というリサイクル材100%の保護フィルムも提供する。この保護フィルムは強化ガラスのものに比べて約88%CO2を削減でき、使い終わった後はリサイクルされるという。機能は一般的な保護フィルムと変わらず、「価格差もないようにしたい」(島田氏)とのことだ。

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