実は始まっていた「povo3.0」への布石 povo2.0は他社対抗も含め“完成形”に石野純也のMobile Eye(2/2 ページ)

» 2024年09月07日 06時00分 公開
[石野純也ITmedia]
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ABEMA、Wi2、富士ソフトが導入を検討、B2B2Cモデルへの転換は図れるか

 MWCでは、「来年(2025年)上期に3つ、4つは出していなければいけない」と語っていた秋山氏だが、KDDI SUMMITでは、交渉を進めている具体的な会社名が挙げられた。動画サービスのABEMA、公衆無線LANサービスを展開するKDDIグループのワイヤ・アンド・ワイヤレス、業務用ソリューションからWi-Fiルーターまで幅広く手掛ける富士ソフトが、その3社だ。

povo povo3.0のパートナーとして議論している3社の名前を挙げた秋山氏

 秋山氏によると、「お客さまに提供していくトッピングもカスタマイズでき、ご相談しながら決めていく」という。例えば、データ容量をちょうど動画1本ぶんにしたり、自社サービスだけデータ容量のカウントから除外するゼロレーティングのサービスを入れたりといった形で、パートナーが望むトッピングを用意する意向だ。秋山氏は、「パートナーと一緒に新しいものを作っていこうというのが現段階」と語る。

 当初は、povoという名前も比較的前面に出るが、「パートナー側やそのお客さまが見たときに自然な形になるよう、こうあるべきと決めているわけではない。できるだけ(povoの)名前をウォッシュアウトしてしまうやり方はもちろんある」という。より通信がサービスやコンテンツに溶け込めるよう、パートナーの名前で提供していく可能性もあるそうだ。

povo SDKを提供し、料金プランやサービス内容をパートナー側が決められる仕組みにしているという

 回線をパートナーに提供する黒子という意味ではMVNOやMVNOを支援するMVNEに近い印象も受けるが、秋山氏は「MVNOとは違うと思っている」と話す。「お客さまとのエンゲージメントを高めるところをご一緒にして、一緒に作り上げていくコンセプトでこの事業を用意している」(同)とした。将来的には、海外で現地キャリアのネットワークを利用できることも想定しており、「例えばシンガポールで事業を広げたいと思ったら、テレコム同士のアライアンスでコネクティビティをご用意したい」(同)という。

povo 海外キャリアとの提携で、povoのパートナーが現地の通信を直接提供できるような仕組みを導入することも示唆した

 現状では、B2B2Cに近いビジネスモデルだが、秋山氏は「その先のコンシューマーが個人でアプリを作って、そこにSDKを組み込めるようにして、個々人をエンパワーメントする社会が来るかもしれない」と予想する。ここまで来れば、スマホを使ったサービスにpovoが本当の意味で染み込んだといえそうだ。

 「povoはau UQ mobileをどうトランスフォームしていくかを考えてできたブランド。安いところを追求するというより、将来のテレコ(通信事業者)がどういう形でビジネスを追求し、社会に関わっていくかを模索していくブランドで、全てをオンラインにし、若い世代や今後の世代にどんなユーザー体験を提供できるかをアジェンダにしている」

povo povoは、個々人のコミュニティーに合わせてアプローチしていく方向を模索しているという

 秋山氏は、KDDI SUMMITの冒頭で、povoに課せられた役割をこう表した。実際にサービスを出しながら、変化する通信ビジネスの在り方を模索するのが、povoとしてauやUQ mobileからブランドを切り出した理由だ。単なるユーザーの奪い合いではなく、新たな市場を創出しようとしているところにpovoの真価がある。現状はまだ交渉中というステータスだが、サービスの早期投入にも期待したい。

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