なぜ2024年にドコモだけでなくKDDIや楽天モバイルなども5G Sub-6のMassive MIMOを含む5G関連の発表を増やしているかというと、いくつかの理由がある。特に大きいのは、5Gスマホの普及が進んできたことと、大手4社ともに関係する関東首都圏での3.7GHz帯の制限緩和だ。これにより、各社とも首都圏で5G Sub-6 3.7GHz帯の出力アップによるエリア拡大を進めている。
まとめると以下の通りになる。
特に5G Sub-6の3.7GHz帯は周波数幅が100MHzと広く高速なので、干渉条件の緩和でこのエリアを広げやすくなっただけでも通信の混雑緩和を期待できる。それでも混雑する箇所には、この記事で紹介した金沢のイベントのように5G Sub-6かつMassive MIMOの基地局を整備することになる。Massive MIMOは4G向けの20MHzや30MHz幅の帯域でも用いられているが、5G Sub-6の100MHz幅で用いた方が通信効率の向上の幅はより大きくなる。
では、Massive MIMOでパケ詰まりが解消するのかというと、これだけで全てが解決するわけではない。もちろん都心のターミナル駅周辺や、今回ドコモが金沢で展開したようなイベント会場でMassive MIMOは有用だ。だが、それ以外の多くの場所は5G Sub-6のエリアの拡大や、郊外などはその他の周波数帯も用いた地道なエリア整備が求められる。
ドコモの5G整備が良くも悪くも注目されている要因は、5G開始当初に政府の方針もあり、全国の市区町村へ5Gを整備する方針で進めたことだ。だが、これがその後のコロナ禍を経て増大した都市部での通信需要の増加と嚙み合わずに通信の混雑の要因となってしまった。これについては以前の記事で解説している。
政府の当初の5G整備方針により、NTTドコモはいち早く5G Sub-6やミリ波のエリアを全国の市区町村に展開。5G Sub-6のエリアは同社調べてナンバーワンだ。最北端の稚内、宗谷岬でもドコモだけは高速な5Gを利用できるだが、NTTドコモ前田新社長も就任会見にて都市部における高速なSub-6帯エリアの拡大や、モバイルネットワーク体感の評価指標である英Opensignalの「一貫した品質」部門にて、2024年度末までにNo.1を目ざす方針を表明している。都心部の通信に余裕が生まれないと、ネットを活用した新しい社会インフラの実装や仕事の在り方、エンターテインメント、ウェアラブルやXRなど新しい通信の需要が生まれにくくなり通信事業の拡大にも影響する。今後に期待したい。
ドコモは今回のPEACEFUL PARK 2024 for 能登のように、イベントを主催しつつMassive MIMO搭載の5G臨時局を展開してサービスを提供するなど、リアルとデジタルを融合させたエンターテインメントや体験の展開に力を入れている。6月に発表した新しい国立競技場の運営への参画や、各地で建設が進むアリーナ施設の運営などに関する参画もこの一環だ。こちらについてはまた別の記事で紹介する。
(取材協力:NTTドコモ)
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