一方のGalaxy Z Flip6では、同じ通訳機能でも、カバーディスプレイに翻訳した言語を表示できる機能が強調された。Galaxy Z Fold6にも同機能は搭載される他、他社の端末ではGoogleの「Pixel Fold」が真っ先に実装した仕組みだが、縦折りフォルダブルスマホのGalaxy Z Flip6であれば、手に持ったままでも相手との会話がしやすい。一般的なスマホと同程度の軽さで、かつ折り曲げられるGalaxy Z Flip6のフォームファクターを生かした打ち出し方といえる。
カバーディスプレイが常時露出しているGalaxy Z Flip6ならではのAI活用方法として目を引いたのが、AIによるカスタマイズだ。同モデルではカバーディスプレイの待受けとして表示しておきたい画像を選ぶと、自動的に時刻や日時がレイアウトされる他、エフェクトをかけることも可能。カバーディスプレイを個性に合わせてカスタマイズしやすい、Galaxy Z Flip6の特徴を生かしたAIの活用方法を提案してきたというわけだ。
また、カバーディスプレイを飾るイラストを、自らの写真から作成できる「ポートレートスタジオ」も搭載されている。これは、写真を元に3Dアニメや水彩画などにした似顔絵を生成する機能のこと。折りたたんだまま画質の高いメインカメラでセルフィーが撮れるのは、フリップ型のフォルダブルスマホを使うメリットの1つ。折り曲げられることや、どのように折り曲げるかをしっかり考え抜き、そこにGalaxy AIを最適化していることがうかがえた。
実際、サムスン電子はGalaxy AIの搭載によって、スマホの新機軸を打ち出すことに成功している。これは、日本市場でもだ。サムスン電子ジャパンのCMO(チーフ・マーケティング・オフィサー)の小林謙一氏によると、「Galaxy AIをベースにしたGalaxy S24は、われわれの予想をはるかに超えるレベルで多くの方に手に取っていただける結果になった」と語る。各種販売ランキングでも、同シリーズが好調なことは伝わってくる。
サムスン電子の社長兼MX事業部長のTMロー(盧泰文=ノ・テムン)氏も、Galaxy Unpackedで「Galaxy S24ユーザーの3人に2人は、世界を検索し、発見する新しい方法(かこって検索)やコミュニケーション、言語の壁を取り除く新しい方法(通訳機能)、より簡単に創造し実行する新しい方法(文章生成などその他の機能)を享受している」と語り、同機能がGalaxyシリーズの売りにつながっていることを強調した。Galaxy Z Fold6/Flip 6では、この“勝ちパターン”をフォルダブルスマホに最適化しながら踏襲したというわけだ。
「Galaxy AIによって世界で最もパーソナルでインテリジェントな“折りたたみ体験”を提供する」と語ったロー氏だが、フォルダブルというフォームファクターを手に入れたことで、Galaxy AIが一段進化したように見えた。とはいえ、既存のモデルで使うGalaxy AIには、精度面でまだまだ改善の余地がある。特に日本語環境で使うボイスレコーダーの文字起こしは、現状だとPixelシリーズのそれに及んでいない。不定期のアップデートで改善はされているものの、実用性を高めるにはブレークスルーも必要になる。
また、ソフトウェアアップデートを適用した既存の端末とどう差別化を図っていくのかも、今後、課題として顕在化する可能性がある。Galaxy Z Fold6/Flip 6はプロセッサのNPUが大きく性能を上げたため、過去モデルとはAIの処理速度に違いが出る。限界まで性能を必要とする機能であれば、過去モデルへの搭載を見送ることもあるはずだ。ただし、この点がまだ十分訴求できていない印象を受ける。新機種での機能差や性能差をどのようにアピールしていくかは、2025年以降のフラグシップモデルに先送りされた宿題になりそうだ。
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