「プラチナバンド」を求める楽天モバイル 3キャリアの反発は必至も、23年の導入を目指す石野純也のMobile Eye(1/3 ページ)

» 2022年04月09日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

 2月に人口カバー率96%を達成した楽天モバイル。年2回行われるKDDIと協議に基づき、4月から、さらにauローミングのエリアを縮小する。4月の改定では、ついに47都道府県全てが自社回線に切り替わる。市区町村単位で見るとローミングを継続するエリアは残るものの、自身でネットワークを運用するMNO(Mobile Network Operator)として、“独り立ち”のときが近づきつつあるのも事実だ。

 新規参入時の開設計画を大きく前倒しにする形でエリアの拡大を進めてきた楽天モバイルだが、その立役者が、3月30日付けで社長に就任した矢澤俊介氏だ。同社の完全仮想化ネットワークを技術的に支えてきたタレック・アミン氏もCEOとなり、二人三脚で楽天モバイルを運営していく。

楽天モバイル 3月30日に楽天モバイルの社長に就任した矢澤氏。インタビューでは、主にプラチナバンドの必要性を主張した

 新体制となった楽天モバイルが主張するのが、「プラチナバンドの割り当て」だ。プラチナバンドは大手3キャリアが既に使用しており、現時点では楽天モバイルに割り当てる“空き枠”はない。そのため、同社は既存3社の持つ周波数の一部を再割り当てするよう主張。総務省のタスクフォースで議論が進んでいる。人口カバー率96%の達成と社長就任を機に、矢澤氏は改めてこの主張を全面に押し出していく構えだ。そんな同氏に話を聞いた。

人口カバー率96%達成――次の狙いはプラチナバンド

 「ずっと現場で我慢してきた。このタイミングでしっかり意見表明するのも社長の役割」――こう語る矢澤氏が主張するのが、プラチナバンドの再割り当てだ。楽天モバイルは、現在4GはBand 3の1.7GHzのみで運用。5Gには3.7GHz帯のn77と、28GHz帯のn257を利用しているが、いずれもプラチナバンドと比べると高い周波数帯で、電波の直進性が強い。ドコモ、KDDI、ソフトバンクのように、700MHz帯から900MHz帯までの低い周波数帯は割り当てられていない。

 周波数は低ければ低いほど、障害物を回り込みやすくなり、カバーできる範囲も広がる。少ない基地局でカバー率を広げられるため、投資効率が高いのが“プラチナ”と呼ばれるゆえんだ。当然、楽天モバイルも「欲しかった」というのが本音だ。ただ、1.7GHz帯で全国をカバーすることは、新規参入の前提条件になっていた。矢澤氏も「欲しいと言うと『まず1.7GHz帯をちゃんとやりなさい』と言われていたが、それが筋だと思って(1.7GHz帯でのエリア構築を)やってきた」と語る。

楽天モバイル 楽天モバイルは、1.7GHz帯だけで人口カバー率96%を達成した。これを機に、プラチナバンド獲得の主張を強化していく構えだ

 一方で、冒頭で挙げたように、2月には1.7GHz帯のみで人口カバー率96%を達成。「96%まできたので、ここから先は他社と公平な条件で事業者間競争をさせていただきたい」というのが、楽天モバイルの主張だ。求められていた条件はクリアしたので、プラチナバンド獲得の方針をより明確にしていくというのが楽天モバイルの考えといえる。もともと、基地局の建設や総務省などとの渉外を担当してきた矢澤氏が社長に就任した狙いも、ここにありそうだ。

 人口カバー率が96%を超えた楽天モバイルだが、市区町村単位では一部KDDIのローミングを継続している。同社は、「夜間人口という、お客さまが居住しているエリアの優先順位を高く設定してきた」のが、その理由だ。逆に、観光地やリゾート地など、「夜間人口が少ないところは優先順位が下がっていた」。その理由の1つが、半導体不足の影響だという。矢澤氏によると、「限られた部品をどこに割り当てるかで、居住者のいるところを優先した」という。

楽天モバイル 4月1日から、ローミングサービスを終了する地域をさらに増やし、47都道府県全てが切り替え対象になった。ただし、市区町村単位で見ると、当面ローミングを継続するエリアは残る

 半導体不足は解消しつつあり、「今年(2022年)前半から、リゾート地やゴルフ場、スキー場への展開も進めていく」というが、プラチナバンドを獲得できれば、こうした場所のエリア化がさらに進めやすくなる。また、都市部でも、「一部の地下などには、プラチナバンドの浸透(する電波)を使いたい」という。実際、他社も都市部の店舗内は、電波が回り込みやすいプラチナバンドでカバーしているケースがあり、楽天モバイルも同様のことを考えていることがうかがえた。

楽天モバイル プラチナバンドは電波の浸透性が高く、1つの基地局でカバーできる範囲が広い。この特性を生かし、地方や都市部の屋内対策としてプラチナバンドを導入したいという

 ただし、プラチナバンドが獲得できる見込みが立っても、1.7GHz帯でのエリア整備を終わらせるわけではないという。矢澤氏は、「プラチナバンドは取れたら積極的に活用したいが」と前置きしつつ、「1.7GHz帯で人口カバー率99%まで作っていこうと思っている」と語る。プラチナバンドは、上記の都市部に加え、「山間部や、置局の本数確保が難しい場所に使う」といい、あくまでエリアを補完するための色合いが濃いようだ。

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