MWC Barcelona 2024で初出展を果たしたKDDI。同社は、GMSAが発足した共通APIを活用した5G SAのユースケースや、povo2.0のホワイトレーベル化、さらにはStarlinkとの取り組みを紹介していた。国際展示会のため、海外事業者とのパートナーシップ構築や、海外展開のアピールの場としてMWCを積極的に活用していたことがうかがえる。外部アプリに契約やトッピングの開放を進めるpovoの取り組みのように、その一部が国内ユーザーにフィードバックされそうな展示も多かった印象だ。
また、MWCでは、Open RANやAIに関連した出展が数多くあった。国内大手企業では、ドコモやソフトバンク、楽天グループなども、こうした取り組みに積極的な姿勢を示している。そんなMWCを、KDDIの代表取締役社長CEO、高橋誠氏はどう見ているのか。MWC会場で同氏が報道陣のグループインタビューに答えた。
―― まず、ザックリとですが、今年のMWCはいかがでしたか。
高橋氏 ブースを見ていると、メタバースやVRはほとんどなくなってしまい、どこに行っても生成AIという感じですね。1つはテレコミュニケーションの品質を上げるために使うAI、2つ目が企業効率性を上げるためのAI、3つ目がカスタマーケア。大きく、この3つぐらいが多いように見えました。
端末も、サムスンが新しい検索を入れて(編注:Googleと共同で先行搭載した「かこって検索」のこと)、そのあと生成AIでいろいろなことを質問できたりする処理をエッジ側でやったりしている。
―― 電話の翻訳機能もなかなかすごいです。
高橋氏 そうそう。日本語を話したらそのままスペイン語にしてくれる。ああいう個人情報に関わるものは全部エッジで処理して、それ以外のものはクラウドでやるというイメージを持っています。今回、スマートフォンも面白くなっているなと思いました。
―― ソフトバンクはAI-RANアライアンスを作り、基地局にAIを活用していく方針です。KDDIはどうでしょうか。
高橋氏 vRAN(仮想化された無線通信、処理の装置)はもはや当たり前で、かなり検討をしています。技術陣もかなり進めているので、そこは負けている感じがしない。仮想化ネットワークの基盤をCPU、GPUのハイブリッドにしていく話があり、その部分をソフトバンクさんはAI-RANアライアンスという形で動き始めています。ただし、全部が全部、AI-RANになるわけではないんじゃないかなと思います。GPUが載るものにはAIが必要ですが、やはり熱量も高いしですし、コストもかかりますから。
その延長線上にOpen RAN(仕様を共通化した無線機器)をどう位置付けるかです。エリクソンなどの既存ベンダーは垂直統合のビジネスモデルなので、その仕様をオープンと言っている。一方で、垂直統合に強くないサムスンや、垂直統合が弱くなってきたノキアが積極的に動き始めているように見えます。
―― ドコモや楽天は、Open RANを海外キャリアに導入することでビジネス化しようとしていますが、KDDIはいかがですか。
高橋氏 vRANは必ずやりますし、その延長でOpen RANもやります。実際、サムスンや富士通とは、Open RANの検証もできています。その方向性でいいと思っています。
―― ブースでは、5G SAのスライシングをAPI経由で呼び出すといったことをやっていましたが、5G SAでどういったサービスが考えられるのでしょうか。個人向けサービスで5G SAが生きてくるようなことはりますか。
高橋氏 そこはまだはっきりしていない。技術陣には、お客さま目線で何ができるのかをはっきりさせなさいと言っています。ただ、APIを切って、外部に開放していくのははやりになりそうです。世界のキャリアで共通のゲートウェイを作る動きがあります。これをどうやってマネタイズするのかという話はありますが、その一環としてソニーさんとはゲームや映像伝送でネットワークスライシングを使ったPOC(実証実験)をやっています。オープンゲートウェイの中で、そういったものをコントリビューションしていければと考えています。
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