世界のモバイルネットワークエクスペリエンス(体験)を分析するOpensignalは、11月20日、日本のモバイル・ネットワーク・ユーザー体感レポートの2024年10月版を発表した。同日、Opensignalはオンライン会見を行い、アジアパシフィックリージョンを担当する主席アナリスト、ロバート・ヴィルジコウスキー(Robert Wyrzykowski)氏がレポート内容を紹介した。
Opensignalは通常、4月と10月の年に2回、日本のモバイルネットワークユーザー体感レポートを発表している。今回のレポートは、2024年7月1日から2024年9月28日までの期間、日本の4キャリアのネットワーク品質を分析し、ユーザーが実際に感じるモバイルネットワーク体感を数値化したものだ。
Opensignalの調査指標には、通信速度、ビデオやゲーム、音声アプリなどのユーザー体験を評価する「エクスペリエンス」、エリア範囲を評価する「カバレッジ」、一般的なタスクを十分に完了できる頻度を見る「一貫した品質」、ユーザーがネットワークに接続している時間の割合を示す「利用率」があるが、今回から新たに、ネットワークに接続し、決められたタスクを実行できる能力があるかどうかを見る「信頼性エクスペリエンス」が加わった。各項目は、5Gに限定した場合と、3G、4G、5Gの全世代を含めた場合とで調査されている。なお、5Gは4Gの転用周波数を利用したものも含まれる。
まずは、収録済みのビデオをストリーミングで見たときの体感を調べた「ビデオ・エクスペリエンス」から説明。5Gビデオ・エクスペリエンスはソフトバンクとauがトップを分け合った。3G、4G、5G全てを含めたビデオ・エクスペリエンスは、前回の調査ではソフトバンク、au、楽天モバイルが共同で受賞したが、今回はauが頭1抜け出して1位となった。
リアルタイム配信の動画を見る場合の体感を見る「ライブ・ビデオ エクスペリエンス」。前回、5Gライブ・ビデオ・エクスペリエンスではソフトバンクがトップだったが、今回はauにその座を奪われた。また、ライブ・ビデオ・エクスペリエンスについても、前回は楽天モバイルとauが共同で受賞したが、今回はauが単独勝利。「auは5Gとその他全世代を通じたライブ・ビデオ・エクスペリエンスの賞を独占した形」(ヴィルジコウスキー氏)だ。
「ゲーム・エクスペリエンス」も、5G限定、全世代を含めた場合の両方でauがトップとなった。前回、5Gではソフトバンク、全世代の場合は楽天モバイルがトップだったが、今回は両方ともauがトップで、特に全世代を含めたゲーム・エクスペリエンスは「auの圧勝」(ヴィルジコウスキー氏)と表現していた。
LINEの無料通話やSkypeなどの音声アプリを使った際の体感を見る「音声アプリ・エクスペリエンス」。前回の調査ではauとソフトバンクが5G音声アプリ・エクスペリエンスで共同受賞したが、今回はauが「断トツで勝った」(ヴィルジコウスキー氏)。auは音声アプリ・エクスペリエンスでも、前回勝者の楽天モバイルからトップを勝ち取っている。
通信速度はダウンロード速度、アップロード速度をそれぞれ、5G、全世代で調査している。5Gのダウンロード速度が最も速いのは楽天モバイルだ。ただ、ヴィルジコウスキー氏は、5Gダウンロード速度の平均値で、増加率が高かったのはauだったと紹介した。auは、5Gのダウンロード速度が27Mbps(21%)増加し、前回の4位から今回は2位と順位を上げている。
全世代のダウンロード速度でもauが54.7Mbpsで1位。「2位のNTTドコモよりも13%高い速度を出している」(ヴィルジコウスキー氏)。
5Gアップロード速度に関しては、前回勝者の楽天モバイルが今回も27Mbpsというスコアで連勝した。2位のソフトバンクは楽天モバイルよりも約8Mbps遅い。また、5Gダウンロード速度と同様、auは5Gアップロード速度が前回調査よりかなりアップしているという。
楽天モバイルは全体のアップロード速度でも17.2Mbpsというスコアで前回に引き続き1位。2位のauとソフトバンクの2倍の速度だ。
「利用率(Availability)」は、ネットワークに接続している時間の割合を示すもの。5Gの利用率では、auとソフトバンクが3回連続で勝者となった。とはいえ、5Gネットワークを利用している時間帯が全体の12%程度ということで、数値的にはまだ伸びる余地があるが、ヴィルジコウスキー氏は「全事業者で5G利用率のスコアはアップしている。特に楽天モバイルに関しては3.3%もアップしている」と語っていた。
全体の利用率では、auとNTTドコモの2社がトップだった。
「5G・カバレッジ・エクスペリエンス」ではNTTドコモが3回連続で勝者となった。10ポイント満点で4.2ポイントというスコアだ。なお、全4キャリアで5G・カバレッジ・エクスペリエンスのスコアは0.3から0.4ポイントアップしているという。
全世代のカバレッジ・エクスペリエンスでも、ドコモは10ポイント満点で9.1ポイントの高いスコアで1位となっている。これは「ドコモは日本の携帯電話事業者の中で、人口が密になっているエリアで、広範囲で大規模な地理的カバレッジを持っているということを意味している」(ヴィルジコウスキー氏)という。
メールを送受信できる、Webにアクセスして画面が切り替えられるなど、一般的なタスクを十分に完了できる頻度を見て、ネットワーク品質が一定かどうかを評価する「一貫した品質」。前回はソフトバンクが一貫した品質で単独1位だったが、今回はauが上回った。新たに追加された指標「信頼性エクスペリエンス」に関しては、auが100から1000点のスケールで939点という得点を出して1位となった。
以上の結果を一覧にしたのが下の表だ。auの受賞数が圧倒的に多い。
ヴィルジコウスキー氏は「auがこれだけの賞を受賞したというのは初めて。楽天モバイルは通信速度アワードを死守、ドコモの受賞カテゴリーは3つともカバレッジのカテゴリー、ソフトバンクは今回2カテゴリーでの受賞」とコメントした。
ちなみに、Opensignalは日本を8つの地域に分けて調査した結果も公開しているが、そこでもauが圧勝しているという。auがここまで躍進した理由としてOpensignalは、KDDI自身も説明しているように、衛星通信の干渉問題が解決され、基地局からの出力を上げることができるようになり、信号強度が強くなったためではないかとコメントしていた。
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