Threadsには「ネットショップ業務募集」「注文処理スタッフ募集中」といった投稿が多数見られます。「1日数時間で日給1万円、3日後に支払いを受けられる」というパターンが多いようです。
筆者はThreadsで募集していたアカウントに連絡しました。「InstagramのDMで連絡をください」とあったので、おそらくThreadsのDMが始まる前(7月15日以前)から行っていたのだと思われます。
ThreadsからInstagramに遷移し、DMで働きたいと伝えました。すると、TikTokプラットフォームでの注文処理が主な業務となること、1日1〜3時間で働くこと、3日間の試用期間があることなどを告げられます。
興味があるならLINEアカウントのQRコードを送るようにと言われました。「QRコードの撮り方が分からない」と言ってみましたが、優しく手順を教えてくれました。
QRコードを送ると、すぐにLINEの「友だち」に追加されました。A氏と名乗るアカウントは、先ほどと同じように業務の説明をしてから、年齢と職歴、結婚の有無について尋ねてきました。希望の勤務時間も聞かれ、時間帯を固定したいと言っていたため、先方はスケジュールを組んで対応しているのかもしれません。
続いて、「TikTokビジネス版」をダウンロードするように言われます。そんな名前のアプリは存在しませんが、送られてきたリンクからWebページにアクセスすると、アプリストアへのリンクが用意されたページが表示されました。
筆者のスマホはiPhoneなので「App Store」と記されているリンクを踏むと、「TestFlight」と「TikTok」のインストールボタンが表示されます。App Storeのリンクを踏めば、通常はストアのアプリページが開くため、この時点でもおかしいことが分かります。
まずはTestFlightをインストールします。TestFlightとは、iOS用に開発したアプリをストア配信前に限定公開できるAppleのプラットフォームです。次に「TikTok」と称されるアプリをインストールします。実際には「TikTok BHIOpe」というアプリ名で、デベロッパ名は「Hafay KAZAZ」と記されていました。
インストールすると、TikTokとそっくりのアプリが起動します。ここに、Googleアカウントでログインするように言われます。なぜGoogleアカウントなのか、理由は不明です。
ログインすると、「ショップセンター」というタブを開き、店舗を開設するように指導されます。ここまで、スクリーンショットをLINEに送ると、タップすべき部分が記されたスクリーンショットが返される形式で指示が続きます。
「店舗情報」には、実在するカー用品専門店の名前を入れるように言われました。店舗の写真も送られてきます。また、自分の運転免許証、身分証明書、健康保険証などの番号と画像、自分の氏名を入れるように指示されます。招待コードも指定されます。勧誘が成功した場合の識別用かもしれません。
潜入はここまでとしましたが、手口は以下のような流れであることが分かりました。
この時点で、自分のThreadsやInstagram、LINEアカウントを相手に知られています。偽アプリに入力してしまうと、自分のIDも相手に送信してしまうことになります。おそらくこの後、口座番号などの金銭をやりとりする情報も伝えることになると思われます。
実際にアルバイトをすると、報酬を得られる人とそうでない人がいるようです。その後、研修期間が終わったからとネットショップ共同運営のための出資金を求められます。「お金がない」と断っても、カードローンで借りるように勧められた人もいます。
Threadsで被害を訴える投稿には、暴力団の名前を出されている人もいたようです。個人情報を知られている上で脅されると、つい言いなりになってしまうこともあるのでしょう。闇バイトでも、先に相手に個人情報をつかまれてしまうため、犯罪を実行してしまうケースがあります。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.