鉄道の「QRコード乗車券」導入で何が変わる? メリットと課題を整理する(2/3 ページ)

» 2024年08月13日 10時00分 公開
[岸田法眼ITmedia]

QRコード乗車券の課題 参画しない事業者との連絡をどうするか

 今回、鉄道8事業者のQRコード乗車券で気になるのは、東京メトロ、東京都交通局、相模鉄道(以下、相鉄)などが参画していないこと。相互直通運転、各鉄道事業者間の連絡運輸が多いことから、首都圏全ての鉄道事業者が参画すべきだ。交通系ICカード全盛とはいえ、券売機で乗車券を購入する人は今もいるのだから。

QRコード乗車券 他社線の管理駅一覧。QRコード乗車券の導入を予定していない東京メトロや相模鉄道との連絡をどうするのかは課題となっている

 特に他社線管理駅でQRコード乗車券が使えないのは、利便性の低下にもつながる。かつて、JR東日本のイオカード(自動改札機に直接投入して運賃を差し引く磁気式プリペイドカード)は、営団地下鉄(現・東京メトロ)管理駅の綾瀬では使用できない難点があった。

 京成は北総鉄道との共用区間(成田空港線京成高砂―印旛日本医大間)を除き、全駅管理駅だが、相互直通運転先の都営浅草線ではQRコード乗車券が使えず、発売できない恐れがある。この点について、京成広報は「相互直通先との乗り継ぎは大事なテーマと認識しておりますので、本件は引き続き検討し解決していくべきテーマと考えております」とコメントしている。

 JR東日本は「鉄道8社内では、現在の磁気乗車券と同様に購入の上、改札機をご利用いただける想定です。(中略)QR対応を行わない事業者との連絡については、駅のご利用状況や駅の改札口の形態などを踏まえ、窓口対応含め調整を始めている段階です」(JR東日本広報談)だという。

 相互直通運転の境界駅である綾瀬は東京メトロ、羽沢横浜国大は相鉄の管理駅なので、QRコード乗車券の対応については「連絡先各社とで調整を始めている段階です」とのこと。利用客に迷惑が掛からないことを大前提に進め、万全盤石の形でスタートを切りたい考えだ。

 西武は他社線の連絡乗車券の他、乗車駅から小竹向原までの往復割引乗車券、東京メトロ全線の1日乗車券をセットにした西武東京メトロパスを発売している。このうち、QRコード乗車券化するものについて、「具体的な券種については検討中です」(西武広報談)としている。

 また、相互直通運転の境界駅である小竹向原は東京メトロの管理駅なので、QRコード乗車券の対応については「利用可否については検討中です」とのこと。現時点で調整には至っていないようだ。

QRコードのサイズや印字箇所も検討の余地あり

QRコード乗車券 磁気式乗車券とQRコード乗車券の利用イメージ図(西武鉄道等提供)

 鉄道8事業者のニュースリリースを見ると、QRコード乗車券は近距離用乗車券の小さい用紙にQRコードを載せている。均一運賃だったスカイレールサービスなら問題はないが、3分の1程度をQRコードのスペースに充てると、券面表示が見づらい恐れがある。

QRコード乗車券 スカイレールサービスのQRコード乗車券

 小さい用紙のままでいくのなら、QRコードを裏面に印字した方がいい。たいていの磁気券は表面を自動改札機に投入するので、沿線の人々にとっては従来と同じ感覚で利用できる。

 参考までに北九州高速鉄道は、乗車券(1日乗車券も含む)、領収書を定期券やカードと同じサイズに統一して、券面表示を見やすくしている。

QRコード乗車券 宇都宮ライトレールの整理券発行機はホーム内に設置されている

 また、一部の路線バスや宇都宮ライトレールは、整理券に特殊なバーコードを印字しており、運賃箱に投入するとディスプレイに運賃が瞬時に表示される。これだとJR東日本のローカル線ワンマンカーにも導入できると思う。現時点、車内の整理券や無人駅の乗車駅証明書について、QRコード化の予定はないというが、今後の検討課題に挙げることを期待したい。

乗車券以外でも純粋な用紙に戻る可能性

 QRコード乗車券の実用化すると、自動改札機に通さなくてもいい特急券などが磁気券から純粋な用紙に変わることも考えられる。

QRコード乗車券 京成の2代目AE形は最高速度160キロ/hの韋駄天(いだてん)がウリ

 京成は「スカイライナー」などのライナー券の今後について、「磁気乗車券から置き換える対象券種であると考えております。一方でシステム間の連携という観点も踏まえなければならないため、実現可能性など引き続き検討の上で見極めていく必要があると考えております」と話す。

QRコード乗車券 JR東日本は、全てのエリアの近距離乗車券用券売機にQRコード乗車券の導入を予定している

 JR東日本は近距離用乗車券以外の乗車券等について、現状、磁気乗車券からの変更予定はないという。ただ、特急券については、「スマートフォンなどを用いて『えきねっと』で購入し利用いただくチケットレスサービスにおいて、2024年度下期以降にQRコードを使用した新たな乗車サービスを導入予定」だという。今後はチケットレス化をよりいっそう進めてゆく模様だ。

QRコード乗車券 西武の001系ラビューは車窓からの眺望がウリ

 西武は「窓口で発売する特急券、指定券はレシートタイプに順次変更しております。券売機で発売する特急券、指定券についても磁気券からの変更を検討しております」と述べており、将来は磁気券がなくなる可能性を秘めている。

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2025年12月07日 更新
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