MWCでは、「来年(2025年)上期に3つ、4つは出していなければいけない」と語っていた秋山氏だが、KDDI SUMMITでは、交渉を進めている具体的な会社名が挙げられた。動画サービスのABEMA、公衆無線LANサービスを展開するKDDIグループのワイヤ・アンド・ワイヤレス、業務用ソリューションからWi-Fiルーターまで幅広く手掛ける富士ソフトが、その3社だ。
秋山氏によると、「お客さまに提供していくトッピングもカスタマイズでき、ご相談しながら決めていく」という。例えば、データ容量をちょうど動画1本ぶんにしたり、自社サービスだけデータ容量のカウントから除外するゼロレーティングのサービスを入れたりといった形で、パートナーが望むトッピングを用意する意向だ。秋山氏は、「パートナーと一緒に新しいものを作っていこうというのが現段階」と語る。
当初は、povoという名前も比較的前面に出るが、「パートナー側やそのお客さまが見たときに自然な形になるよう、こうあるべきと決めているわけではない。できるだけ(povoの)名前をウォッシュアウトしてしまうやり方はもちろんある」という。より通信がサービスやコンテンツに溶け込めるよう、パートナーの名前で提供していく可能性もあるそうだ。
回線をパートナーに提供する黒子という意味ではMVNOやMVNOを支援するMVNEに近い印象も受けるが、秋山氏は「MVNOとは違うと思っている」と話す。「お客さまとのエンゲージメントを高めるところをご一緒にして、一緒に作り上げていくコンセプトでこの事業を用意している」(同)とした。将来的には、海外で現地キャリアのネットワークを利用できることも想定しており、「例えばシンガポールで事業を広げたいと思ったら、テレコム同士のアライアンスでコネクティビティをご用意したい」(同)という。
現状では、B2B2Cに近いビジネスモデルだが、秋山氏は「その先のコンシューマーが個人でアプリを作って、そこにSDKを組み込めるようにして、個々人をエンパワーメントする社会が来るかもしれない」と予想する。ここまで来れば、スマホを使ったサービスにpovoが本当の意味で染み込んだといえそうだ。
「povoはau UQ mobileをどうトランスフォームしていくかを考えてできたブランド。安いところを追求するというより、将来のテレコ(通信事業者)がどういう形でビジネスを追求し、社会に関わっていくかを模索していくブランドで、全てをオンラインにし、若い世代や今後の世代にどんなユーザー体験を提供できるかをアジェンダにしている」
秋山氏は、KDDI SUMMITの冒頭で、povoに課せられた役割をこう表した。実際にサービスを出しながら、変化する通信ビジネスの在り方を模索するのが、povoとしてauやUQ mobileからブランドを切り出した理由だ。単なるユーザーの奪い合いではなく、新たな市場を創出しようとしているところにpovoの真価がある。現状はまだ交渉中というステータスだが、サービスの早期投入にも期待したい。
KDDI「povo3.0」の姿が明らかに B2B2Cモデルで他サービスと連携、“生活に溶け込む通信”へ
「povo2.0」に“最短3分”契約のデータ専用プランが加わった背景 新サービスへの布石か
KDDI高橋社長が語る「povoのオープン化」「ローソンとの提携」 他社との決定的な違いは?
2周年を迎えた「povo 2.0」の現在地 トッピングはSuicaから着想、“オープン化“も視野に
好調「povo2.0」の向かう先 サブ回線の利用増でも“基本料金0円”を維持できるワケCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.