ソフトバンクがLINEMOの新料金プランを導入した狙いは、主に3つある。1つ目が、先に挙げたデータ使用量の増加に対応し、解約を抑止すること。2つ目が、Y!mobileとの差別化だ。Y!mobileが2023年に導入した「シンプル2」は、Sが4GB、Mが20GBで、4GBと20GBの中間がない。シンプル2 Sは、「データ増量オプション」をつけても6GBまでしか増量できず、6GBを超えると選択肢がない状況だった。3GBから10GBに変動するLINEMOベストプランは、この間を埋める料金プランといえる。
もう1つのLINEMOベストプランVは、データ容量が20GBから30GBに変動するが、このデータ容量はそれぞれY!mobileのシンプル2 Mやシンプル2 Lと同じだ。どちらも中容量という点では、Y!mobileとバッティングするようにも見える。
一方で、Y!mobileのシンプル2は、従来以上に家族契約や光回線などのセット契約を重視した料金体系になっており、割引の比重が大きい。20GBのシンプル2 Mも、「おうち割 光セット」や「PayPayカード割」がない素の料金は4015円に跳ね上がってしまう。これに対し、LINEMOは当初から「おひとり様でもお得になる料金を心掛けてやってきた」(同)。こうした特徴は、新料金プランでも健在。データ容量をY!mobileとそろえたことで、それがより明確になった。
データ容量の設計は、「悩みに悩んだ」(同)という。「3ブランドをうまく差別化していかないと、どこかに雪崩が起こってしまう」(同)からだ。想定以上にソフトバンク内でのブランド移行が進むと、ARPU(1ユーザーあたりの平均収入)が落ち、経営の不確定要素になる。逆に、LINEMO自体の契約者数はソフトバンクやY!mobileほど伸びておらず、テコ入れの必要もあった。LINEMOベストプランは、その答えだったというわけだ。
3つ目の狙いが、ユーザー数を伸ばす楽天モバイルへの対抗だ。LINEMOベストプランという名称からも、この料金プランが楽天モバイルの「Rakuten最強プラン」を強く意識して設計されていることがうかがえる。「10GB以下では業界最安」(同)とうたっているのは、そのためだ。寺尾氏も「意識してないと言ったら、そんなことはない」と認める。
実際、Rakuten最強プランで3GBを超えると、次に料金が変わるのは20GB。間が大きく空いており、使用したデータ量が10GBでも料金は2178円かかる。LINEMOベストプランはここを突き、3GB超20GBで2178円のRakuten最強プランより安い2090円という料金を打ち出した。もともと3GB同士の比較ではLINEMOの方が安かったが、その上の階段にいるユーザーを狙う戦術だ。ソフトバンク内でLINEMOの比率が上がればARPUは下がるが、他社からユーザーを奪えれば収益は純粋なプラスになる。新料金プランの導入で、対楽天モバイルの色をより濃くしたといえる。
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