世界を変える5G

ソフトバンクが「テラヘルツ帯」通信の実証実験 クルマの通信が劇的に変わる?

» 2024年06月06日 06時00分 公開
[石井徹ITmedia]

 ソフトバンクは6月4日、技術公開イベント「ギジュツノチカラ テラヘルツ編」を開催。研究開発中のテラヘルツ無線の実証実験を報道陣に公開した。

ソフトバンク ソフトバンクのテラヘルツ無線システムの実証実験の様子

 テラヘルツ帯は、5Gのミリ波で実用化されている28GHzや39GHzよりも高い周波数帯域だ。その周波数帯の定義は複数存在するが、広い定義では0.1THz(100GHz)〜10THz(1万GHz)が含まれるとされる。高速な無線通信に活用できると見込まれるが、扱いが難しいことから未活用の領域となっていた。

 ソフトバンクはBeyond 5G/6Gの時代において、テラヘルツ帯を活用したモバイル通信を目指している。テラヘルツ通信の研究は、2017年に開始。テラヘルツ通信での動画伝送の実証実験や、回転式反射鏡アンテナの開発などを行ってきた。

 今回の実証実験では、より現実のシナリオに近い「クルマと基地局の通信」というシナリオに沿って展開した。歩道橋の上に設置したアンテナから、低速で移動する自動車に対して、300GHzの無線通信を行うという内容だ。

ソフトバンク 実証実験のイメージ。道路上の基地局から車載端末への通信をイメージする
ソフトバンク 基地局に相当する装置は歩道橋上部に設置
ソフトバンク 端末側のクルマの上部に取り付けられたアンテナ

 テラヘルツ通信の難しさは、電波の飛ぶ範囲が限られることだ。スマホのような無指向性のアンテナでは、通信に必要なアンテナ利得を獲得するのが困難だ。面をカバーするのではなくビームのように電波を発して、直線上にエリアをカバーするようなアンテナ設計が求められる。

 そこでソフトバンクは、300GHz帯用の送受信アンテナを開発した。航空用レーダーなどで用いられている「コセカント2乗ビームの特性」を利用した、1.5cm角のアンテナを制作した。このアンテナを道路上に設置した基地局と、車載端末上部にそれぞれ取り付けることで、直線に伸びる道路をエリア化した。

ソフトバンク 航空用レーダーの技術をテラヘルツ波の通信で活用した
ソフトバンク 基地局側は下向きチルト、端末側は上向きチルトのアンテナを開発。組み合わせてコセカント2乗ビームの特性を生かした通信エリアを形成する

 実験装置では5Gの周波数帯(2.7GHz帯)で基地局の通信信号を発し、周波数変調装置を用いて300GHzに変調。歩道橋上の送信用アンテナから発信して、車両上の受信用アンテナで5Gの周波数帯に再度変調し、基地局IDを識別した。基地局直下10メートルの地点から、140m先の交差点地まで常に安定して受信・復調できることを確認している。道路端まで余裕を持って信号を受信できていたことから、実際に通信できる範囲はさらに広くなる可能性があるという。

ソフトバンク 基地局の足元まで含めた、長い直線距離をカバーする

 テラヘルツ通信ならではといえるのは、基地局直下をカバーできる点だ。通常の携帯電話基地局は、設計上基地局の直下はカバーエリアにはできないが、テラヘルツ帯を用いた今回の実証実験では、基地局直下10メートルから直線上にエリアを形成することに成功した。

ソフトバンク 今回の実証実験のシステム構成
ソフトバンク 300GHzに設定された装置。この装置自体は40GHzまでしか出力できないため、パワーアンプで300GHzに増幅している

 また、コセカント2乗ビームのアンテナを小型化できたのも周波数帯の特性に由来する。5Gの2.7GHz帯で同様の機能を持つアンテナを制作しようとすると1メートルほどの大きさになってしまうが、テラヘルツ波は波長が短いため、1.5cmに収まる小型アンテナを実現できたという。

 今回の技術が研究開発段階のもので、すぐに実用化されるものではない。一方で将来的には、自動運転など通信を活用するクルマが増えてくるものと見込まれる。クルマから車両基地に対して大量のドラレコデータを転送したり、自動運転車の高精細地図をダウンロードしたりといったシーンで、テラヘルツ波の高速通信が活用される余地がありそうだ。

ソフトバンク 車両内から基地局IDを識別できた
ソフトバンク 140mの直線を余裕をもってエリア化できることを確認した

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