「MVNOが停滞している」データのカラクリ 今、格安スマホ市場で何が起きているのか(3/3 ページ)

» 2023年04月15日 06時00分 公開
[房野麻子ITmedia]
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パネルディスカッション:料金値下げ以降の業界やユーザーの変化は?

 各社から自社のサービスが簡単に紹介された後、パネルディスカッションが行われた。

 1年を振り返ってMVNO業界やユーザーの変化の印象を問われ、mineoの福留氏は「21年春以降、各社、各ブランドから新料金プランが発表され、お客さまにライフスタイルに合った最適な料金プランを選んでいただけるようになった」と、新料金プランの発表ラッシュを振り返った。解約金の撤廃やSIMロックの原則禁止、キャリアメールの持ち運びなどの施策によって、乗り換えがしやすくなり、他方で節約志向の高まりもあり、事業者間の乗り換え、料金プラン見直しの動きが活発になっているとの認識を語った。

MVNO オプテージ モバイル事業戦略部長の福留康和氏

 一方、イオンモバイルの井原氏は「ユーザーの変化自体はあまりなかった印象」だと話す。

MVNO イオンリテール モバイル事業部 イオンモバイル商品G 統括MGRの井原龍二氏

 「通信障害があったり、楽天モバイルさんの0円廃止があったりして、MVNOが少し伸びたという話もありましたが、裾野という意味では広がっていない。今までMVNOを使ったことのあるユーザーが、また契約したという感じだと思っていて、結局、キャズムは超えていない」(井原氏)

 ただ、自身の体験として、ahamoやLINEMOからイオンモバイルに移ってくるユーザーが少し増えてきていると感じているそうだ。「大手キャリアの格安ブランドを利用した人が、もう一段安いMVNOに関心を示している」と、今後の期待をにじませた。

 NUROモバイルの田中氏は「特に昨年(2022年)は顧客の流動化が大きかった」と振り返った。コロナ禍で外出する機会が制限されたことでオンライン化が進み、「スマホの契約に対する心理的ハードルが下がった。ほとんどがオンラインでご契約いただいているNUROモバイルにとっても追い風になった」という。コロナ禍が収まり、社会活動が活発化した今年(2023年)からは、トラフィックが増えるとともに、スマホの使い方や5Gを活用したコンテンツのリッチ化などで「新たなステージに入っていく」と捉えている。

MVNO ソニーネットワークコミュニケーションズ MVNO事業室 室長の田中直樹氏

 mineoもオンラインでの契約が9割だが、コロナ禍以前と以降とで獲得のトレンドは変わっておらず、コロナ禍の影響は特になかったという認識。イオンモバイルは2社とは逆でリアル店舗での契約が9割とのことだが、コロナ禍の時期にWebサイトの改修を行ったところ、オンラインでの契約が2割を超えたという。ただ、コロナ禍でもイオン店舗はしっかり開店していたため、こちらも特に変化はなかったという認識だ。

 今後のMVNO業界やユーザーの変化について、井原氏は、キャリアの移行が面倒だと思っている人、今のままで十分と考えている人にアプローチすることの難しさを語った。MNPを知らない人、キャリアメールを維持できることを知らない人がまだ多いという。

 「問題がクリアされていることを知らない人が多い。MNOさんの契約が面倒だという意識を引きずっているのかなと。MNPの手数料もなくなり、非常に乗り換えやすくなっているのでチャンスはたくさんありますが、どう気づいてもらうか」(井原氏)

 福留氏は「サービスのコモディティ化が進んで激しい価格競争が起きているが、今後もこの激しい競争環境は継続する」との考え。「価格や機能といったベースの価値だけではなく、他社にはない独自の価値、独自のサービスを追求して競争力を高めていくことが重要と考えています」(福留氏)

 mineoはファン(ユーザー)コミュニティーの「マイネ王」や、サービス改善にファンの意見を取り入れるなど、ファンとの関係性を重視した独自のスタンスが特徴だ。ファンからの紹介で契約する人も20%程度あるという。その独自路線を今後も継続するとした

「副回線サービス」に関する見解は?

 2022年のKDDIの通信障害をきっかけに、バックアップ回線に対する注目が高まり、KDDIとソフトバンクは互いに相手の回線を自社のショップでオプションとして契約できる「副回線サービス」の提供を開始した。これについての意見を求められて福留氏は「利用者がより安心して通信環境を利用できるようになる取り組み」とポジティブな意見。mineoでもバックアップ回線を求めるユーザーが増えてきているといい、そうしたユーザーをターゲットとして開発した「マイそく スーパーライト」も紹介した。

 「mineoの新規契約者のうち、約3割は複数SIMを利用しています。mineoとしてもトリプルキャリア対応といった強み、eSIMの提供を通じて、さまざまなキャリアの回線を提供することでニーズにしっかり応えていきたい」(福留氏)

 井原氏は、副回線サービスを「ユーザーのことを考えると必要な取り組み」としたものの、「事業戦略的な感じの取り組みかなと思ってしまった。われわれMVNOも含めてインフラとして考えていただきたい」と注文した。

 田中氏も「MVNOに対してどういう形で提供されていくのか、非常に関心を持っている」と述べた。「NUROモバイルはメイン回線での利用がかなり多いのですが、サブ回線需要となったときに、今期提供を開始する予定のeSIMをうまく重ね合わせながら、どんな展開ができるのか興味があります」

「1円スマホ問題」についての影響や今後の対策は?

 最後に、MVNOがMNPの弾とされることでも問題視された「1円スマホ問題」について、「これだけで1時間くらい話せる(笑)」という井原氏が考えを述べた。

 「弊社としては、以前からこれは問題だと言ってきました。その理由は、通信と端末が分離され、商環境が変わったからです。MNOしかなかった時代だと、1円で売ろうが何をしようが、他の事業に影響を及ぼすことがなかった。それが、MVNOが出てきて、メーカーさんもさまざまな端末を安く売るようになって、小売業もSIMフリー端末を売るようになった。端末のみ販売するところが出てきた中で、キャリアさんが端末を原価割れで売ることは、やはり不当廉売に該当すると思っています」(井原氏)

 MNOの3社寡占が長く続き、「1円販売が当たり前で、商慣習みたいな形になっていた」が、それが否定される時代になった。公正取引委員会が報告書を出したことで「正しい市場」になっていくことを期待していた。

 「ただ、安く買えること自体は全然悪いことではないので、われわれもしっかりと努力して安い端末を提供します」(井原氏)

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