「プラチナバンド」を求める楽天モバイル 3キャリアの反発は必至も、23年の導入を目指す石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2022年04月09日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]

大手3社から5MHz幅ずつの移行を希望、競争促進で料金値下げも

 プラチナバンドは大手3キャリアが既に使用しており、現時点では楽天モバイルに割り当てるための空きはない。そこで同社が主張してきたのが、他社の周波数の一部を、楽天モバイルに再割り当てすることだ。もともと、周波数の割り当てには有効期限が設けられていたが、更新を繰り返すことで、期限が形骸化していた。これに対し、総務省では再割り当ての際に比較審査を行ったり、事業者間の負担で有効期限前に再割り当てを可能にしたりといった措置が検討されている。

楽天モバイル 割り当てられた周波数には有効期限が設けられているが、更新を繰り返すことで1社が長期に渡って利用しており、制度が形骸化している

 楽天モバイルが狙うのも、この再割り当てだ。とはいえ、プラチナバンドと呼ばれるほど投資対効果が高い周波数帯なだけに、大手3社がここを丸々手放すことは考えづらい。比較審査をすれば他社から勝ち取れる可能性もあるが、「1社どこかを再割り当てのターゲットにするのは、非常にハレーションが強い」。そのため、楽天モバイルは「15MHz幅(上下で30MHz幅)をくださいと言っている」という。15MHz幅は、3社で割ると5MHz幅(上下で10MHz幅)ずつになるからだ。

楽天モバイル ドコモ、KDDI、ソフトバンクは各社50MHz幅ずつのプラチナバンドを運用しているが、楽天モバイルは1.7GHz帯のみ。総帯域幅も約6倍の差がある

 ドコモとKDDIは700MHz帯と800MHz帯を上下計50MHz幅、ソフトバンクは700MHz帯と900MHz帯で上下計50MHz幅を利用しているが、各社に5分の1ずつを譲ってもらうというのが楽天モバイルの計画になる。楽天モバイルは700MHz帯から900MHz帯が一切割り当てられておらず、4Gの総帯域も他社の6分の1程度にとどまるため、競争環境として公平ではないというわけだ。矢澤氏は、競争が進めば、ユーザーにとって料金的なメリットも大きいと語る。

【更新:2022年4月12日11時45分 楽天モバイルが希望する帯域幅は上下で計30MHz幅だったので、資料に合わせて記載を修正いたしました。】

 「さらに料金が下がるのは(国民にとって)非常に大きなこと。携帯電話の料金は1カ月減るだけでなく、ずっと減っていくものなので、給付金やクーポンをいくら出しますというよりも、経済的なメリットがかなり大きい」

楽天モバイル 楽天モバイルの参入で競争が促進され、携帯電話料金が大きく下がったというのが同社の主張だ。プラチナバンドの割り当てで、この競争をさらに進めていけば、ユーザーのメリットも大きいという

 一方で、楽天モバイルが再割り当てを狙うプラチナバンドは、現在進行形で大手3キャリアが使用している。そのため、仮に移行するとなれば、キャパシティー設計の変更や干渉対策などが必要になる。大手3社のユーザーに、不利益が生じる可能性もあり、各社とも難色を示している。実際、プラチナバンドの再割り当てに関し、キャリア4社に行ったヒアリングでは、大手3社と楽天モバイルの主張に大きな隔たりがある。

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