世界を変える5G

楽天モバイルの通信品質が改善したワケ 5Gやプラチナバンドの現状、ネットワーク戦略を竹下副CTOが解説(1/3 ページ)

» 2024年11月28日 10時30分 公開
[石野純也ITmedia]

 楽天モバイルは、11月27日に報道関係者に向けた「ネットワーク技術に関する勉強会」を開催した。常務執行役員副CTO兼モバイルネットワーク本部長の竹下紘氏が、完全仮想化ネットワークの特徴を改めて語るとともに、同社のネットワーク戦略や現在の注力領域を明かした。

楽天モバイル 楽天モバイルが、同社のネットワークについて解説した。写真は竹下副CTO

 同イベントに合わせ、2024年内をめどに進めていた関東地方のSub6(3.7GHz帯)の出力増強やアンテナ角度調整などの取り組みが前倒しで完了し、11月27時点で1月の2.1倍までエリアが拡大したことも発表した。Sub6のエリアは東海地方や近畿地方でも実施されているが、1月以降は九州、沖縄でも同様に5Gを広げていく。

「完全仮想化」「Open RAN」「AI・自動化」が特徴のネットワーク

 2020年4月に携帯電話事業に本格参入した楽天モバイルだが、竹下氏によると、その特徴は3つに分かれるという。1つ目が完全仮想化。専用のネットワーク機器を利用せず、汎用(はんよう)のコンピュータを使って無線を制御しているのが同社の特徴だ。仮想化は他社でも進められているいわば業界のトレンドだが、部分的に導入するのではなく、「全面的に採用しているのがわれわれの大きな特徴」(竹下氏)だ。

 「仮想化していない基地局は1局もない。これだけ大規模なネットワークを運用し続けているのは、技術だけでなく、人材教育の面でも強みになっている」

楽天モバイル ネットワークの特徴は、完全仮想化とOpen RANの採用やそれによるAI・自動化を進めているところにあるという
楽天モバイル 専用ハードウェアを採用していた従来型のキャリアとは違い、楽天モバイルは汎用機器の上でソフトウェアとして無線を制御する各種機器を実装している

 2つ目が、複数ベンダーにまたがってネットワーク機器を構成できる、Open RANを採用したこと。竹下氏が「設備仕様をオープンにして、複数のサプライヤーが参入可能になることで、自然と価格が下がってくる」と語るように、これによって基地局設置のコストを削減。使い放題で月額3278円(税込み)という低料金に結びついているという。

楽天モバイル 異なるベンダーの機器、ソフトウェアを組み合わせるOpen RANにも対応。これによって、コストの削減も可能になった

 3つ目が、AIや自動化の活用だ。そのメリットは、「デプロイやセキュリティ設定を自動化したことで、建設した基地局の電波発射や、運用開始のための設定投入を素早くできる」ところにある。結果として、「フィールド訪問のコスト削減や、オンエアまでの時間を短くすることが可能になった」。これに加え、1年ほど前から通信障害の事前検知にもAIの活用を始めたという。

楽天モバイル AIを活用した自動化も取り入れている

 「ネットワークには、障害が起きるときに予兆を示す傾向がある。その予兆を機械学習で事前に学習しておき、1日後、早ければ1時間後にサーバがおかしくなるといった情報が出たら、それを元に対処する。問題が起きる前に運用部門で素早く対処ができ、日々の障害を未然に防げるようになった」(竹下氏)

 今後は、AIを基地局の電力削減にも活用していく方針だ。基地局は「24時間365日全国で電波を発射しているため、電力コストの削減はネットワーク運用コストに効いてくる」ためだ。例えば、住宅街だと日中、オフィス街だと夜間はトラフィックが少なくなり、基地局の負荷が下がる。これに応じて、電力を自動的に抑える仕組みを開発。「最大20%の電力削減を実現する機能を商用ネットワークに入れることを目標している」といい、現在、2025年の導入に向け、その準備を進めている。

楽天モバイル AIは、基地局電力の削減にも活用していく。現在は実証段階だが、2025年には商用ネットワークにこれを導入する
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