KDDIの通信障害が「業績」と「業界」に与えた影響 水面下で進むキャリア間での連携石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年11月05日 11時06分 公開
[石野純也ITmedia]

 KDDIは11月2日、決算説明会を開催。第2四半期を含む上期の業績を発表した。値下げ影響が続く中、増収は維持したものの、7月に大規模通信障害を起こしてしまったことで、利益は減少。通信障害は新規契約にも影響を与え、回復までに時間を要した。また、通信障害対策として中期で総額500億円を投じ、仮想化基盤への早期移行やAIによるネットワーク監視の高度化を行う。来期以降は、こうしたコストも積み上がっていく見通しだ。

 ここでは、決算に基づき、通信障害が業績に与えた影響や、同社がどのような対策を打とうとしているのかを解説していく。

KDDI KDDIの決算説明会で、高橋社長が業績への影響や今後の対応を語った

返金影響もあり上期は増収減益に、8月以降は回復に向かう

 7月2日に発生したKDDIの通信障害は、上期の業績を直撃した。最も直接的な影響を与えたのは、ユーザーに対する返金だ。KDDIは、8月分の料金から一律で200円を割り引く「おわび返金」を実施。24時間以上連続して全ての通信が利用できなかったユーザーに対しては、約款に基づき、基本使用料の2日分相当を減算している。返金が業績に与えた影響は約75億円。ここに燃料費高騰の影響が加わった結果、営業利益は前年比で146億円ほどの減益になった。

KDDI 上期の営業利益は5585億円。前年同期比で146億円の減益になった

 通信障害と燃料費高騰の影響は、トータルで148億円。仮にこれがなかったとすると、「微々たるものだが、増益になっていた」(代表取締役社長 高橋誠氏)。料金値下げの影響が続く中、何とか増益ペースを保っていたKDDIだが、通信障害への対応と燃料費の高騰を受け、減益に転じてしまったというわけだ。返金はダイレクトに収益を減らす要因だが、間接的な影響もある。それが新規契約者数だ。

KDDI 通信障害と燃料費高騰の影響を合わせた減益影響は148億円。これがなければ、わずかながら増益していた可能性もあった

 高橋氏によると、「7月は通信障害でお客さまから信頼を失った部分があり、新規契約者数に影響があった」(同)という。店頭の混乱があり、契約者獲得に支障が生じたようだ。また、通信障害を機に、KDDI回線を解約するユーザーも増加した。これに伴い、「マルチブランド解約率」が「7月の影響を若干受けた」(同)といい、第2四半期は0.94%に上がった。第1四半期は0.92%だったため、解約率は0.02%上昇した格好だ。

 大規模通信障害の影響が色濃く出た第2四半期の決算だったが、対策は既に講じている。まず、返金影響は1回限りで一時的にとどまるため、第3四半期以降に影響は出ない。新規契約者数も「営業サイドがコンタクトをしっかりやり、8月以降はそこが落ち着いて従来の新規の数まで戻っている」(高橋氏)という。特に、好調なのはサブブランドのUQ mobileで、ユーザー数は「600万を超えてきたところ」(同)まで増加。オンライン専用ブランドのpovoも、「1.0と2.0を含めて150万超ぐらい」(同)まで伸ばしている。

KDDI 各種オペレーションデータ。マルチブランド解約率は、通信障害の影響でやや上昇した

 結果として、au、UQ mobile、povoを合わせたマルチブランドID数は「第1四半期で前期から減ったが、第2四半期は第1四半期と同じ3093万で、7月がへこんだ分を8月、9月で取り戻している」(高橋氏)。第3四半期にあたる10月以降も、「3ブランドでの数字は順調に拡大している」(同)という。7月以降増加した解約率も「障害によって継続的に増えている状況ではない」(同)といい、一時的な影響にとどまる見通しだ。

KDDI 新規契約者の減少や解約率の増加で、7月はマルチブランドID数が減少。8月以降、これを取り戻し、6月と同水準に回復した

 これに加え、1GB以下0円の料金プラン「UN-LIMIT VI」を廃止した楽天モバイルからの流入も回復しているという。受け皿になっているのが、povo2.0だ。高橋氏は、「障害があった7月は少し減少したが、8月以降は戻ってきている。10月は例のキャンペーン(既存ユーザーへのポイントバックによる実質無料措置)の最終月なので、下旬にワーッと上がってきている」と語る。MNPの動向も含め、通信障害で変わった流れが戻ってきている様子がうかがえる。

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