業績への影響は第2四半期で出尽くした格好だが、KDDIは中期で500億円を投じて、通信障害に強いネットワークの構築を目指す。高橋氏によると、期間は3年程度。「サテライトグロース戦略ということで5Gを中心にしているが、5Gの拡大ばかりを一生懸命にやってきた。もともとの信頼性の確保に取り組むことをベースにしなければいけない」との反省から、2つの柱を立て、改善に取り組む。柱になるのが、「仮想化基盤への早期移行による自動化の加速」と「スマート監視とAIによる対応の迅速化」だ。
前者は、コアネットワークの仮想化を前倒しで実施することが中心になる。KDDIは、「5Gのコアは仮想化が終わっているが、LTE交換局は仮想化が終わっていない」(同)。将来的には、仮想化する予定だったが、これを前倒しで実施する。仮想化しただけで障害がゼロになるわけではないが、輻輳(ふくそう)制御やネットワーク復旧の自動化は容易になる。こうした作業がスムーズにできれば、7月に発生した大規模障害のような長期化を防ぐことが可能だ。
また、7月の通信障害では「VoLTE交換機の輻輳のところで、どこに障害があるのかがすぐに切り分けられなかった」(取締役執行役員専務 吉村和幸氏)のもKDDIにとっての反省点。こうした事態を防ぐため、スマート監視やAIによる異常検知などを実装していく。これが、2つ目の柱だ。通信障害後に「500億円でやるAIまではいかないが、自動的にログを取り、外部からの監視を入れて検知するものは開発している」(同)というが、これを高度化したものを導入する。
500億円の詳細な内訳は開示されていないが、どちらかというと、コストが大きくなるのは仮想化基盤だという。高橋氏によると、「500億円のうち、半分以上が仮想化技術に今のVoLTE交換機を乗せていくこと(に使われる)」といい、この部分を特に重要視していることがうかがえる。これらは、今後導入していく機能や仕様になるが、現時点までに取った対策も少なくない。
吉村氏が挙げた障害監視の自動化ツールは、その1つ。手順書やチェック手法の見直しといった、オペレーション面での改善も行っている。さらに、輻輳制御の一環として、VoLTE交換機の流量規制機能を有効化するといった対策を施している。VoLTE交換機は、全国に配置されたフルメッシュ構成を取っていたが、これも東西分離構成に変更したという。交換機の配置を変更した理由を、高橋氏には次のように話す。
「障害が起きたときのリカバリー時間を考え、総メッシュにした方が早くなるというシミュレーション結果に基づきそうしていたが、7月の障害では影響範囲を(東西に)分けた方がより安全になる。分けたとしてもリカバリーの時間をある程度早くできることが分かったので、影響範囲を(東西のどちらかに)とどめるためにそのようにした」
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