KDDIが7月28日、2024年3月期第1四半期(4月〜6月)の決算を発表した。売り上げは1兆3326億円(前年同期比1.4%減)、営業利益は2667億円(前年同期比10.3%に減)の減収減益となった。
グループMVNO収入と、楽天モバイルからのローミング収入で105億円の減収、金融事業の一時的会計処理の影響で182億円の減収になったことが響いた。2023年度通期では増収増益を目指しており、高橋誠社長は「想定通りの進捗(しんちょく)」であることを強調する。
ローミングについては「600億円の減収を見込んでいた」(高橋氏)が、2023年4月に楽天モバイルと新たなローミング協定を締結したことで、100億円程度の減収に抑えられたという。ただ、「ローミングはプラス要素になるが、これをもって上方修正という考えはない」と高橋氏。「今期が一番つらい」と述べ、ARPUの反転を目指していく意向を示した。
そのARPUは順調に伸びている。au、UQ mobile、povoを対象に、金融・補償・でんきを含めた「マルチブランド総合ARPU」は、22年度1Qの4779円から4797円に増加。通信サービスのみの「マルチブランド通信ARPU」は、前年比の減収幅が縮んでおり、22年度1Qのマイナス292億円から、23年度1Qはマイナス29億円に向上した。
au、UQ mobile、povo(課金ユーザーのみ)のマルチブランドIDは前年から19万増の3091円に増加、5G契約浸透率は前年の39.4%から57.5%に向上。5G契約の浸透に伴って、auの月間平均データ利用量は前年から25%増加している。23年4月〜6月の実績で、機種変更時に約8割が使い放題プランを選択していることも通信ARPU向上を後押ししたようだ。
競合他社の状況を見ると、6月から楽天モバイルが「Rakuten最強プラン」、7月からNTTドコモが「irumo」を提供しているが、「今の段階では大きな影響はない」と高橋氏。
irumoについては「当社のプランとはデータ量が異なる。0.5GBは5G通信を使えないとか、ネットワーク制限があるなど、比較するのは難しい」とコメント。楽天モバイルでは、KDDI側も新たなローミング協定を結んで“最強”を後押ししている部分もあるが、「ローミングエリアでも無制限というのは過度な説明だと思って見ていた。実際は800MHzだけのローミング。それほどお貸しするわけではないので、大きなインパクトが出ているわけではない」と述べた。
Rakuten最強プランに対抗する位置付けのプランとして、KDDIもUQ mobileで6月から「コミコミプラン」や「トクトクプラン」を提供。S、M、Lに分けていた従来のプランよりも「若干説明が必要になった部分があり、現場に落とし込むには若干時間がかかった」(高橋氏)が、今は落ち着いて順調に使われているそう。特に、トクトクプランとコミコミプランの比率が上がってきているそうだ。
総務省の有識者会議では、スマートフォンの端末値引き上限を4万円(税別)に緩和する方向性で議論が進んでいるが、高橋氏は白ロム(端末単体)の値引きも規制することを評価。「転売の不適切な取引がなくなってくるのはプラス」とした。
端末の出荷台数は、22年度1Qの169万台から127万台に落ち込んでいる。この要因について高橋氏は「為替の影響も相まって、海外から仕入れてくる端末を始め、どうしても端末価格が高くなっている。高額商品の流動性が昔よりも鈍い」と懸念を示した。
国内メーカーでは京セラが個人向け携帯電話事業からの撤退を表明し、FCNTが経営破綻となった件については「申し訳ないなというか、非常に残念だと思う」と複雑な思いをのぞかせた。「京セラさんはコンシューマーは厳しいが、法人でお願いするなど、ご協力できるところは対応していきたい」(同氏)
総務省が6月に700MHz帯の割り当てに関する指針を発表したことについては、「審査基準を見たら、楽天が有利だなぁとは思った。隣接バンドなので、全く出さないのもどうかなと思うので、悩みながら検討している。偏っている選考基準になっているのは率直な印象」と述べた。
金融事業も順調に拡大している。決済・金融の取扱高は3.9兆円(前年同期比+17%)、au PAY カード会員数は880万(前年同期比+90万)、auじぶん銀行口座数は530万(前年同期比+53万)に上る。金融サービスを利用するほど、auの解約率が低下するという効果も出ており、複数の金融サービスを使う人ほど解約率が低いという。
2024年1月から、KDDIのCATV事業をJ:COMに集約することも発表。KDDIがCATV事業者と提携して提供している電話サービス「ケーブルプラス電話」や、セットトップボックス「Smart TV Box」「ケーブルプラスSTB」「ケーブルプラスSTB-2」、CATV事業者向けのソリューションサービスは、2024年1月1日からJ:COMが提供する。
このタイミングで事業承継をすることの狙いについて高橋氏は「J:COOMも放送からインターネットにシフトして、成長の絵を描き始めている。そこに当てて、今回の事業分割譲渡をした」と話した。
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