ミークは2025年10月30日、連結子会社ミークモバイルを8月に設立し、非通信事業者が自社のブランドでモバイルサービスを手軽に展開できる新サービス「MVNO as a Service」の提供を開始することを発表した。
これは、通信事業に関する専門的な知見や大規模なシステム開発を必要とせず、既存の顧客基盤を持つ事業者が新たな価値提供と収益機会を創出することを目的としている。
ミークモバイルが発表したMVNO as a Serviceは、モバイル事業の運営業務をミークモバイルが包括的に代行する仕組みだ。新サービス発表会に登壇したミークモバイル代表取締役社長の小林敏範氏は、このモデルの詳細を説明した。
モバイル事業の運営業務をミークモバイルが包括的に代行するのがMVNO as a Serviceの役割となっている。発表会に登壇したミークモバイルの小林敏範社長(画像=右)と、その親会社であるミーク峯村竜太社長(画像=左)具体的には、ミークモバイルが非通信事業者(例:A社)と契約し、「A社モバイル Powered by MEEQ」といったブランド名でサービスを顧客に提供する。A社は自社の既存顧客基盤に対して販売促進を行う役割を担う。一方、実際のサービス提供、SIM配送、料金請求・回収、顧客管理、法令対応、カスタマーサポートといった専門知識を要する運営業務は、全てミークモバイルがワンストップで引き受ける。
非通信事業者にとっての収益モデルも明確化されている。ミークモバイルは、顧客から得た売上の一部を「販売手数料」としてA社に支払う。A社はこの手数料を原資として、自社のメインサービスへのポイント還元やクーポンの提供などに活用できる。さらに、月内で使わなかったデータ容量を連携する「残ギガバイト連携」といった機能も提供可能で、A社はこれを特典に交換するなど、あたかも自社でモバイルサービスを運営しているかのような顧客体験を創出できる。これにより、個人の多様なライフスタイルに対応した魅力的な通信サービスの選択肢が広がることを目指す。
なぜ今、ミークがこの新サービスを立ち上げるのか。発表会では、親会社であるミークの代表取締役 執行役員社長、峯村竜太氏がその背景を説明した。
ミークは2019年3月にソニーグループから設立され、2022年12月に商号を現在のミークに変更。2025年3月には東京証券取引所グロース市場へ上場した。同社の中核事業は主に2つある。1つは「IoT/DXプラットフォームサービス」で、物の通信を利用する企業向けにモバイル回線を提供する。もう1つは「MVNEサービス」で、いわゆる「格安SIM」事業を行う MVNO(仮想移動体通信事業者)向けに回線を提供する。
同社の強みは、この両事業が持つシナジーにある。MVNEサービスは主にスマートフォンのコンシューマー利用が中心で、動画視聴などダウンロードのトラフィックがメインとなる。一方、IoT はセンサーからクラウドへデータを送るため、アップロードのトラフィックがほとんどを占める。ミークの設備は構造上、上りと下りが1対1で構えられており、従来は MVNEサービスだけでは「上りがガラガラに空いている」状況だった。そこにIoT事業を組み合わせ、空いていた上りのキャパシティーを活用することで、両サービスのコストや投資のかみ合わせが非常によくなり、戦略的な価格提供が可能になったという。
同社の強みはMVNEとIoTのシナジーにある。コンシューマー向けMVNEはダウンロード、IoTはアップロードが中心だ。同社の設備は上りと下りが1対1のため、従来はMVNEだけでは上りが空いていた。ここにIoTを組み合わせ、上りを有効活用することでコスト効率を高め、戦略的な価格提供を可能にしているこの安定した事業基盤の上で、峯村氏はMVNEサービスの顧客層に大きな変化が現れていると指摘した。2020年時点では、顧客のほとんどがインターネットサービスプロバイダーなど、何らかの通信サービス経験がある事業者だった。しかし、2024年度末の時点では、通信事業の経験がない「非通信事業者」がモバイル通信を自社顧客向けに提供したいというケースが約4割(38.1%)近くまで増加している。
2020年時点の顧客はISPなど通信経験のある事業者がほとんどだった。しかし2024年度末には、通信経験のない「非通信事業者」が自社顧客向けにモバイル通信を提供したいというケースが約4割(38.1%)近くまで増加したこのニーズは消費者側からも裏付けられる。小林氏が示したMMD研究所の調査によれば、消費者の60%以上が特定の「経済圏」を意識して消費活動を行っており、経済圏の中で利用しているサービスとして「モバイルサービス」は上位3番目に入っている。
そのため、比較的ITリテラシーが高く、自ら工夫してプランを選ぶ、従来の格安SIM利用者を狙うのではなく、愛用するブランドや経済圏の中で、従来と同じような品質かつ同じような価格帯でモバイルサービスを利用したいと考える人々をターゲットとしている。
こうした市場の変化にもかかわらず、非通信事業者がモバイルサービスに参入するには、通信事業者の免許の届け出や課金システムの構築など、多くのハードルが存在した。非通信事業者もこうしたニーズを認識しつつも、経験のないモバイル事業の立ち上げと運営を困難と感じ、検討を断念するケースが多かった。ミークモバイルは、この「参入障壁」を解決するために設立された。
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