KDDIは2月2日、2023年3月期第4四半期の連結決算を発表した。売上高は前年同期比4.2%増の4兆1828億9300万円、営業利益は同3.6%減の8324億2000万円で増収減益。特に燃料高騰と2022年夏の通信障害の影響が響いた。
高橋誠社長は、「想定外」だった燃料費高騰影響などを除けばおおむね想定内の結果だったとして、第4四半期は燃料費高騰影響の緩和やコスト削減、注力領域の推進を行い、通期では増益を目指す考えだ。
連結の営業利益では、au、UQ mobile、povoという各ブランドの通信ARPU(1ユーザーあたりの月間平均収入)収入が710億円の減少。グループ内のMVNO収入とローミング収入も200億円の減少。エネルギー事業は期初予想に対して下振れし、74億円のマイナスだった。
それに対して3G停波に伴うコスト削減、コスト効率化などによって613億円の増加。好調だったDX・金融事業が297億円の伸びを示した。これに期初には想定していなかった燃料高騰影響や通信障害の影響によって238億円の減益となり、これが利益を圧迫。結果として312億円の減益となった。
値下げなどによって大幅に減少している通信ARPUは、2022年3月期第4四半期を底に減収幅が縮小。第3四半期は下げ幅が縮小したことで、前四半期に比べてプラスとなった。今後も減収影響が縮小することから、さらなる通信ARPUの成長を目指す。
5Gの浸透率は49%と拡大したことで、データ通信の利用量が拡大していることが奏功しており、付加価値ARPUも増加した。auブランドで5G端末を契約した人の6割以上が使い放題プランを選択。段階制料金プランのピタットプランの契約数が減少し、全体としてはデータ利用量が10.9%の増加となった。
ビジネスセグメントではDX事業などのNEXTコア事業の売上高が前年同期比17.4%増と好調。3G停波による解約影響も縮小したこともあって増益につながった。「新たな価値創出の象徴的な事業」(高橋社長)というデジタルツイン事業では、パートナーとの取り組みが進展し、事例も積み上げた。今後のさらなる拡大を目指す。
衛星通信のStarlinkは、au基地局のバックホール回線への導入も始まり、法人・自治体向けの導入を開始。既に500件を超える問い合わせが来ているという。2023年1月に発生した埼玉県秩父市の土砂崩落現場では、Starlinkで通信環境を確保し、スマートドローンによる物資配送を行った。
ソフトバンクと、通信障害・災害の緊急時に備えた「デュアルSIMサービス」を3月下旬以降に開始する予定で、合わせてネットワーク強靱化に向けた投資も計画通り実施。通信ネットワークの継続性を強化する。
5Gネットワークは、人口カバー率という面展開が「若干遅れていた」(同)が、2022年度内には90%を「必ず達成する」(同)。4Gの転用だけでなく、Sub-6を使った5Gエリアも拡大する方針で、特に商業施設や駅など、生活動線にこだわってエリアを拡大していく方針は継続する。
ただし、高橋社長は5Gに移行しているユーザーが伸び悩み、浸透率が49%にとどまっている点を問題視。3Gから4Gへの移行期よりも進展が遅れている状況で、「諸外国に比べても遅い」(同)としている。これを加速するためには、2万円に制限されている端末値下げの規制緩和が必要との認識で、「手の届きやすい端末の浸透を促進する施策が大事」と総務省に対して注文を付ける。そうした議論もしつつ、当面は現行の規制の中で浸透率を加速させたい考えだ。
金融事業では、auじぶん銀行とau PAY事業が柱。口座数は500万を突破し、住宅ローン融資累計実行額も2.5兆円に達した。au PAY会員数は3990万を突破。そのうち、au PAYカード会員数も830万まで積み増した。
期初の段階では予測していなかった燃料費の高騰と通信障害の影響があったことで減益となったが、高橋社長は事業自体おおむね順調としており、燃料費や通信料値下げといった要因が緩和されていくこともあって、注力領域をさらに伸ばし、コスト削減をすることで通期増益は可能との見方を示した。
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