楽天モバイルがまとめた以下の表が、それを端的に示している。同社は、2023年の利用開始を希望しているのに対し、ドコモは10年、KDDIは7年という移行期間を示している。再割り当てだと周波数が隣接するため、干渉を避けるフィルターの挿入も必要になるという大手3社に対し、楽天モバイルは3GPP既定の範囲なら不要と主張。電波の到達範囲を広げるレピーターの交換も、他社は必要と回答しているが、楽天モバイルは一部必要と限定している。
周波数の移行にかかるコストは、楽天モバイルのみ200億円との数値を公開している。ただし、これは先に挙げたフィルター交換が不要との前提に基づいているため、仮にここが崩れれば、さらにコストが増す形になる。期間だけでなく、機能面や費用面でも、大手3社と楽天モバイルの間で、見解の相違が大きいといえる。
移行期間だけに絞っても、最長のドコモと最短の楽天モバイルでは、10倍の開きがある。仮にドコモの主張が通ったとすれば、2023年内のサービス開始どころか、2033年まで移行ができないことになる。携帯電話の通信方式は、10年で1世代進むといわれているため、2033年には6Gのサービスが始まっていても不思議ではない。ここまで時間がかかってしまうリスクがあるのなら、3Gを停波する際に再割り当てをした方がスムーズに移行が進むのではないか。
この疑問に対し、矢澤氏は「そこまでは待てない」と語る。KDDIは3月で3Gを停波したが、ソフトバンクは2024年1月、ドコモは2026年3月を予定しており、各社から5MHz幅ずつという条件だと、全ての移行が終わるのは約4年後になる。矢澤氏は「プラチナバンドは可及的速やかに使いたい。3Gの停波を待つと、1社は終わったが、残りの2社がこれからになってしまう」と語る。2023年のサービス開始は、どうしても譲れないというわけだ。
2023年内だと最長でも1年強しか残されていないが、現状では大手3社と楽天モバイルの主張は真逆ともいえ、すぐに決着するのは難しいようにも思える。議論を重ねているだけで、タイムリミットが過ぎてしまう可能性もある。矢澤氏が期待するのは、「政治主導での英断」だ。現在、電波法の改正が国会で審議されており、可決されれば10月から施行される。
「それより前のタイミングで一定の方向性を出していかなければいけない。そこには政府の強い意志が必要だと思っている。それまでに、国民の皆さまへの説明も必要になる」というのが、楽天モバイルの考えだ。インタビューでプラチナバンドの再割り当てを主張したのも、その一環といえる。どちらに転ぶかは未知数だが、大手3社からのさらなる反発も予想されるだけに、大きな議論を巻き起こすことになりそうだ。
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