総務省が10月11日、「電気通信事業法第27条の3等の運用に関するガイドライン」の改正案に対する意見募集を告知した。
電気通信事業法第27条の3では、「行きすぎた囲い込み」や「通信と端末の分離」を規定しており、スマートフォンの割引額についても制限している。2024年10月現在、スマートフォンの割引は通信とセットの場合でも単体購入の場合でも4万4000円(税込み)までとしている。
携帯キャリア各社は、この制限に抵触しないよう、各種割引や端末購入プログラムを提供している。後者の端末購入プログラムでは、1年後や2年後に端末を返却すると、残りの支払額を免除する。
免除される金額は、いわば買い取り(下取り)金額に相当するので、必ずしも割引には当たらない。しかし、「想定される買い取り金額+4万4000円を超えた金額」を免除すると、4万4000円を超えて割り引いたと見なされ、ガイドライン違反になる。そこで各キャリアは、機種ごとに予想される買い取り金額を算出しており、「支払いを免除する金額−買い取り予想金額」が4万4000円を超えないよう購入プログラムを設計している。
しかし買い取り予想価格には明確な基準があるわけではなく、各社の判断に委ねられている。そこでガイドライン改正案では、事業者が端末の買い取りを行う場合、「端末の販売価格×残価率×その他考慮事項」という算出式を用い、合理的な「買取等予想価格」を算出することを追記している。
残価率は、販売時点からnカ月目の場合、「発売からnカ月目の買取平均額÷各電気通信事業者における販売当初の販売価格」と定めている。この式を用いて、販売1カ月目から48カ月目までの残価率を算出していく。例えばある端末が発売時に12万円で、24カ月目の買い取り金額が4万円だった場合、残価率は33.3%になる。
発売からnカ月目の買い取り平均額は、リユースモバイル・ジャパンのWebサイトに公表されている買い取り平均額を使用する。各電気通信事業者における販売当初の販売価格は、発売日から1カ月の販売価格のうち、最も高い価格とする。これに残価率を掛け合わせることで買取等予想価格が算出される。
ただしこの式を適用できるのは、発売後の端末に限られる。端末が発売する前は、そもそも中古市場に流通していないので、残価の設定ができない。そこで改正案では、「端末の販売開始前に買取等予想価格を算出する場合など、残価率を設定できない場合には、最新の先行同型機種の残価率を参照する」と定めている。
例えばソフトバンクは「Xiaomi 14T Pro」を2024年11月下旬以降に発売するが、購入プログラムの残価は、先代の「Xiaomi 13T Pro」の残価率を参考にすることになる。
買い取り金額の基準が定められることで、最も大きな影響を受けるのはソフトバンクかもしれない。同社は一部のスマートフォンにて、「新トクするサポート」を適用して1〜2年後に端末を返却すると、実質24円や36円といった安価に利用できる施策を展開している。直近では、「Pixel 9(128GB)」や「motorola razr 50s」が1年間実質36円(+早トクオプション料の1万9800円)の対象になっている。
ただしこれは、高額な買い取り予想価格に基づいて実現している。例えばPixel 9(128GB)の場合、13カ月目に返却すると15万1164円もの金額が免除されるが、13カ月目の買い取り予想価格は9万1597円なので、その差額は5万9567円。これに早トクオプション料の1万9800円を引くと3万9767円なので、割引額が4万4000円以内に収まるというわけだ。
一方、この買い取り金が適正かは議論の余地がある。約1年前に発売された「Pixel 8(128GB)」の買い取り価格を各事業者のWebサイトで見ると、未使用品でも約5万円、中古だと3万円台〜4万円台が相場になっている。これをPixel 9(128GB)に当てはめると、約9万円という買い取り価格は明らかに高い。
ちなみに他キャリアのPixel 9(128GB)の買い取り予想価格は、ドコモの13カ月目が7万2550円、auの25カ月目が7万200円となっており、やはり中古市場の相場よりも高い。ガイドライン改正によって、こうした高額な買い取り予想価格が是正される可能性が高い。
ガイドライン改正の意見募集は11月11日まで受け付けている。今後の予定については「寄せられた御意見を踏まえ、速やかに運用ガイドラインの改正を行う予定です」としており、具体的な改正時期は未定。改正が確定したわけではないが、キャリアからスマートフォンを購入することを検討している人は、早めに購入しておいた方がいいだろう。
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