フリマアプリ最大手のメルカリが、MVNOとしてモバイル事業に参入した。名前はメルカリモバイル。料金プランは2GBか20GBの2択のみと、他のMVNOと比べてシンプルで、当初はeSIMのみでのサービス提供になる。料金は2GBが990円(税込み、以下同)、20GBが2390円。MVNOらしく、大手キャリアのサブブランドと同程度か、やや安い水準に設定されている。
最もメルカリの特徴が出ているのは、余ったデータ容量を売買できるところだ。ユーザーは1GB単位で最低200円から、メルカリにデータ容量を出品可能。1GBあたりの最大額は500円となり、20GBをまとめて出品する場合には1万円までの価格をつけられる。これまでも、データ容量をプレゼントできるMVNOはあったが、それを売買につなげたのはメルカリならではで、他社との差別化も図れている。
一方で、MVNOとして見ると、やや料金水準は高めといえる。また、当初はeSIMのみのスタートで、物理SIMが発行できないため、契約のためのリテラシーが必要とされる。音声通話定額のオプションも用意されていない他、回線もドコモ一択。auは選択できない。他社が充実したサービスを提供している中、なぜ今、メルカリはMVNOに参入したのか。メルカリでMVNO事業の責任者を務める執行役員CEO Fintech兼MVNO事業責任者の永沢岳志氏に、その理由を聞いた。
―― MVNOを始めたのは、意外感もありました。なぜ回線を提供しようと思ったのでしょうか。
永沢氏 メルカリのミッションは、「あらゆる価値を循環させ、あらゆる人の可能性を広げる」というものです。メルカリはC2Cのフリマから始まり、B2CのメルカリShopsに広がり、その後、お金と人にも拡大しています。メルカリハロでは、時間やスキルが循環しています。暗号資産もやっていますが、物を売ることと買うことがいろいろなところに広がっています。このように循環させることで、あらゆる人の可能性を広げるのがメルカリのミッションです。
その中で、使っていただいているお客さまの可能性が広がるのは、他にどういうところがあるのかを議論してきました。デジタルアセットは暗号資産に始まり、直近だとNFTの売買も初めています。その1つの形として、データ通信の容量――ギガがあるという着想がメルカリモバイルになりました。
シンプルに単なるMVNOをやるだけではなく、メルカリらしさや、価値の循環をいかに加えられるかが新規事業としては大事になります。フィジビリティ(実現可能性)の確認をする中で、MVNEと組み、APIをたたいてあげることで、それはできそうだということが見えてきました。であれば、やってみようということで、事業を開始するに至りました。
―― povoのようにデータ容量を付与することで経済圏を広げるやり方はありましたし、これまでも購入はできましたが、ユーザーが売れるというのは初めてです。この仕組みによって、データ容量に資産価値が出てくるところは面白いと思いました。
永沢氏 ギガが余ったり、逆に足りなくなったりということはよくあると思っています。私も大容量プランを使っていますが、最後に余ってしまう。一方で、旅行に行くと最後に足りなくなって追加で料金を払うこともありました。ここに機会があると考えています。
“メルカリだから”がポイントで、普通のMVNOでも技術的には同じようなことはできると思います。ただ、メルカリには売るという行為をする人がいる。メルカリを使っているからこそ、ギガを売るという感覚になり、それにトライできる。また、ギガが売れるなら、これも売れるんじゃないかということで、他の物の売買につながっていきます。デジタルアセットの売買はどんどん増えていくので、そこにつなげていくのはメルカリらしさだと考えています。
―― サービス開始から半月ほどですが、実際の売買状況はいかがでしょうか。
永沢氏 具体的な数字は言えませんが、想定とそんなに変わらない動きをしています。契約していただけると、メルカリの画面のような形で、どのギガがいくらで、何GB売れているかが分かります。1GBで200円もありますし、5GBで500円、10GBで800円というものもあります。出品されてからの購買率を見ていますが、そこはメルカリのフリマと似たような形に推移しています。供給がないわけではないし、需要が多すぎるというわけでもなく、どちらかに偏っていることはありません。
―― まだ月末を迎えていませんが(※取材は3月に実施)、繰り越しがないので、月末だと供給側が安くするということもありそうですね。
永沢氏 逆に、月末だと需要が高まる可能性もありますが、ここは正直やってみないと分からないですね。需給のバランスを決定づける要因は、大きく2つあると思っています。今は2GBと20GBの2つでやっているので、このプラン構成と価格が1つ。あとは、1GBあたりの最低取引金額があります。若干実験的ですが、ここを動かして満足度を高めていくことが大事だと思っています。
―― 料金プランが2GBと20GBの2つというのは、かなり極端な設定だと思いますが、これも売買を踏まえてのことなのでしょうか。
永沢氏 いったんエクストリームな形に振ってみました。これは余る、これだと足りないという人がいたときに、(売買を)使ってもらうことで需要に合った形になる。プランを増やすのはいくらでもできますからね。
また、メルカリとして、シンプルにものを作って分かりやすくしようとしました。料金プランがたくさんあって、どれにするか迷うことがないようにしたかった。お客さまの中には、自分が何GB使っているのかを知らない方も結構います。そのあたりをサポートするようなLP(ランディングページ)を作ることも進めています。
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