楽天モバイルのプラチナバンド割り当て、1年以内は「さすがに不可能」とKDDI高橋社長

» 2022年11月02日 20時28分 公開
[小山安博ITmedia]

 「1年以内に利用開始するのはさすがに不可能」。

 KDDIの高橋誠社長は、2023年3月期第2四半期決算会見において、楽天モバイルが求める周波数の再割り当てについて、その主張を一蹴した。高橋氏は、エリア拡大は「非競争分野」であり、必要なエリアではKDDIのローミングを使えばいいとの考えを示している。

KDDI 質問に答えるKDDIの高橋社長(KDDI提供)

 携帯キャリアの新規参入となる楽天モバイルは、既存3社に比べると保有する周波数が少なく、特にプラチナバンドと呼ばれる周波数帯の割り当てを総務省に対して求めている。楽天モバイルは、既存3社からそれぞれ一部を再割り当てするという手法を示し、さらにそれに伴う費用負担を既存3社に求めており、両陣営が真っ向から対立している。

 決算会見で問われた高橋社長は、「(既存の)有効利用中の周波数を他の事業者に再割り当てする場合は慎重な議論が必要」と指摘。既存3社は再割り当てにおいてレピーターやフィルターの交換が必要で5〜10年の期間が必要だとしているが、楽天モバイル側は、フィルター不要で、レピーターの交換も1年以内と主張。

 高橋社長はこれに対して、「楽天モバイルはフィルターがいらない、(再割り当ての)前倒しの費用は負担しないと、強気にいろいろ話しているが、ちょっと言い過ぎなところもあるのでは」といさめる。

 その上で、楽天モバイルの「1年以内に利用開始という主張は不可能」と断じる。さらに楽天モバイルが求める800MHz帯は、既存3社が使っている帯域で、総務省や有識者会議の構成員も「よく理解しているので、(1年以内は)無理だと思う」とけん制する。

KDDI 楽天モバイルは、3社から各5MHz幅ずつ、計15MHz幅の割譲を受ける案を計画している

 フィルター不要の議論も、総務省がオープンな場で議論を実施した結果、「(フィルターがないと)一定の影響がある」という既存3社側の主張が有識者会議でも認められたと高橋社長。

 「プラチナバンドを獲得しても、開設利用料などの非常に投資がかかって大変だと思う。楽天モバイルの経営基盤の状況もあると思うので、そういうことも考えながら総務省も判断するのではないか」(高橋社長)。

 楽天モバイルは、現在も一部でKDDIローミングによるエリアを借り受けているため、プラチナバンドが必要なエリアはローミングしているKDDIのネットワークを「うまく利用するといいのではないか」と、高橋社長は他社エリアの有効活用を提案。

 その背景について、携帯事業におけるエリア拡大は既に「非競争分野」になっていると高橋社長。ネットワーク構築は業界全体で協力して取り組み、その上にあるサービスなどの競争レイヤーでしっかり競争する時代だという。

 「(楽天モバイルが)もう少し柔軟に構えられればいいのにな、と思うことはあります」と冗談めかす高橋社長だが、これまでの議論が腹を据えかねているといった様子を見せた。

 ただ、ローミング料が楽天モバイルの事業を圧迫しているのも確かで、ローミング料金値下げについて問われると、「そうですよね」と前向きな返答。「今の予定では2025年でローミングが終わる予定にはなっているが、(楽天モバイルが)いつまで使うかによって、いろいろ議論の余地はあるのではないか」と、ここまで高橋社長は話しつつ、「あんまり軽はずみな発言はしないようにします」と最終的な言及は避けていた。

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