では、なぜiPhoneはリセールバリューが高いのでしょうか。Appleのビジネスモデルも含めて考察してみます。
iPhoneは単なるスマートフォンではなく、ブランドアイコンとしての確固たる地位を築いています。シンプルで洗練されたデザイン、直感的な操作性、そしてAppleブランドの強みが、ユーザーに新モデル登場ごとに買い替えを促す要因となっています。このブランド力は、スターバックスがコーヒー業界に与えた影響に匹敵するといえるでしょう。
一方、Androidは市場シェアでは圧倒的な存在ですが、iPhoneほど熱狂的なファン層を形成しているとはいいがたいのが現実です。つまり、iPhoneは単なる製品ではなく、ライフスタイルやステータスシンボルとしての価値が評価され、世界中のユーザーから長期間にわたって支持され続けている証拠といえます。
Appleは独自のエコシステムを世界中に構築しており、正規の修理店で純正パーツを使用した修理が受けられる点が大きな魅力です。さらに、サードパーティーの修理店も独自の部品を用いたサービスを展開しているため、修理の選択肢が豊富であり、中古市場における製品価値の維持に寄与しています。
それに対して、Androidは多くのメーカーが存在するため、機種数が非常に多く、各モデルの販売台数が分散しがちです。その結果、販売台数が少ないモデルは修理パーツの供給が限定され、コスト面でも不利となるため、中古市場での評価が低くなる傾向があります。
Appleは他メーカーよりも長期にわたってソフトウェアアップデートを提供しています。AndroidスマホのOSアップデート期間は2〜3年程度のメーカーが多いですが、iPhoneでは5〜6年以上のアップデートが提供されることが通例です。
例えば、2017年に発売されたiPhone 8は、2022年までOSメジャーアップデートが提供され、2025年3月時点でもセキュリティアップデートは継続されています。このようにサポート期間が長いため、中古市場でも価値が落ちにくくなっているのです。
Samsungはリセールバリュー向上を目指し、エコシステムの強化や長期的なOSアップデート提供を推進しています。Googleも他のAndroidメーカーに比べて発売モデルを限定することで、統一された操作性を維持しています。こうした取組みを行うAndroidメーカーも増えていますが、Appleほどのブランド力を確立できていないのが現状です。
そのため、iPhoneのブランド力やエコシステムの優位性は今後も継続すると考えられます。購入後も価値が下がりにくいiPhoneは、長く使いたいユーザーや一定期間使用後に買い替えを検討するユーザーにとって、最適な選択肢といえます。
1979年、岐阜県生まれ。筑波大学大学院 理工学研究科を修了後、ブラザー工業に入社し、研究開発に従事する。2009年1月、株式会社アワーズ(現:株式会社ニューズドテック)を設立し、代表取締役に就任。2017年3月には業界団体である一般社団法人リユースモバイル・ジャパンを設立し、初代理事長に就任。総務省やデジタル庁主催の検討会にも、構成員やオブザーバーとして参加。
創業以来、一貫して中古端末市場の専門家として活動し、これまでに100以上のメディアに出演した実績を持つ。
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