App Store以外のアプリストアが認められても効果なし? 「サイドローディング」議論の行方

» 2023年07月28日 10時41分 公開
[山本竜也ITmedia]

 政府は6月16日、「第7回 デジタル市場競争会議」にて、モバイル・エコシステムに関する競争評価の最終報告案を発表しました。

 デジタル市場競争会議自体は、デジタル市場に関する重要事項の調査審議などを実施するために2019年10月に第1回を開催。会議は半年〜年1回開催されていますが、ワーキンググループは月1回程度実施されており、6月9日に第51回目が開催されています。

 モバイル・エコシステムに関する議論は、このワーキンググループで数年前から議論されていた内容です。「セキュリティやプライバシーを確保しつつ、公平・公正な競争環境を実現することにより、多様な主体によるイノベーションが活性化し、さまざまなサービスが生み出されること、ユーザーがそれによって生まれる多様なサービスを選択でき、その恩恵を受けることを目指す」として、議論が進められていました。

 この中では、各アプリストアが自社決済システムの利用を強要していることも問題視されており、今回の最終報告案では、自社決済システムの利用義務付けの禁止や、手数料などを含む利用条件などを公正、合理的かつ非差別的なものとすることを義務付けるなどの提言も行われています。

 しかし今回最も注目されたのは、サードパーティーのアプリストアの解放です。悪印象を避けるためなのか、サイドローディングという言葉は使われていませんが、「セキュリティ、プライバシーの確保などが図られているアプリ代替流通経路を、実効的に利用できるようにすることを義務付ける」としています。

App Store 一定規模以上のOSを提供する事業者に対し、アプリ代替流通経路(アプリストア)の容認を義務付けるという内容。実質、Appleを狙い撃ったもの

 Androidでは、以前からサードパーティーのアプリストア、例えばAmazon App StoreやGalaxy Store、HUAWEI AppGalleryなどを利用可能。また、デフォルトでは禁止されていますが、Webからダウンロードしたいわゆる野良アプリのインストールも可能です。

 このため、話題に挙がっているのは、主にAppleのApp Storeに対してとなります。最終的な提言では、セキュリティやプライバシーの確保などが図られているアプリストアの参入を認めることを求めるとしており、Webサイトからアプリを直接インストール可能にすることは義務付けないとしています。

 ちなみに、アプリストアのセキュリティ確保に関しては、App Storeで配布する(Appleが審査する)ことも検討されています。アプリストアで配布するアプリそのものをAppleが審査するわけではなく、こちらに関してはアプリストア運営側での対応が必要です。

 このApp Store以外からのアプリのインストールは、以前から度々話題には挙がっていました。その主な論点となっているのがApple税ともいわれる30%ほどの手数料です。Androidの場合、手数料が嫌ならGoogle Playを使わなければいいという選択もあるのですが、iPhoneでは、App Store以外にアプリの配布方法がなく、開発者は否が応でも手数料を払う必要があります。

App Store App Storeはセキュリティに関しても強くアピールしています

 App Storeの審査基準も透明性がなく、手数料と合わせてイノベーションを阻害しているというのがデジタル市場競争会議の意見です。

 App Store以外からのインストールを可能にすることに関しては、セキュリティが担保できないという意見もあり、Appleもこれを強く主張。以前から、iPhoneはAndroidと比べてマルウェアなどの感染が少ないとアピールしています。ただ、App Store以外からのアプリのインストールを認めるとすぐにマルウェアに感染してしまうというような論調も多くみられますが、既にサードパーティーストアを開放しているAndroidでも一定のセキュリティが確保されていることを考えると、そこまで強く心配することはないのではという気がしています。

 公正取引委員会が2023年2月に報告した「モバイルOS等に関する実態調査報告書」によると、Androidの場合、Google Play以外のアプリストアの利用者割合は7.5%と極めて少なくなっています。

App Store Google Play以外のストアを利用する人はごくわずか

 また、この中で実施された「モバイルOS等の取引実態に関する消費者向けアンケート調査」でiPhoneユーザーにApp Store以外のアプリストアが利用できる場合、どのような条件であればそのストアを利用したいかも聞いています。その結果は「App Storeよりもアプリの価格が安いなら利用したい」が32%、「App Storeよりもセキュリティが守られるなら利用したい」が34.9%、「App Storeよりも多数のアプリが公開されているなら利用したい」が15.6%という結果でした。

App Store 「App Storeよりもアプリの価格が安いなら」「セキュリティが守られるなら」「多数のアプリが公開されているなら」利用したいという人は一定数います

 仮に他のアプリストアが利用可能になった場合、「App Storeよりも価格が安いなら」という条件に関しては、手数料がなくなる、あるいは安くなる可能性があるのでクリアできるかもしれませんが、セキュリティに関してはどうしても劣ったものになるのでしょう。「App Storeよりも多数のアプリが公開されているなら」も、実現しそうにはありません。

 このような状況なので、Androidの例を含めて考えても他のアプリストアが利用可能になったとしても、App Storeがうまく機能するとは思えず、セキュリティを含めて状況が大きく変わるとは考え難いです。

 ただ、App Store以外のアプリストアが解禁された場合、大きく影響を受けそうなのがストリーミング(クラウド)ゲーミング分野です。Appleは、公式にはApp Storeでのストリーミングゲーミングアプリの配布を禁止はしていません。ただし、ストリーミングゲーミングアプリで配信されるゲームに関して、個別にApp Storeの審査を求めています。もちろん、DLCを含めアプリ内課金に関してもAppleの手数料が必要です。

App Store 「App Store Reviewガイドライン」ではストリーミングゲームを禁止はしていません

 このため、実質的にiPhoneではストリーミングゲーミングアプリが使えない状況になっているのですが、App Store以外のストアが利用可能になるなら、ストリーミングゲーミングアプリをアプリストアとして、さまざまなゲームが配信可能になりそうです。

 とはいえ、AppleがApp Store以外のアプリストアを認めるにしろ、それは日本国内のみということになると考えられます。そうなると、十分なアプリ数、サービスが集まらず、魅力的なアプリストアとはならないでしょう。

 中途半端にストア解放を強要したところで、ほとんど効果は見込めず、逆に「気に入らないなら他のストアへ」と、Appleの締め付けを強化する結果を招く可能性もありえます。最終的に開発者やユーザーの利益になるよう、目先の規制緩和にこだわらず、それが招く結果も踏まえて議論を尽くしてほしいところです。

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