―― 今回、WWDCでもAppleはさまざまな発表をしましたが、どのような点が印象に残っていますか。開発者視点で見たときの期待感や注目されたポイントを教えてください。
神田氏 やはりApple Vision Proは非常に興味深く、インパクトのあるアナウンスでした。価格的な部分も含めて、非常にチャレンジングだと思います。今後のデジタルコンテンツのビジョンとして、グラフィックスの体験も含めてチャレンジしていきたいと感じました。あとはゲームの移植に関しても、引き続きですが、弊社がこれまで発売してきたタイトルをリリースしやすくなると受け止めました。今後の展開を広げていくうえで、そういった点は興味深かったですね。
木本氏 Game Porting Toolkit(WindowsゲームをApple Silicon対応Macに移植するためのツール。WWDCで発表した)は非常に興味深かったですね。まだこれがどこまで使えるのか、詳しくは見たわけではありませんが、Steam Deckと同じようなエミュレーションで、移植がしやすくなります。
どこまで動くかにもよりますが、Appleが本気でゲームをプラットフォームに取り込んでいきたいという思いは感じました。オープンソースで充実させているSteam Deckと方向性は違いますが、Appleが本気で「Windows向けに展開されたゲームを移植しても大丈夫」と言っているようでしたね。
岩崎氏 Appleが他のプラットフォームとのコンパチ(互換性)に関して、ここまで対応したのは見たことがないですね。その意味で本気を感じました。
木本氏 そこに付いてくるMetalのシェーダーのコンバーターや、移植を楽にするツールもWindowsで使えると発表しています。その点で既存のプラットフォームも考慮しているのはありがたいと感じました。
岩崎氏 一番困るのがシェーダーコンバーターで、ここが問題になりやすい。その部分の面倒を見てくれるというのは、皆さん魅力的に感じると思います。
木本氏 Game Porting Toolkitでどこまでやれるのかにもよりますが、ちょっと前のものがそのまま行けるとなると、僕らの仕事がなくなってしまう(笑)。今、シェーダーコンバーターはいろいろなツールを組み合わせて実現していますが、それがApple純正で直接変換できるとなれば、最適化もしやすくなるのではと期待しています。
いち早くMシリーズのMacに対応し、コンソールゲームと同等のタイトルを展開できたことはAppleからの評価にもつながったようだ。WWDCでは、開発者向けにゲームポートツールが発表されていたが、やはりそこへの期待は高かった。macOSが「ゲームモード」に対応するなど、Apple側もゲームに注力しようとしている様子がうかがえる。マルチプラットフォーム戦略のもと、今後、Mシリーズ搭載のiPadやApple Vision Proに同社のタイトルが広がっていくことにも期待したい。
(取材協力:アップルジャパン)
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