「11月からLINEが使えなくなる」騒動はなぜ起きたのか 同意しないと年内めどに使用不可に

» 2023年11月28日 06時00分 公開
[山本竜也ITmedia]

 「11月からLINEが使えなくなる」と騒がれたのは、10月末のこと。マスコミなどにも取り上げられ、大きな話題となっていました。ただ、11月になってすぐに使えなくなったということはなく、大きな混乱もなく話題も収束していった印象です。

LINE LINEやヤフーの統合に伴い、各社サービスのプライバシーポリシーも変更された

 今回の「LINEが使えなくなるという話」、10月1日にLINEやヤフーなど5社が合併し、LINEヤフーが誕生したことが影響しています。この合併に伴い、LINEとヤフーのプライバシーポリシーを統合した新しい「LINEヤフープライバシーポリシー」を策定。この新プライバシーポリシーにあらためて同意が必要というのが事の始まりです。

 Webサービスなどの利用規約やプライバシーポリシーを普段から意識していて、変更があった場合にも逐次確認しているという人も少なからずいるとは思いますが、多くの人は意識していない、あるいは読み飛ばして同意ボタンを押しているというのが実情でしょう。もっと言ってしまうと、同意したという意識すらないかもしれません。

あるサービスを利用する場合、そのサービスの利用規約やプライバシーポリシーに同意する必要があるというのは、ごく当たり前のことのように思います。今回のLINEの件にしても、話としては「プライバシーポリシーが新しくなったので同意してください」という極めてシンプルなものでした。

騒ぎが大きくなった3つの要因

 10月12日時点での「LINE株式会社とヤフー株式会社のプライバシーポリシー統合のご案内」には、以下のように記載されており、内容を見れば、LINEのサービスを継続利用するには新プライバシーポリシーに同意が必要ということが分かるはずです。

LINE 10月12日時点の記載。Internet Archiveで確認できます

 また、このページでは「LINEヤフープライバシーポリシー」の要点として「1.広告主などのパートナーからの広告配信などに利用する情報の取得・利用」「2.解析情報や統計情報の作成・提供」「3.越境移転先の国・地域の明確化」「4.識別子などの第三者提供」「5.識別子の紐づけ」の5つが挙げられており、それぞれの内容に関して具体例を挙げながら説明されています。

 こうした準備がありながら、なぜ騒がれることになったのか。大きくは3つの要因があったように思います。

 1つは、LINEだったから。半ばインフラ化した巨大サービスのプライバシーポリシー変更だったため、多くのマスコミやWebメディアがこの件を報じたことで「同意しないと11月から使えなくなる」ということだけが誇張されてしまったのではないかと考えられます。

 LINEとヤフーのプライバシーポリシー統合なので、当然ながらYahoo! Japan側でもプライバシーポリシーの同意画面が表示されるのですが、こちらはまったくといっていいほど話題にはなりませんでした。

LINE Yahoo! Japanで表示される同意画面。内容はLINEと同じですが、Yahoo!が使えなくなるという騒ぎにはなりませんでした

 2つ目は、LINEに表示されたプライバシーポリシー同意画面の分かりにくさ。LINEアプリ上では、10月4日から順次表示されていましたが、この「プライバシーポリシー統合のご案内」表示は、説明が長く読み進めないとなぜ表示されたのかが分かりません。タイトルも「ご案内」になっているので、重要な内容ではないという印象もあります。このため、「同意する」ボタンがあるものの、取りあえず「あとで確認する」を押して後回しにした。あるいは、いつものように条件反射で同意ボタンを押して、その存在を忘れてしまっていた人もいることでしょう。

 それにもかかわらず、「同意しないと11月から使えなくなる」というニュースが流れてきて、そういえば同意した覚えがないけど……と焦ってしまい、そうした人たちの声がSNSなどで大きくなったということもありそうです。

 そして3つ目として、プライバシーポリシーに同意するとLINEアカウントとYahoo! JAPAN IDが自動的に連携されてしまうという認識があったことも影響していそうです。

 FAQのQ1の回答に「LINEとヤフーのアカウントのひも付けを行うこともLINEヤフープライバシーポリシーに記載しております」との記載があったために、プライバシーポリシーに同意するとアカウントのひも付けが行われてしまうと考えられました。というより、当初はそうとしか捉えることができませんでした。

 LINEは完全なプライベートだけど、Yahoo!Japan IDは仕事でも使っておりこれが勝手にひも付かれては困るということで同意したくてもすぐには決断できなかったという人もいたようです。

 実際にはプライバシーポリシーに同意しても勝手にひも付くことはなく、現在は「LINEアカウントとYahoo! JAPAN IDを連携するアカウント連携は任意となり、LINEアプリやYahoo!メールなどの継続利用は、プライバシーポリシーの同意のみで可能です」との記載が追加されています。

LINE 執筆時点(11月25日)のFAQの記載。以前と比べて内容が大分かみ砕かれている他、アカウント連携は任意ということが追記されています

 今回の騒動の責任をLINE側だけに求めるのは少々酷な気がしますが、もう少し分かりやすい案内があってもよかったのは間違いないでしょう。長文は読まないというユーザーが一定数いることも考慮した画面設計をするべきでした。今回の場合なら、会社の合併などの背景情報は後回しにして、「プライバシーポリシーが変更されたので内容を確認してください。同意しない場合は使用できなくなります」ということが最初に書いてあれば、ユーザー側ももう少し注目して内容を確認したのではないかと思います。

 こうしたことを書くと、「プライバシーポリシーを後から改訂して、同意しなければ使えなくなるというのは何事か」と感じる人も出てきそうですが、プライバシーポリシーの変更に関しては以前から、下記の記載があります。

LINE これは現在のプライバシーポリシーの記載ですが、以前のポリシーにも同じ記載がありました

 「変更が通知された後、あるいはサービス上に公表された後に私たちのサービスを使用し続けることは、変更の受諾と修正された本ポリシーへの同意を構成します」とあるように、ユーザーに同意を求めず11月1日付でプライバシーポリシーを変更しますという案内だけで済ませれば、大きな騒動になることもなかったでしょう。ただ今回のケースでは、その後にある「適用法で求められる場合は、お客様に同意を求めます」に該当したようです。

同意しないと早ければ年内に利用不可に

 冒頭にも書きしましたが、11月に入ってすぐにLINEが使えなくなるということはありませんでした。当初の案内では「11月以降は順次サービスの利用に当たりLINEヤフープライバシーポリシーへの同意が必要となる予定です。同意いただけない場合、同意いただけるまでの間はLINEアプリ、Yahoo!メールなどの継続利用ができなくなります」と記載されており、これだけ見ると同意しないと11月から使えなくなると誤解するのもうなずけます。

 現在はもう少し分かりやすい表現になっており、同意していないとLINE起動時に同意画面が表示されるようになることが分かるようになりました。なお、今のところは「あとで確認する」を選んで同意を保留できますが、LINEヤフー広報によると、早ければ年内にも「あとで確認する」が選べなくなり、同意しなければLINEアプリなどが使えなくなるとのことです。

LINE LINEの新プライバシーポリシー同意画面。早ければ年内にも「あとで確認する」が選べなくなり、同意しなければLINEが使えなくなる予定です

 似たようなポリシー変更は、有料・無料を問わずさまざまなサービスで発生するものです。見慣れない案内が表示されたら、読み飛ばすのではなく、しっかりと内容を確認する習慣を身に付けたいものです(それがなかなか難しいのですが)。

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