アプリストアから消えたフォートナイト――「手数料30%問題」と「力関係の変化」を考える(1/2 ページ)

» 2020年08月24日 11時57分 公開
[佐野正弘ITmedia]

 米エピック・ゲームズの人気ゲーム「フォートナイト」が、突然App StoreやGoogle Playから削除されるという驚きの事態が起きた。アプリに独自の課金システムを導入し、規約違反となったことがその直接的な理由だが、エピック・ゲームズがそのような行動を取ったのにはアプリストアの手数料に対する根強い不満と、ストア側とアプリ開発者側との力関係の変化がある。問題解決の糸口は見いだせるのだろうか。

周到に準備し勝負を仕掛けたエピック・ゲームズ

 バトルロイヤル型のTPS(三人称シューティングゲーム)でありながら、建物を建てるなどサンドボックス的要素を備えた特徴的なゲーム性で人気のフォートナイト。欧米を中心に社会現象となるほどのブームを巻き起こし、3億5000万以上のプレイヤーを抱える人気オンラインゲームとして知られており、最近ではアーティストの米津玄師氏がバーチャルライブイベントを実施したことから日本でも大きな話題となった。

フォートナイト スマートフォンでも人気の「フォートナイト」。3億5000万を超えるプレーヤーを持ち、最近ではゲーム上でライブや映画を配信するなど、エンタテインメントプラットフォームとしても注目されている

 それだけ大きな影響を持つフォートナイトを巡って、最近大きなトラブルが起きている。それは2020年8月14日にスマートフォンのアプリストアであるApp StoreやGoogle Playから、突然フォートナイトが姿を消したことだ。

 その理由は課金システムにある。App StoreやGoogle Playで配信されているゲームの課金は各ストアの決済システムを通すよう定められているのだが、エピック・ゲームズはあえてそれを無視してアプリ内に独自の決済手段「Epicディレクトペイメント」を用意。そちらを経由してフォートナイト内で使える通貨「V-Bucks」を購入すると、最大20%の割引になるという施策を展開したのだ。

フォートナイト フォートナイトのWebサイトより。フォートナイトのアプリ内に独自の決済手段「Epicディレクトペイメント」を導入、そちらを使うとアプリストアの決済を使うよりも最大20%安くなるとしたことが、各ストアの規約違反となり削除の直接的な要因となった

 当然ながらこの施策はストア側にとってみれば規約違反行為となるため、両ストアは即刻フォートナイトを削除した。だが、これはエピック・ゲームズ側が意図的に仕掛けたものだったようだ。

 実際、アプリストアからフォートナイトが削除されたタイミングで、同社は即時にAppleに対して訴訟を提起。さらに、かつてAppleが放映したSF小説「1984」を題材にしたテレビCMのパロディーを配信してプレイヤーにも支援を訴える「#FreeFortnite」キャンペーンを展開するなど、周到な準備をした上で今回の措置に至った様子がうかがえる。

フォートナイト フォートナイトのアプリが削除された後に公開された動画。かつてのAppleのテレビCMをパロディー化して同社を批判、プレイヤーに支援を訴える内容となっている

手数料30%に不満、Androidでは独自でアプリ配信も

 なぜエピック・ゲームズ側がこのような行為に出たのかといえば、同社がアプリストア側の手数料に対して以前より強い不満を訴えていたためだ。

 App StoreやGoogle Playはデジタルコンテンツに対し、アプリ内での決済にストア側が用意した決済システムを使うことを求めており、基本的に売り上げのうち30%をストア側に手数料として支払う仕組みとなっている。この手数料に関しては以前より、アプリ開発者から「高い」と不満の声が多く挙がっているが、ストア側が見直しを検討する動きはほぼ見られなかった。

 エピック・ゲームズ側はそうしたストア側の姿勢に強い不信感を抱いていた。実際、Android版のフォートナイトは長らくGoogle Playで配信せず、エピック・ゲームズのWebサイトで独自にアプリを配信することにより、Google Playの手数料を回避していたのだ。その後、セキュリティ面での問題を理由として2020年4月にGoogle Playでもフォートナイトを配信するようになったものの、手数料への不満を訴える姿勢は変わっていなかった。

フォートナイト Android版フォートナイトのアプリはエピック・ゲームズのWebサイトからも入手できるが、いわゆる「野良アプリ」の扱いとなり、インストールするにはセキュリティを緩める必要がある

 だが、同社が最も不満を抱いていたのはApp Store、ひいてはAppleだったようだ。iPhoneをはじめとしたiOSデバイスではアプリの入手先が実質的にApp Storeに限られ、Androidのようにストア外でアプリを配信できないことから、手数料の問題を回避するすべがないというのがその主因であろう。

 そこでエピック・ゲームズは、あえてストア側の規約を違反する形で独自の課金システム導入に踏み切り、よりストアの自由度が低いAppleを明確な“敵”として据えることにより、手数料問題をユーザーに広く周知するという“勝負”に打って出たわけだ。

 それゆえ対象となったAppleも即座に対抗措置を取り、2020年8月18日、エピック・ゲームズに対して開発者アカウントの削除を予告している。エピック・ゲームズは多くのゲームアプリが使用しているゲームエンジン「Unreal Engine」の開発元であり、アカウントが削除されればiOS版Unreal Engineの開発が継続できなくなるだけに、影響が他のゲーム会社にも及ぶ可能性も出てきているのだ。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年03月10日 更新
  1. キーボード付きスマホ「Titan 2 Elite」がUnihertzから登場 実機に触れて分かった“絶妙なサイズ感” (2026年03月09日)
  2. 見た目はガラケー、中身はスマホの「MIVE ケースマ」徹底レビュー どこまで実用的で、誰に向くのか (2026年03月08日)
  3. ソフトバンクが「今回もやる」とGalaxy S26を月額1円で販売――販売方法を早急に見直さないと撤退を迫られるメーカーも (2026年03月08日)
  4. 「iPhone 17e」を試して分かった“16eからの進化” ストレージ倍増と実質値下げで「10万円以下の決定版」に (2026年03月09日)
  5. 「iPad Air(M4)」実機レビュー 「もうProじゃなくてもいい」と思えた性能、だからこそ欲しかったFace ID (2026年03月09日)
  6. GeminiやChatGPTがあるのになぜ? ドコモがAIエージェント「SyncMe」を手掛ける理由 強みはdアカウントにあり (2026年03月08日)
  7. 60ms未満の音声遅延速度で端末をワイヤレス化「UGREEN USBオーディオトランスミッター」が30%オフの2309円に (2026年03月09日)
  8. ドコモがAndroid端末の標準メッセージアプリを「Google メッセージ」に変更 +メッセージアプリも引き続き利用可 (2026年03月06日)
  9. iPhone 17eって意外とお得じゃない? (2026年03月07日)
  10. 約8000円で有線CarPlay車両にHDMI入力を追加できる「APP HDMI IN 2」を試す (2026年03月06日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年