「Snapdragon 8 Elite Gen 5」で見えたAIスマホの未来 2026年以降は“先回りで提案”が定着するか石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

» 2025年09月27日 18時46分 公開
[石野純也ITmedia]

目指したのはエージェント型AI、その鍵になるPersonal Scribe

 スマホに搭載されるエージェント型AIとは、どのようなものか。会期初日に基調講演を行ったCEOのクリスティアーノ・アモン氏は、「AIは新しいユーザーインタフェース(UI)である」としながら、次のように語る。

 「システムは、ユーザーのニーズを理解し、常にサポートを提供できるよう設計されている。まるでアプリとやりとりするような感覚だ。しかし、これは従来のアプリとはまったく異なり、ユーザーのニーズを先回りして予測し、積極的にサポートしてくれる」

Snapdragon 8 Elite Gen 5 スマホのアプリに変わり、エージェント型AIが新しいUIになっていくと語ったアモン氏

 具体例として挙げられたのが、ユーザーのチャット記録から自動的に会議用の資料を作成し、送信しておくといったことや、レストランを検索し、メニューをスマホに送るとともに予約をするといったこと。これらは、スマートグラスやスマホ、スマートウォッチなど、複数のデバイスが連携し、実現している。

 アモン氏は、「スマホはこれまで通り素晴らしい機能を提供し続けながら、ユーザーの操作を代理で行うような機能も提供できるようになる」としつつも、その中心はエージェント型AIに移っていく見通しを語る。スマホありきではなく、スマホも含めた複数のデバイスをAIがとりまとめるイメージに近い。

Snapdragon 8 Elite Gen 5 アモン氏は、モバイル中心からエージェント中心にシフトしていくと強調した

 もちろん、こうした機能がSnapdragon 8 Elite Gen 5だけですぐに実現するわけではなく、アモン氏が示したのはあくまで将来像だ。一方で、チップセットの進化が目指す方向性は、大きなビジョンに基づいている。そのために重要になるのが、同チップに搭載された「Sensing Hub(センシングハブ)」の進化や、Sensing Hub上に組み込まれた「Personal Scribe(パーソナルスクライブ)」だ。

Snapdragon 8 Elite Gen 5 エージェント型AIを実現するには処理能力の向上以上に、Sensing HubやPersonal Scribeの重要性が増す

 Sensing Hubとはセンサーを制御するための機能で、声を検知した際に音声アシスタントを起動したり、カメラで顔認証を行ったりといったことに活用されている。Snapdragon 8 Elite Gen 5に搭載されたSensing Hubは、前世代比で消費電力が33%削減されており、さらに効率的な動作が可能になっている。

Snapdragon 8 Elite Gen 5 Snapdragon 8 Elite Gen 5では、Sensing Hubの消費電力が33%削減されているという

 さらにSensing Hub上に実装したPersonal Scribeで、ユーザーのさまざまな属性や文脈を保存していくことが可能になる。Qualcommの副社長でAIや生成AIを担当するプロダクトマネージャナーのビネッシュ・スクマール氏は、これを「会話の要素を知的に保存するための新機能」としつつ、ローカルに保存される「ナレッジグラフ」だとした。

Snapdragon 8 Elite Gen 5 Personal Scribeが個人の情報を蓄積するナレッジグラフになるとしたスクマール氏

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