―― 2月の会見で、通信品質の実態を把握するために、d払いアプリから場所ごとの品質を把握するという説明がありましたが、こちらの進展はいかがでしょうか。
前田氏 d払いアプリのバーコードが表示されるまでの時間を見ています。それぞれの場所でどういう分布になっているのか、一定以上の割合が多いものは問題ありと見なし、そこの場所に行って、改善することを矢継ぎ早に行う。そういう使い方をしています。実際、やばそうだと思って(店舗に)行ってみたら、「ドコモは使いにくいので使わないでください」という張り紙がレジにされていました。
―― なんと。
前田氏 みたいなところもあるわけですよ。ただ、店内の話なので、電波状況はどこでもいいというわけにはいかない。われわれは、d払いはPayPayとも競争していますし、いかに彼らに対してわれわれが使いやすくできるかという努力をすごくしています。それこそ、1秒以内で起動してバーコードを出すことを、アプリ開発の連中は取り組んでいるわけです。
ですが通信状況によってその品質が出せないということだと、もったいないじゃないですか。というか、セットで考えないといけないわけです。通信品質を見ている連中も、だいたいこれぐらい(起動時間が)掛かればいいということではなく、お客さんに対して価値提供が行われているのか、競争が行われているのか、そのための品質にアプリ自体はなっているのか。
そういうことを理解してもらわないといけないので、両方がそれぞれのことをセットで考えた上でサービスを提供できるのが、一番いい状態だと考えると、お店の状態が悪いと出たら、矢継ぎ早に直していかないといけない。
先日、やばかったというところは、チェーン店なんですけど、全体的に改善させていただく形にして、ご理解いただいて、使えるようにしました。
―― それは、地下などの電波状況が厳しいところで起きていたのでしょうか。
前田氏 それは起こり得ますので、起こっていることを認識しないといけません。そこをつぶさに見る。今でもアプリのデータもそうですし、リモートで基地局のデータを取っているのもそうですし、SNSでのお声も見ています。見たところに対してちゃんと確認に行くとか、そこへの対策を打ちに行くことを、きめ細かに、スピーディーにやることを徹底することが大事だと思います。
―― その対処は簡単なことではないと思います。例えば屋内では、プラチナバンドにトラフィックが集中して、それがパケ詰まりの原因の1つになっているとします。そうした原因をしっかり特定して、スピーディーに対応できるものなのでしょうか。
前田氏 対症療法的な対応、根本的な対処の両方をやらなければいけないということだと思います。ただ、根本的な対応はどうしても時間がかかるので、ちゃんとやることを見越しながら、現時点でできる細かな対応もするのが基本だと思っています。
―― d払いのデータの傾向として、都内や繁華街が多い、意外にも地方でも多いなど、何か気付きのようなものはありましたか?
前田氏 都内だからどうこうという話ではないですね。エリアとしてちょっと弱そうだなというところが、どこかという感じでもなくて。
―― d払いのデータを使った効果はあったということですよね。
前田氏 もちろんありました。これはやり続けるべきだと思っています。
―― d払い以外のアプリで通信品質の改善に役立てているものはありますか?
前田氏 「Lemino」にも入れて見ています。例えば電車に乗っているときにちゃんと動画を見られるのかなどのデータを取っています。先ほどもお伝えした通り、通信品質をモニタリングするアプリがあり、それでガーッと見たりもしているので、(Leminoは)補完的に使っている感じですね。
―― 社長が自ら山手線に乗って、通信品質をモニタリングするというのは聞いたことがないのですが、前田さんの強い思いがあったのでしょうか?
前田氏 僕、こういうのが好きなんですよ(笑)。ダウンロードやアップロードするときのプログレスメーターをずっと見ていたいタイプなので。この前行ったときも、(同行した社員から)「社長がそんなのを見ていても、すごく退屈だし、面白くないでしょうから、動画がちゃんと見られるかどうか、見ていてください」と言われたので、「なめんなよ」と。「見たいんだよ」と(笑)。
こうやって現場に行って自分も何が起きているのかを理解しないと、経営判断をする上で正しく理解できないですよね。ですから、現場と経営サイドで課題感を共有して考える。そのレベルで考えることを実現できれば、どんどん現場力も高まるし、お客さんにはご満足いただけると思っています。
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